日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

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SDGsから見た学術会議 ―社会と学術の関係を構築する―


SDGsとのかかわり ―第23期に発出した提言・報告を中心に―

日本学術会議は、社会の中での学術のありかたについて考え、社会のための学術の推進に取り組み、多数の「提言」を発表しています。
それらは国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」とも密接に関わっています。
SDGsとは、世界共通の社会的課題にとりくみ、人類全体のウェルビーイング(幸せ)を達成するための17の国際的目標です。

このコーナーでは、23期(2014年10月1日~2017年9月30日)を中心に出された「提言」がSDGsにどう関わっているのかをご紹介します。
SDGsの観点からは、日本の社会において何がいま取り組むべき課題なのか、日本の学術は世界に対してどのような貢献をなしうるのか、紹介文から興味をひかれた提言については、ぜひその本文もご覧ください。
なお、できる限り多様な提言をご紹介するために、1提言につき1目標を割り当てていますが、ほとんどの提言は複数の目標に関係しています。


「持続可能な開発目標(SDGs)」とは:
2015年9月に国連総会が決議した「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げた目標。
詳細は国連広報センターHPをご覧ください。


目標1:貧困をなくそう 目標2:飢餓をゼロに 目標3:すべての人に保健と福祉を 目標4:質の高い教育をみんなに 目標5:ジェンダー平等を実現しよう 目標6:安全な水とトイレを世界中に
目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに 目標8:働きがいも経済成長も 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう 目標10:人や国の不平等をなくそう 目標11:住み続けられるまちづくりを 目標12:つくる責任つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を 目標14:海の豊かさを守ろう 目標15:陸の豊かさも守ろう 目標16:平和と公正をすべての人に 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

目標1:貧困をなくそう

日本の貧困をなくすには
若者支援政策の拡充に向けて 社会学委員会 社会変動と若者問題分科会 我が国の「若者の貧困」問題は深刻です。若者が「使い捨てられる」ことがないように、社会学委員会が、若者支援政策を5つの観点(セーフティネット、教育・人材育成、雇用・労働、ジェンダー、地域・地方)から具体的に提案しました。裏付けるデータをもっと知りたい方はお問合せください。

キーワード:若者、貧困、セーフティネット、教育・人材育成、雇用・労働、ジェンダー、地域・地方

世界の途上国の貧困をなくすには
日本型の産業化支援戦略 地域研究委員会 国際地域開発研究分科会 途上国の貧困をなくすには、産業発展を実現して雇用を創造し、生活水準の向上を達成することがきわめて重要です。しかし、これまでの開発支援は、“対症療法”的なところがあり、必ずしも効果的とは言えませんでした。そこで、もっと「戦略的」に開発支援を組み立てるため、アジア諸国のなかでは途上国支援の実績が豊富な日本が、その経験を活かして支援戦略を構築しようと地域研究委員会が提案しました。

キーワード:、途上国、開発支援、FDI(Foreign Direct Investment, 海外直接投資)、農業

目標2:飢餓をゼロに

世界の食糧生産の安定化には
緩・急環境変動下における土壌科学の基盤整備と研究強化の必要性 農学委員会 土壌科学分科会 食料生産の基盤は農業ですが、今、農業生産を妨げているのは、世界でも日本でも、気象現象の激化などの環境変動のために加速している、土壌の変化です。有害物質による土壌汚染も地域によっては深刻です。土壌が本来持つ、生態系を支える機能を保持しながら、持続的にその生産機能を高めるという国際的課題のために、我が国の科学と教育はどうすればよいのか、農学委員会が提案しました。

キーワード:国際土壌年(2015年)、土壌観測ネットワーク、土壌情報、土壌科学、土壌教育、土壌保全に関する基本法

世界の食糧生産の安定化には
気候変動に対応する育種学の課題と展開
農学委員会 育種学分科会 農業の生産性向上にはまた、作物の種の開発も重要です。たとえば温暖化等の気候変動により、日本ではコメの品質が劣化し、世界では果物の品質低下が問題になっています。そのような変動に耐えうる種を開発し、増収を図ると同時に、環境への負荷を小さくする持続的な農業生産を実現するために、農学委員会が課題を検討しました。

キーワード:農業、種、育種学、気候変動

目標3:すべての人に保健と福祉を

すべての人により良い医療をとどけるには
持続可能な最善の医療を実現する次世代型ヘルスケアプラットフォームの構築 臨床医学委員会 手術データの全国登録と解析に関わる分科会 高齢化社会では、医療費を抑えながら医療の質を向上させることが喫緊の課題です。現在、それに対して壁になっているのは、患者さんたちの臨床データがまとまった形で蓄積されておらず、検証に使えないという問題です。もちろん個人情報が十分に守られることを前提とした上でのことですが、とくに病気の予防効果の検証には、全国規模のデータベースが有効です。そのための具体的方策として、臨床医学委員会が、「ヘルスケアプラットフォーム」の構築を提案しました。

キーワード:実臨床データ、データベース、大規模な日本人データ、成果志向の医療

先端的医療技術を社会の理解を得ながら開発するには
我が国の医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方 医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方検討委員会 我が国の医療・医学領域におけるゲノム編集技術のあり方について、学術会議から出された初の提言です。焦点は、ヒト生殖細胞・受精胚ゲノム編集、つまり、受精卵の段階で(主に)遺伝性の病気を治すためにゲノム編集を行うことについて、研究と臨床に分けてその規制の範囲を、医学者を中心とする委員会が検討したものです。これから社会での議論が高まることが予想されます。学術会議内でも議論を継続していきます。

キーワード:体細胞ゲノム編集治療、ヒト生殖細胞・受精胚ゲノム編集、臨床応用の規制、社会的理解

誰もが受け得る検査をより安全にするには
CT検査による医療被ばく低減に関する提言 臨床医学委員会 放射線・臨床検査分科会 「わが国の医療被ばく線量は米国とともに世界で最も高く、しかも増加を続けている」という事実をご存知でしたか? 1年間に受ける日本人の平均被ばく線量は約6ミリシーベルトですが、CTによる医療被ばく線量は、1回の検査で平均数ミリシーベルトから十数ミリシーベルトとのことです。それでも(この提言を出した委員会によれば、)成人ならば検査を受ける方がよいそうですが、とはいえ、減らす必要性があることは疑いなく、そのための方策について臨床医学委員会が提案しました。

キーワード:CT検査、医療被ばく、医療被ばく教育、低線量高画質CT装置

訪日客の健康にも配慮するには
東京都受動喫煙防止条例の制定を求める緊急提言 健康・生活科学委員会・歯学委員会合同 脱タバコ社会の実現分科会 東京都限定ってなぜですか?と思いましたら、この提言は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック対策とのことです。海外から観戦に来るスポーツファンが、公共の場で受動喫煙にさらされては問題です。健康・生活科学委員会が、都に対し、公共の場での受動喫煙を防止するための法整備(条例化)を行うよう緊急提言しました。

キーワード:喫煙、タバコ、健康、公共、東京オリンピック・パラリンピック

目標4:質の高い教育をみんなに

総合的な歴史教育をみんなに
「歴史総合」に期待されるもの 史学委員会 高校歴史教育に関する分科会 学術会議では我が国の中等教育のあり方に対し、23期だけでも10の提言を発出していますが、特に注目を集めたのは高校の歴史教育に関するこの提言です。史学委員会は、2011年から、「世界史か日本史か」の二者択一ではなく、グローバルな視野の中で世界と日本の過去・現在・未来を主体的・総合的に考える教育の必要性を訴えてきました。これを受けて文科省でも「歴史総合」という必修科目を新設する方向に動きましたが、その内容にはなお大きな課題があることを、6点にわたって指摘しました。

キーワード:中等教育、歴史教育、歴史総合、大学入試

みんなのための社会をつくる教育をみんなに
18歳を市民に―市民性の涵養をめざす高等学校公民科の改革― 心理学・教育学委員会 市民性の涵養という観点から高校の社会科教育の在り方を考える分科会 もう一つの高校必修新科目「公共」についても、教育学・政治学・歴史学・哲学・法学・人類学の委員からなる分科会が提言を出しました。これまでの「公民」教育を一歩進めた、学ぶ側の多様性により配慮し、かつ学ぶ側の主体性を重視した「市民性」を育てる教育です。18歳選挙権の施行を見すえ、民主的な社会をともに築くための教育においては何が重要かを論じた緊急提言です。

キーワード:中等教育、公共、公民教育、市民性、民主主義、18歳選挙権

みんなのための社会をつくる教育をみんなに
環境教育の統合的推進に向けて 環境学委員会 環境思想・環境教育分科会 環境教育といえば、資源の大切さや、産業による環境破壊の問題を学ぶ教育だけでいいのか?というのが、東日本大震災以来、環境学委員会が検討してきたことでした。つまり、防災・減災教育や災害教育とも環境教育は関係があるのではないか。学校のなかで学ぶだけでなく、地域社会全体で取り組むべきでないかといったことが見えてきたのです。そこで「統合的な環境教育」への提言がなされました。

キーワード:環境教育、学校教育、社会教育、防災、災害教育

教育環境を改善するために
我が国の大学等キャンパスデザインとその整備システムの改善にむけて 土木工学・建築学委員会 知的創造と活動を喚起する環境としての大学等キャンパスに関する検討分科会 全国の大学にアンケートをとったところ、自分の大学のキャンパスデザインは国際的競争力が低いと多くの大学が答えたとのことです。重要なのは教育・研究という中身だ、入れ物ではないのだ、という風潮がその一因でしょうが、しかし今の時代、見た目にも魅力的で機能においても優れたキャンパスの方が、国内外から優秀な学生を惹きつけられるはず、と考えた検討分科会が、キャンパスデザインの改善、キャンパス整備にあたっての組織・システムの構築について提言しました。

キーワード:大学キャンパス、デザイン

目標5:ジェンダー平等を実現しよう

「ジェンダー平等」をもっと包括的に
性的マイノリティの権利保障をめざして―婚姻・教育・労働を中心に― 法学委員会 社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会 実はSDGsは、ジェンダー平等の達成は掲げていますが、性的マイノリティ(LGBTI)には直接的な言及がありません。世界には同性愛に対して法的・社会的にネガティヴな国もあるため、合意を作れなかったのです。法学委員会が出した本提言は、日本では、13人に1人が性的マイノリティとされるにもかかわらず、その多くが社会生活や学校生活で様々な困難を抱えている現状を踏まえ、差別解消のための法律の策定・改正などを訴えたものです。

キーワード:性的マイノリティ(LGBTI)、ジェンダー、法律、権利

「リケジョ」をブームで終わらせないために
科学者コミュニティにおける女性の参画を拡大する方策 科学者委員会 男女共同参画分科会 1999年に男女共同参画基本法が公布され、最近ではリケジョ(理系女子)ブームもありましたが、依然として、研究者に占める女性割合では、日本はOECDで最低レベルです。その原因は、男女共同参画推進のためのさまざまな取り組みがバラバラで、データの収集・検証も不十分というところにあると突き止めた科学者委員会が提言を出しました。内閣府の第4次男女共同参画基本計画への反映をめざし、関連する取り組み全体を有機的に結びつけ、評価・是正する権限を有する専門機関の設置と、そのためのガイドラインの作成を求めました。

キーワード:男女共同参画、女性科学者・研究者

目標6:安全な水とトイレを世界中に

対策本部のアジアのハブとして
持続可能な地球社会の実現をめざして -Future Earth(フューチャー・アース)の推進- フューチャー・アースの推進に関する委員会 日本にいると気づきにくいですが、世界の環境問題としては命に直結する「水」が最重要課題と言われます。「フューチャー・アース(FE)」は、水問題を含む世界的な環境問題に対処するために新たに立ち上がった国際的プロジェクトです。新たに、というのも、これまでの取り組みでは足りなかったことは、世界の現状を見れば明らかですから。FEの5つの国際本部事務局のうちの1つは日本にあり、学術会議はその運営を担当しています。本提言では、日本におけるFE推進を、すべての科学コミュニティ及び社会の関係者(政策担当者、企業、地方自治体、メディア、教育関係者、市民団体など)に対して呼びかけています。

キーワード:フューチャー・アース、環境

放射能汚染を取り除くために
放射能汚染地における除染の推進について―現実を直視した科学的な除染を―

農学委員会 土壌科学分科会 福島第一原発事故以降、農学委員会は、放射能汚染地における除染について調査研究を行い、除染を効果的に推進するための方法を検討してきました。本提言では、汚染土を遠隔地に搬出・隔離するという発想に縛られない複数の提案をし、水質汚染に関しては、ため池、湖沼や水田に注目しています。

キーワード:福島第一原発事故、放射能汚染、除染

目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

クリーンなエネルギーを安全に、みんなに
再生可能エネルギー利用の長期展望
東日本大震災復興支援委員会 エネルギー供給問題検討分科会 本報告は、福島第一原発事故以降、「我が国のエネルギー需給計画は根本的な変更を余儀なくされた」という認識のもと、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの導入拡大のために検討を重ねた結果をまとめています。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電、海洋エネルギー発電のそれぞれについて分析がなされています。

キーワード;再生可能エネルギー、福島第一原発事故

「あちらを立てればこちらが」にならないエネルギー政策のために
パリ協定を踏まえたわが国のエネルギー・温暖化の対策・政策の方向性について
総合工学委員会 エネルギーと科学技術に関する分科会 パリ協定とは2016年に発効した、温室効果ガス排出削減の枠組みを定めた国際的取り決めです。世界では温室効果ガス排出の約67%がエネルギー起源の排出であり、我が国においてはそれは約84%に及ぶとのこと。省エネが大切だということは皆わかっているけれども、費用対効果にも留意しながら対策を立てるにはどうしたらよいか。S+3E(安全・安心+エネルギー安全保障・安定供給、経済性、環境性)のバランスに配慮したエネルギー・ミックスという観点から、総合工学委員会が課題を整理しました。

キーワード:温暖化、エネルギー・ミックス、温室効果ガス、パリ協定

目標8:働きがいも経済成長も

日本どこでもやりがいのある仕事に出会えるために
人口減少時代を迎えた日本における持続可能で体系的な地方創生のために 地域研究委員会 人文・経済地理学分科会、地域情報分科会 東京圏に若者が集中するのは、地方に魅力ある仕事が少ないからだと言われています。内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部は、そのために多様な施策を立案・実施しています。しかしどうもそれがうまくいっていないのではないかと見た地域研究委員会が、地方創生関係交付金の検証作業や、政策立案のための情報化の活用、柔軟な広域連携の実現などを盛り込んだ提案をしました。

キーワード:地方創生、まち・ひと・しごと創生本部、地域経済、若者

ワーク・ライフ・バランスあってこその働きがいを
労働時間の規制の在り方に関する報告
経済学委員会 ワーク・ライフ・バランス研究分科会 その一方、若者の過労自殺も大きな社会問題になっています。なぜ皆働きすぎるのか?「残業が昇進に結びつく企業風土があるから」説にはデータの裏付けは全くないのだそうです。政府も2017年に「働き方改革実行計画」 を導入し、時間外労働については上限規制(違反した企業にする罰則を設けたのは政府として初めてのこと)を設け、さらに勤務間インターバル制度(勤務時間の間に一定の休息時間を設けること)の努力義務化を始めましたが、経済学委員会が調べたところ、なお不十分な対策とのことです。

キーワード:労働時間、過労死、働き方改革、ワーク・ライフ・バランス

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

つくる人の知的創造性が適切に評価されるように
公共調達における知的生産者の選定に関わる法整備 ―創造的で美しい環境形成のために会計法・地方自治法の改正を― 法学委員会・経済学委員会・土木工学・建築学委員会合同 知的生産者の公共調達検討分科会 新国立競技場のデザインが話題になったことは記憶に新しいですが、日本では多くの場合、公共施設のデザイン・設計は、あのようなコンペ方式ではなく価格競争入札により決まります。つまり安く上がる方が採用されてきました。しかしそれでは作る側は意欲を失い、品質も低下します。そこで、法学者・経済学者・土木工学者・建築学者から成る本分科会は、そのような仕事をする人を「知的生産者」と呼び、価格競争入札を止めるための法改正を提案しています。

キーワード:公共的知的生産、企画、コンサルテーション、設計、デザイン

「ものづくり大国」再生のために
材料工学からみたものづくり人材育成の課題と展望 材料工学委員会 材料工学将来展開分科会 「ものづくり大国」日本と言われますが、そこには落とし穴がありました。日本人は優れた素材を作るのは得意なのですが、それを製品開発に結び付けるのは下手なのです。たとえば日本人が作ったファインセラミックスを、航空機機材に使って儲けるのはアメリカです。そこで、材料工学委員会は、社会のニーズを敏感に察知して、製品の設計構想を立案できるような、新しいものづくり人材を育成するための提案を行いました。なかでも女性研究者・技術者に高い期待が寄せられています。

キーワード:ものづくり、教育、女性

目標10:人や国の不平等をなくそう

経済的不平等をなくすために
いまこそ「包摂する社会」の基盤づくりを
社会学委員会・経済学委員会合同 包摂的社会政策に関する多角的検討分科会 格差・貧困問題といえば、欧州連合の先進国でも主要な対象は失業ですが、我が国ではそれ以上にワーキング・プアや長時間労働が大きな問題です。日本の労働政策に必要なのは「社会的包摂」の発想、すなわち、ただ現金を給付することによって貧困を解消するのではなく、すべての人が潜在的に有する能力をフルに発現できる社会を作ることが必要だと、社会学委員会・経済学委員会が政府に訴えました。

キーワード:貧困、格差、社会的包摂、労働法

原発避難者への不当な措置を改めるために
東日本大震災に伴う原発避難者の住民としての地位に関する提言 東日本大震災復興支援委員会 原子力発電所事故に伴う健康影響評価と国民の健康管理並びに医療のあり方検討分科会 日本学術会議はこれまでの提言において、福島第一原発事故の結果、避難することを余儀なくされた被災住民について、避難元への帰還か移住かの二者択一を迫るのではなく、避難した被災住民が避難元自治体と避難先自治体の両方との結びつきを維持することを可能にする制度を設けることを提案してきました。本提言は、この提案をさらに進めるべく、住民登録の問題に焦点を当て、具体的な制度について論じています。

キーワード:福島第一原発事故、避難住民、住民登録、健康管理

目標11:住み続けられるまちづくりを

地震が起きても住み続けられる都市に
大震災の起きない都市を目指して 土木工学・建築学委員会 大地震に対する大都市の防災・減災分科会 大地震の際、都市で起こると予想される、大火災、ビル倒壊を初めとする災害をどのようにして抑えるか。従来の日本の耐震基準では、475年に一度起こるレベルの地震動(50 年に10%の確率)に対して建築物の倒壊を防止するとされてきました。それに対して、2475年に一度起こるレベルの地震動(50 年に2%の確率)を想定するものに基準を改め、さらに最新の科学的知見にもとづき、想像力を広げた対策が必要であることを、11点にわたり土木工学・建築学委員会が提案しました。

キーワード:地震、震災、都市

災害軽減のための科学の成果を社会に届けるために
災害軽減と持続可能な社会の形成に向けた科学と社会の協働・協創の推進 地球惑星科学委員会 地球・人間圏分科会 このように、日本では多くの科学者が災害の軽減と持続可能な社会の形成に向けた研究を行っています。しかし問題は、その研究が常に社会に届き、実を結ぶわけではないというところです。地球惑星科学委員会はそこに目をつけ、科学者と社会の人々の協働・協創の場、またその基盤としての教育を充実させ、さらに災害軽減に役立つ地域情報を整備、公開することを提案しました。

キーワード:災害、ユネスコスクール、ジオパーク、地質地盤、歴史記録、科学インタープリタ、地理教育

さらに世界に届けるために
防災・減災に関する国際研究の推進と災害リスクの軽減―仙台防災枠組・東京宣言の具体化に向けた提言― 国際委員会 防災・減災に関する国際研究のための東京会議分科会 土木工学・建築学委員会 IRDR分科会 さらに、日本だけでなく国際協力を通じて世界各国の防災・減災を実現していきたい。この目標のもと、日本学術会議では、2015年1月に「防災・減災に関する国際研究のための東京会議」を開催しました。ここでの議論の結果を「東京宣言」、「東京行動指針」にまとめて国際社会に示すことにより、同年3月の国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」における科学・技術の重要性の認識を促しました。本提言は、これらの議論をまとめ、科学・技術の観点から、世界各国が協調して実施すべき事項とその実施主体および具体的活動、さらに日本がとるべき行動を総合的に提示したものです。

キーワード:防災、減災、国際協力、仙台防災枠組

目標12:つくる責任つかう責任

過度の期待と誤解のない未来のために
自動運転のあるべき将来に向けて-学術界から見た現状理解- 総合工学委員会・機械工学委員会合同 工学システムに関する安全・安心・リスク検討分科会 自動運転に対する期待が高まっていますが、交通事故等負の側面はまだまだ解決されず、高齢化が進むことでより一層深刻になる面も想定されています。つくる側もつかう側も、自動運転の現状を技術的・法的に正しく理解し、基礎から出口までを見据えながら、長期的視点の産官学連携の体制整備を提案しました。

キーワード:自動運転、安全、高齢化、産学官連携

社会と共に創られる科学技術に裏付けられたSociety5.0を実現するために
医療を支えるバイオマテリアル研究に関する提言 材料工学委員会 バイオマテリアル分科会 長寿高齢化社会が進行する中、期待が寄せられながら日本の国際的地位が低下しつつある材料分野、特にバイオマテリアル分野に対して対策が必要です。ここでは、学術、基礎研究、及び実用化までつくる立場とつかう立場が俯瞰できる教育研究環境の整備と人材育成について提言しました。

キーワード:高齢化、材料、バイオマテリアス、人材育成

目標13:気候変動に具体的な対策を

気候変動対策を高齢化社会対策にリンクさせる
低炭素・健康なライフスタイルと都市・建築への道筋 環境学委員会・土木工学・建築学委員会 合同低炭素・健康社会の実現への道筋と生活様式・消費者行動分科会 気候変動、温暖化対策のためにCO2の排出を抑える低炭素化は、都市・建築・交通の空間設計に携わる者にとって重大な責務です。日本では昭和の経済成長期、都市への人口流入時に鉄道を整備したため、CO2排出に関してはかつて世界でも優等生だったのですが、現在は超高齢社会への移行にあたり、新たな方針が必要になっています。環境学委員会と土木工学・建築学委員会は、高齢者と子どもが健康で憩える場への転換が求められること、中小都市では交通の一層の低炭素化も同時に進めなければならないという問題点を認識し、4点にわたり具体的な提案を行いました。

キーワード:温暖化、低炭素、超高齢化、都市

ニーズに応えた大規模風水害適応策を
大規模風水害適応策の新たな展開に対応した科学・技術研究を進めるために―社会実装の進展とともに顕在化するニーズに応えて― 土木工学・建築学委員会 地球環境の変化に伴う風水害・土砂災害への対応分科会 大規模風水害適応策の推進には、本来、課題把握や解決策検討の基礎となる知見とともに解決策を支える「技術」が必要である、という認識のもとに、土木工学・建築学委員会が提言を出しました。(1)現場ニーズの把握による連携体制の活動への支援、(2)連携体制の維持発展への支援を呼びかけています。「レジリエンス」(社会が外部環境の変動による影響に耐え、復興する能力)という言葉を、地域社会が“明るく”受け止めることに役立ちたいという気持ちから書かれています。

キーワード:大規模風水害、『水防災 意識社会再構築ビジョン』(国土交通省)、レジリエンス

目標14:海の豊かさを守ろう

海の多様な生物を守りながらの水産業振興を
わが国における持続可能な水産業のあり方-生態系アプローチに基づく水産資源管理- 食料科学委員会 水産学分科会 世界のあちらこちらで寿司ブームと言われますが、日本の水産物生産量は1980年代のピーク時の30%にまで減少しています。原因は漁業界の高齢化、消費者の魚離れなどもありますが、食料科学委員会による本提言は、水産資源の減少、つまり魚がとれなくなったという問題に焦点を絞り、生態系アプローチに基づく水産資源管理について、具体的な施策を提案しています。すなわち、海洋生態系の生物多様性を保ちながら、持続可能な水産業を構築する試みです。

そのための研究を支える
我が国の海洋科学の推進に不可欠な海洋研究船の研究航海日数の確保について
地球惑星科学委員会 SCOR分科会 生物資源や海底資源を確保し、生態系を保全するには、海の研究に従事する海洋科学者の育成が必要です。しかし、そのための海洋研究船の研究航海運行日数、つまり若手の海洋科学者の実習の期間がこの5年ほどで半減しているとのこと。地球惑星科学委員会がそれについて警鐘を鳴らしました。 

キーワード:水産業、漁業、海洋生態系、海洋科学

目標15:陸の豊かさも守ろう

柔軟な発想で都市の緑を守るために
神宮外苑の歴史を踏まえた新国立競技場整備への提言―大地に根ざした「本物の杜」の実現のために 環境学委員会 都市と自然と環境分科会 明治神宮外苑は大正15年創建というその歴史の短さにもかかわらず、多様な生物が生息する自然環境を誇っています。しかし、新国立競技場の建設に伴い、人工地盤の広場が作られるならば、外苑の生態系にも影響が及びます。そこで環境学委員会が、地域の植生帯に即した植生で、(人工地盤ではない)大地に根ざすことにより持続的成長が可能である、なおかつ健全な水循環が維持されている「杜」を実現するために、具体的な提案を出しました。

キーワード:生態系、植生、大地、水循環

生物多様性を保護するための費用負担と遺伝子研究の振興を両立させるために
生物多様性条約及び名古屋議定書におけるデジタル配列情報の取扱いについて
基礎生物学委員会・統合生物学委員会・農学委員会・基礎医学委員会合同遺伝資源分科会

農学委員会・食料科学委員会合同農学分野におけ る名古屋議定書関連検討分科会
生態系は多様な生物によって維持されていますが、その生物の遺伝子は、遺伝子工学の発達とともに、「遺伝資源」と呼ばれるようになりました。多くの動植物や微生物の遺伝子が、有用物質の生産、農作物の改良などに実用価値をもつことがわかってきたからです。2010年に採択され、現在100カ国が締約している名古屋議定書は、遺伝資源を利用したことによって得られた利益を、利用国と、資源を提供した国(原産国)とでどう分け合うかを定めたものです。最近の展開として、一部の資源提供国が、デジタル配列情報(DNA配列情報)を議定書の対象に含めるよう主張しているのですが、そうするとDNA情報の利用に制限がかかり、研究に影響が及びます。この問題について、生物学・農学・医学の委員会が緊急に提言を出しました。

キーワード:生物多様性、遺伝資源、名古屋議定書、デジタル配列情報

目標16:平和と公正をすべての人に

研究成果が戦争・テロに使われることを防ぐために
病原体研究に関するデュアルユース問題
基礎医学委員会 病原体研究に関するデュアルユース問題分科会 病原体が細菌兵器として悪用され、バイオテロを引き起こすのではないかという危惧は深刻なものになっています。2011年には、病原体の遺伝子変異による高病原性鳥インフルエンザに関する研究の発表が、テロに悪用されるのではないかと議論を呼び、関連研究の自粛などが起きました。そこで基礎医学委員会は、病原体研究が危険性を持つことについて研究者間で認知を広め、教育・管理を徹底するための方策を提案しました。

キーワード:病原体、バイオテロ、デュアルユース

公正な判断のもと、平和を志向する市民を育てるために
高等学校新設科目「公共」にむけて―政治学からの提言― 政治学委員会 日本の公教育では、中立性を保つために、高校の「政治・経済」の科目も、政治教育に関しては、統治機構や政治制度の基礎知識の習得に留まっていました。しかし、選挙権年齢が18歳に引き下げられ、新科目「公共」が導入されるという変化の中、中立性と参加学習を両立させる教育が新たに必要になっています。そこで政治学委員会は、政治的争点を自ら理解し、複雑な現象を分析・判断する力を生徒が身に付けることにより、国家・社会の形成に主体的に参画していく力を養う教育の具体的方策を提案しました。

キーワード:中等教育、公共、政治教育、市民性、民主主義、18歳選挙権

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

目標1~16について紹介した提言・報告の内、とくにグローバル・パートナーシップを活性化するのに直接的に貢献するものを再掲します。

持続可能な地球社会の実現をめざして-Future Earth(フューチャー・アース)の推進- フューチャー・アースの推進に関する委員会 日本にいると気づきにくいですが、世界の環境問題としては命に直結する「水」が最重要課題と言われます。「フューチャー・アース(FE)」は、水問題を含む世界的な環境問題に対処するために新たに立ち上がった国際的プロジェクトです。というのも、これまでの取り組みでは足りなかったことは、世界の現状を見れば明らかですから。FEの5つの国際本部事務局のうちの1つは日本にあり、学術会議はその運営を担当しています。本提言では、日本におけるFE推進を、すべての科学コミュニティ及び社会の関係者(政策担当者、企業、地方自治体、メディア、教育関係者、市民団体など)に対して呼びかけています。

防災・減災に関する国際研究の推進と災害リスクの軽減―仙台防災枠組・東京宣言の具体化に向けた提言― 国際委員会防災・減災に関する国際研究のための東京会議分科会 土木工学・建築学委員会IRDR分科会 さらに、日本だけでなく国際協力を通じて世界各国の防災・減災を実現していきたい。この目標のもと、日本学術会議では、2015年1月に「防災・減災に関する国際研究のための東京会議」を開催しました。ここでの議論の結果を「東京宣言」、「東京行動指針」にまとめて国際社会に示すことにより、同年3月の国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」における科学・技術の重要性の認識を促しました。本提言は、これらの議論をまとめ、科学・技術の観点から、世界各国が協調して実施すべき事項とその実施主体および具体的活動、さらに我が国がとるべき行動を総合的に提示したものです。

日本型の産業化支援戦略 地域研究委員会 国際地域開発研究分科会 途上国の貧困をなくすには、産業発展を実現して雇用を創造し、生活水準の向上を達成することがきわめて重要です。しかし、これまでの開発支援は、“対症療法”的なところがあり、必ずしも効果的とは言えませんでした。そこで、もっと「戦略的」に開発支援を組み立てるため、アジア諸国のなかでは途上国支援の実績が豊富な日本が、その経験を活かして支援戦略を構築しようと地域研究委員会が提案しました。


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