「未来からの問い」特設HP / トピック3 環境・エネルギー・災害

環境・エネルギー・災害

米田雅子

米田雅子(慶應義塾大学環境・エネルギー研究センター特任教授)

 トピック3では、環境・エネルギー・災害の分野について考えます。
 まず、「未来からの問い」で取り上げたテーマを紹介します。「未来からの問い」の7章では、長期的・世界的視野に立った気候変動・エネルギー政策、エネルギー・環境分野の科学・技術、社会の変容によるエネルギー需要と環境対応、エネルギー・環境教育、水資源の確保と総合的な水管理について論じています。
 「未来からの問い」の6章では、我が国の自然災害の増大と人口の減少という大きな変化にどう向き合うのかという未来からの問いに対して、国土利用のあり方、農業・農村・食市場の展望、森林環境と林業の展望、海洋環境と水産資源管理の展望、野生動物等の管理について考察しています。
 ご発表は、環境・エネルギー問題を渡辺美代子先生、農業・資源について澁澤 栄先生、国土強靭化について和田 章先生にお願いしました。コメンテーターは、エネルギー問題に詳しい鈴置保雄先生、予期せぬ災害対応に詳しい高橋五月先生にお願いしました。今後、重要性を増していく環境・エネルギー・災害について、真摯に論じる機会となれば幸いです。



エネルギー・環境の統合的問題

渡辺美代子

渡辺美代子(科学技術振興機構副理事)

渡辺美代子
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(概要)
 現代の社会は大規模なエネルギーの利用なくしては成り立ちませんし、それと同時に環境問題への取り組みを強化しなくては私たちの生活が危機的状況に陥ります。この状況をよく理解しながら、2050年の未来とそれ以降に向けて、エネルギーおよび地球規模の環境問題をより良い方向に向けていく方策を考える必要があります。つまり、エネルギーと環境は一体の問題として捉え、統合的に考察することが重要です。
 人間が作り出した人為的エネルギーとそれに影響を受ける環境は、私たちの生活においても産業においても重要な役割を果たしてきました。その社会とエネルギーの関係について振り返ることで、現在顕在化してきている気候変動や気象災害とエネルギーの関係が見えてきます。ここでは、長期的で世界的視野に立ったエネルギーと気候変動の動向について最初にお話し、エネルギー・環境分野の科学・技術、社会の変容によるエネルギー需要と環境対応、そしてエネルギー・環境教育についてご紹介します。



農業・資源の観点から

澁澤栄

澁澤栄(東京農工大学卓越リーダー養成機構特任教授)

澁澤栄
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(概要)
 農業は自然の制約を強く受ける産業です。ひどい場合は自然災害となって基盤そのものが破壊されます。また、農業生産のための資源や技術あるいは流通や社会システムの影響も強く受けます。そして担い手の活動が農業の形に大きく影響します。
 冒頭に紹介する話題は、現在が「災害社会」であるということです。最近の30年間で50人以上が犠牲になった大災害を数え上げますと、少なくとも11回ありました。3年に一度の割合で、地震や津波、火山噴火、台風や豪雪などによる被害を経験しています。災害との格闘は営農の重要な課題であり、また、私たちの生活の一部でもあります。
 1970年代から続く輸出をほとんどしない輸入中心の日本農業が、急速に拡大する世界の食市場とどのように関わるのか、重要な岐路にたっています。最後に、知識を駆使する農業者の集団と現場で課題解決をする技術者集団が協力するコミュニティベース精密農業の考え方を紹介します。



国土強靭化の観点から

和田章

和田章(東京工業大学名誉教授)

和田章
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(概要)
 2011年3月の東日本大震災を受け、この前夜までの我々には科学・技術への過信があったと反省します。「未来からの問い」の6章「国土の利用と資源管理」の主張に賛同し、都市建設を進めてきた研究者の一人として、次の3つを問います。①限られた国土に住む日本人にとって、極めて稀に襲う自然の猛威への適切な対処? ②科学・技術、人工物によって自然災害を防ぐ限界? ③この無理な行動が、日本の美しい自然を壊し、地球環境や生態系へ与える大きな影響?
 明治以降の人口増大は、自然災害の起きやすいところに人々の活動領域を広げてきました。豊かさを追求する社会は、大都市集中と地方の過疎化を進め、効率を求め、無駄を省き、電気、通信、高速鉄道、道路網、物流システムなどにより日常の便益を獲得してきました。
 遠くない将来、自然の猛威はこのような効率主義の日本社会を襲い、甚大な災害を起こすに違いありません。国土利用に戻って考え、美しい自然環境を守り災害の起きにくい冗長性のある日本を作るべきです。