代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   欧州地球科学連合2019年度大会
    (英文)   European Geosciences Union General Assembly 2019

  2. 会 期

    2019年4月7日~12日(6日間)

  3. 会議出席者名

    小﨑 隆

  4. 会議開催地

    オーストリア・ウィーン

  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)

    113ヵ国、16,273名(内、日本人235名)

  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題
      • 4月7日:レセプション
      • 4月8日:総会、一般講演
      • 4月7~11日:一般講演
      • 4月12日:一般講演、座長レセプション
    • 会議における審議内容・成果

      総会議題:新Soil System Sciences(SSS)部門長(Claudio Zaccone博士)の承認、年次活動報告、会計報告、各賞受賞者報告

    • 会議において日本が果たした役割

      本大会は、国(あるいはそれを代表する学会組織)単位ではなく、基本的に個人の会員資格で全てのプログラムに参加し、各国の学会や国際的な連合組織はそれを支援することが求められている。派遣者は本大会を支援する国際組織の一つである国際土壌科学連合(IUSS)会長としてセッションの企画・運営、本連合の広報活動とともに、連合会員の研究発表・情報発信と交流を支援した。
      本大会におけるわが国からの参加者は235名、全体の1.5%、その数は113ヵ国中18番目であった。また、派遣者が代表を務めるIUSS会員はEGUでは土壌系科学部門(Soil System Sciences: SSS)を中心に活動しているが、本大会では当該部門関係シンポジウム等で2095課題、全体の約13%(内20課題がわが国の研究者による)、26部門中6番目の課題数であった。本大会ではわが国研究者の発表は多くはないが、IUSS全体としては、欧州域からのみならず、北米、アジア、南米、アフリカ地域からの参加者も多く、世界規模の研究集会であることから、毎年実施される連合の諸活動の中では最重要活動の一つとして位置付けており、今年度もその対応は適切であると判断された。また、世界的な集会であることは、わが国が歴史的に主要な役割を果たしてきた東・東南アジア土壌科学連合(ESAFS)の加盟国から総数2311名の参加者があったことでも裏付けられた。本大会において、わが国は他のESAFS主要国(中国、韓国、台湾)とともにIUSS広報ブースを共同運営することで積極的な情報発信活動を展開できた意義は極めて大きかった。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      大会としての共同声明などの発信はなかったが、報道メディアを対象とした情報発信が開催期間中連日計8回行われ、「健康リスク」、「プラスティックごみ」、「気候変動と熱波」、「人新世の徴」など広く社会や市民生活に直結する課題について最新の研究成果とその意味について情報発信がなれたことは本大会が研究者のみならずすべてのステークホルダーに対して責任を負っていることを示しており、その姿勢はどのような学術組織においても重要な側面であることと再認識させられた。



会議の模様

1) 本大会は地球、惑星、宇宙のすべてに関わる研究分野を対象としていることから、扱う課題は極めて広範に及ぶが、主催団体および参加者の多くの研究が目指す共通の方向は、それぞれの分野・部門における新たな方法論の開発、ビッグデータの効果的利用、より精度の高いモデル構築、研究成果の社会実装化であるように思われた。各論としては、「大気研究の社会への役割」、「地球科学研究の平等性実現のための支援と促進」、「地球史における長期的気候遷移の転換点」などが全体シンポジウムのテーマとして議論されたことは、現在の研究と社会の接点をよく反映しているようで興味深かった。
派遣者の直接関わるSSS部門では「土地劣化と保全」、「有機物・炭素の生態系内循環」、「林業・農業と土壌特性」、「土壌学研究における方法論開発」等の部会でより多くの研究者による発表が行われ、大会全体の方向性と類似していた。
2) 本大会の特徴の一つは大学院生を含めた若手研究者の参加者が多い(35歳以下が53%)ことが挙げられる。わが国からも多くの若手研究者を目にすることから、世界の傾向と一致しており、将来が楽しみではあるが、口頭発表の割合は必ずしも多くなく(派遣者が直接関わったSSS部門では15%)、全体統計42%とは大きな隔たりがある。言葉の障壁はやむを得ないが、今後この問題は徐々に解消されるであろうことが期待されるので、より多くの参加者が口頭発表にチャレンジして欲しい。もちろん、口頭かポスターかの発表形態は研究の質とは何の関係もないことは大会事務局でも明らかにしている通りである。
3) 1.にも述べた通り、わが国の参加者は235名であったが、近隣諸国からのそれは、中国1219名、韓国391名、台湾266名であり、それらの国々の本大会への関心の高さが伺える。わが国は自国でも毎年JpGU(日本地球惑星科学連合大会)を、また2017年および2020年にはAGU(米国地球物理学連合)との共同開催していることも本大会への参加者が必ずしも近隣3ヶ国ほど多くないことの理由の一つと考えられるかもしれないが、同様の状況にある米国の参加者は1068名とかなり多数であることから、わが国も米国やアジアのみならず、欧州諸国への情報発信と交流も今後一層活性化させる必要があるのではないかと考えられた。


次回開催予定:
2020年 5月上旬


ポスター発表セッションの様子
口頭発表セッションでの講演
広報・展示ブースでの様子
優秀発表賞授賞式での様子

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