日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   世界科学フォーラム2019
    (英文)   World Science Forum 2019

  2. 会 期

    令和元年11月20日(水)~23日(土)(4日間)

  3. 会議出席者名

    武内和彦、岸村顕広、馬奈木俊介、安田仁奈

  4. 会議開催地

    ハンガリー(ブダペスト)

  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)

    参加国・地域数:120カ国、参加者数:約1100名

  6. 会議内容  

    • 日程及び会議の主な議題、審議内容・成果
      会議全体のテーマは、「科学、倫理と責任」であり、テーマに関連したセッションが多数設けられ、最後に宣言が出された。
      (主な日程)
      11月20日 サイドイベント、オープニングセレモニー
      11月21日 基調講演、テーマ別セッション
      11月22日 基調講演、テーマ別セッション
      11月23日 クロージング
    • 会議において日本が果たした役割
      サイドイベント「Implementation of the S20 recommendations: Scientific solution to keep a balance between promotion of industrial science and warning from environmental science?」を実施し、S20 Japanで発出された提言の紹介、及び、会議で中心的に扱われた海洋環境汚染の話題の中から海洋プラスチック問題を例として取り上げ、立場の異なる若手科学者からの意見をもとに解決に向けての障壁を洗い出し、解決に向けてあるべき取り組みの方向性を議論した。また若手を中心として会議に参加することで、日本学術会議としてのプレゼンスを示した。会場からも質問・コメントが活発に出され、実りのある議論となった。
    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
      World Science Forum Budapest 2019 のホームページ参照 : https://worldscienceforum.org/programme
      最終日に宣言が出された(後述) : https://worldscienceforum.org/contents/declaration-of-world-science-forum-2019-110073


会議の模様

 会議全体を通じて120カ国から約1100名の参加者があり、150名が発表を行った。20?22日は主にハンガリー科学アカデミーにて、23日はハンガリーの国会議事堂にて会議が行われた。
初日である20日は、オープニングセレモニーの前に、サイドイベントが開催された。トピックとしては、科学外交に関する内容、研究資金に関する内容、S20提言に関する内容、国際的な食料安全保障、若手アカデミーの国際的なガイドライン、水資源の確保、工学や科学技術に関する倫理、脱炭素社会、若手研究者のキャリアなどが主にトピックとして議論された。オープニングセレモニーとレセプションはムータブタペストにおいて開催された。S20提言に関するセッションは、「Implementation of the S20 recommendations: Scientific solution to keep a balance between promotion of industrial science and warning from environmental science?」と題して日本学術会議が主体となって運営した。本年3月に東京にて行われたS20 2019を総括した発表が武内副会長からあり、続いて、若手科学者を中心に海洋プラスチック問題にフォーカスした議論を行った。安田仁奈連携会員からは海洋生物学者としての視点から「Known knows, known unknowns and unknown unknowns about marine plastic debris:Warning from the sea.」と題する話題提供が、岸村顕広連携会員からは、「What are possible concerns or conflicts to solve plastic waste issues? ?What is important to keep the promotion of sciences & industries? - From the viewpoint of polymer scientist -」と題して高分子科学者・産業に関係する科学の視点での話題提供が、タイの科学者であり、Global Young Academy(GYA)の旧メンバーであるWibool Piyawattanametha博士からは、「Litter Myth」と題して、プラスチック問題に関連するこれまでの流れとASEANにおける課題についての話題提供が、GYA 及びドイツ若手アカデミーのメンバーMichael Saliba博士からは「Innovation and Solar Energy」と題して破壊的イノベーションとしての再生可能エネルギー開発についての話題提供がなされた。これらを踏まえ、馬奈木俊介連携会員から問題点の整理と総括があり、特に環境を資本と捉えた指標の活用や国際的枠組みの活用の提案などがあった。これらを踏まえ、会場との意見交換を行い、解決に向けて今後必要となる要素として、政治との関わり、研究資金のあり方、ステークホルダーとの関わり、地域における科学・科学者側からのつながり方についての議論を深めることができた。
 21日はプレナリーセッションとして、Are There Ethical Limits to What Science Can Achieve or Should Pursue?が行われ、Margaret A. Hamburg氏( Chair of the Board, American Association for the Advancement of Science(AAAS))の基調講演があった。その後、テーマ別のセッションに分かれ、平和のための科学、民主主義のための科学、ヒト胚性幹細胞のゲノム編集後の人間のあるべき姿、科学のSDGsへの貢献、科学における国際協力と科学外交に関する議論が行われた。昼食をはさんで科学研究資金の倫理に関するプレナリーセッションが行われ、France Cordova, Director, National Science Foundation (NSF)による基調講演があった。その後再びテーマ別のセッションに分かれ、オープンサイエンスサイエンス、research integrity、AIに関する倫理、STIにおけるgender equalityと倫理、農業の持続性に関する議論を行った。
 22日は、The Ethical Conduct of Scienceに関するプレナリーセッションが行われた。日本人ながらIBMのフェローとなった浅川智恵子博士、グローバルヤングアカデミーを代表してMichael Saliba博士などが登壇してパネルディスカッションが行われた。その後テーマ別のセッションに分かれ、政治・政策と科学、倫理的で責任ある共同開発のための基礎科学のインフラ、ジェンダーバイアス、気候変動と健康、太陽系外惑星研究に関する議論が行われた。昼食をはさんで午後は、Ethics in Science Communicationについてのプレナリーセッションが行われ、Magdalena Skipper博士(Nature誌編集長)の基調講演があった。その後、テーマ別のセッションに分かれ、政治と科学の衝突、SDGs、科学と人権、再生医療の倫理、世界的課題に取り組むための科学外交について議論が行われた。SDGsのセッションはJSTが主に運営しており、日本学術会議の副会長・渡辺美代子博士が司会進行を務めていた。その後、場所を現代美術館に移して、晩餐会が行われた。
 最終日である23日は、科学外交の20年と題して、Elmer William Colglazier Jr.( Editor in Chief, Science & Diplomacy,AAAS)からの基調講演とプレナリーセッションが行われた。プレナリーセッションでは日本からは岸輝雄外務大臣科学技術顧問が登壇し、日本における科学技術外交の位置づけ、及び技術を外交文脈で扱う際のその注意点などについて言及があった。
 会議全体の締めくくりとして、それまでの議論の内容を踏まえた宣言が発出された。和訳した概要は以下の通りである:
これまでの1999年のブダペスト宣言(科学および科学知見の利用について)、2011年のブダペスト宣言(新しい時代の国際科学)、2013年のリオデジャネイロ宣言(国際的な持続可能な開発のための科学)、2015年のブダペスト宣言(特別の機能を与える科学)、2017年のヨルダン宣言(平和のための科学)に引き続き、2019年ブタペスト宣言は科学の倫理と責任をテーマとする。

科学、倫理、責任、1999年の世界科学会議から20年
1999年にUNESCO世界科学会議において、科学と、科学時術の利用に関するブダペスト宣言は、155の政府の代表に承認された。この中で、21世紀における科学と社会についてのビジョンを示した。社会の変容の主たる原動力としての科学技術の人間社会における役割と責任を定義している。

実際この20年の間に、数多くの科学研究の分野で、革命がおき、社会でも大きな変化がおきてきた。情報・コミュニケーション技術や合成生物学、ゲノム編集、人工知能、ビッグデータ、機械学習などが我々の環境や、社会にインパクトを与えており、格差の拡大につながる可能性がある。
人口統計や気候変動、汚染や、水資源の安全などは、環境や社会の面から科学に対する期待が新たに高まってきている。

国際的には、研究や発展に対する投資は大きく増えている。新しい国家主体や、非国家主体が国家秩序を新たに形成しており、それらも科学知識や科学投資、分配にインパクトを与えている。

新たなコミュニケーションツールやソーシャルメディアの発展により、科学不信や不十分なエンゲージメント、低い科学リテラシー、一般や政策者への不十分な科学の説明により、課題が山積している。すべての社会において科学教育を若い世代に施していくことの重要性が高まっている。

1.Science for global well-being 全球的な幸福のための科学
科学の価値は、経済的な繁栄への貢献のみで測ることはできない。科学は、持続可能な開発と国際的な幸福をもたらすための国際公共財である。

我々は、科学を誠実に、人類の利益のために、人権とともに幸福のために利用することにたいして、責任があることを認識する。

我々は科学の更正と資金政策について人類の知識の境界を押し広げ、普遍的な幸福を促進し、環境や社会や経済における課題をモニターしたり解析したりし、科学的に後進している国のニーズを満たしたりするためのツールであることを認識する。

我々は、社会?経済的にもしくは環境から期待される課題に直結したり、特別に対応したりすることができない研究を計画し、実行する科学者の自由を受け入れる。興味が原動力となるときには、良い科学とは自由に羽ばたけるものでなくてはならない。

2. 研究の誠実性における国際的な基準の強化
国際的な科学の世界では、一般的な行動規範やその執行を含む、調和と研究の誠実性の促進の必要性が高まっている。これは、特に急速に発展している科学分野や、国際的に行われている研究において適用する必要がある。

我々は科学研究を行う上での調和と基準の執行を国境や、公共のないし、私的な研究問わず必要とする。

我々は、本当に価値のある研究というものは、知的な有益性やインパクト以上のものを必要とする。すなわち、倫理的で包摂的で、社会的責任をもつということである。

我々は、科学者が、怪しい研究や、研究不正、その他の責任感にかける研究活動については自己規制による過程により、報復をおそれたりすることなく、報告する。また、こうした申し立てに対して、反論できる過程を設立する。

我々は、地域的なもしくは国レベルで研究の誠実性に関する世界的な基準を促進する、特に我々は、2017年のWSFで出てきた、Charter of ethics of science and technology in the Arab regionの現れを特に祝福する。


3.学術的な自由を満たすことと、科学にむけた人権
国際的に学術的な自由の原則は国際的に科学機関により支持され、促進されている一方。自由な学術の充足に関する条件やコンセンサスがほとんどない状態にある。近年の科学がどんどん研究インフラや研究資金、トップダウンな政策に依存する時代となっていることからも、学術の自由を再認識する必要がある。

学術の活動のどの段階においても、世界的に科学機関で支持され促進される必要がある。研究者や研究機関において、査読付きの研究知識や研究資金へのアクセス、社会科学を含むすべての分野においてボトムアップな研究のセットアップを行う自由があり、研究成果をコミュニケ―ションする自由があることが重要である。

我々は、厳粛な倫理原則に基づく場合にのみ、科学の自由が社会によって尊重されることを承認する。

我々は、国際的な科学コニュミュニティに学術の自由を充足する新たな基準をつくり、また、自由を充足するための必須条件を、記述し監視し、測定するツールを作ることを要求する。

我々は、興味に発端をなす基礎科学の重要性を認識する。我々は2022年に予定している、UNESCOの基礎科学の発展の国際年を歓迎する。

我々は、難民の権利と迫害されている科学者の権利をサポートすることを再度確信する。
我々は、科学に過小評価されている例えば女性やマイノリティなどを含めた全ての人のための科学を推進する権利を高めていくことを、持続可能で繁栄する社会と持続的な平和のために必要な要素として強めていく。

4. 科学コミュニケーションにおける責任と倫理
科学の発見のペースは加速しているが、科学情報や研究の利益へのバリアは残っている。科学情報の複雑さと膨大な量は、データの確認には新たな方法が必要となっている。AIが新たな科学情報の管理に新たな可能性をみせてはいるものの、同時に個人情報に関するプライバシーや管理に関する問題も秘めている。こうした発展は、知識へのアクセスや出版に関する現状の課題、新たなコミュニケーション戦略に関する展望を大きく変換し得る。

我々は、公的利益としての科学の責務を強め、オープンな科学や新たな科学出版にアクセスしやすいような出版モデルをサポートする。

我々は、一般市民が科学に参画することの受容性を認識する。その中には、その実行や応用、研究成果の会社に関するリスクも含まれる。我々は、科学者に市民科学(シチズンサイエンス)や、実行可能な知識を共同で創造することを促進する。

我々は、証拠付けされた意思決定や、よりきちんとした科学に基づく政策の必要性を認識する。そのために、科学者が自分たちの仕事を意思決定や一般社会に伝えるための訓練が必要である。

我々は、科学情報を伝える上でのメディアの強力な役割を認識し、情報伝達におおいて厳密に、チェックし、分析することを要求する。我々は、特に、メディアを通じた科学の伝達において、矛盾したり、ミスリードしたりするようなニュースや情報、誤った利用などの点を特に踏まえ、科学の関係性を再度確認することを呼びかける。

我々は科学者に科学を生産し、応用し、コミュニケーションすることを推奨するとともに、利益と倫理的な懸念の両方について、認識を高めることを推奨する。

次回開催予定 令和3年 12月末(南アフリカ、ケープタウン)


講演する岸村連携会員

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