代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   世界科学フォーラム 2017
    (英文)   World Science Forum 2017

  2. 会 期

    平成29年11月6日から平成29年11月11日まで(6日間)

  3. 会議出席者名

    新福 洋子

  4. 会議開催地

    ヨルダン 死海

  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)

    参加国数 140か国、参加者数 3000名

  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題
      日程 主な議題
      6日 若手アカデミーワークショップ「the GYA IAP World Science Forum’s Young Scientists Leadership Workshop on "Avoiding the Weaponisation of New Technologies”:」
      7日 Plenary Session: Science for Peace, Inaugural Ceremony, Plenary Session: Promoting Inclusion through Science Education, Outreach, and Engagement, Thematic Session: Connecting Scientists with Policy and Diplomacy for Peace and Sustainable Development
      8日 Plenary Session: Science and Food Security: How to feed the World Sustainably and Equitably Thematic Session: Women as Leaders for Diversity and Development, The role of Artificial & Human Intelligence in Solving Global Challenges & Supporting Science in The Arab World, Science-based Advice to Policy-Makers I an Era of Alterative Facts
      9日 Plenary Session: The Opportunities and Challenges of Digital Transformation, Building Resilience in an Interconnected World Special Plenary Session: Young Researchers Identify Skills of the Future to Advance Science Diplomacy and Society Thematic Session: Empowering scientists and society to support the SDGs: a MENA perspective
      10日 Plenary Session: Rebuilding broken societies through reconstruction and recovery, Science Diplomacy to Strengthen Governance and Build Enduring Relationships Special Session: Sustainable Development Goals: The future We Want but Can We Have? Closing Ceremony, Endorsement of the Declaration
      11日 Field Activities
    • 会議における審議内容・成果

      WSF2011ブタペストから続く社会のための科学への転換、持続可能な開発目標(SDGs)、女性科学者の課題、国際共同研究の推進、災害・紛争からの復興など、特に科学が平和にどう貢献できるかについて、課題と解決策、Science Diplomacy (科学技術外交)の重要性が話し合われた。

    • 会議において日本が果たした役割

      6日のGYAとIAPが主催した若手アカデミーワークショップは40歳以下の若手研究者20人が招待され、科学技術を紛争に用いないためのディスカッションを行った。参加者の新福はその20人の一人に選ばれ、世界の若手科学者たちと科学の未来について話し合った。専門が医療であったため、ゲノニクスのグループに入り、オーストラリア、台湾、コロンビア、イラン、南アフリカの研究者らとゲノム研究により貧富の差が拡大しないための方策を話し合った。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      以下の5つが最終日に発表された宣言である。

      1. 紛争を避け、平和な開発を促進するために、公平で持続可能な自然資源の管理が重要である。
      2. 世界的な移民の潮流に脅かされている科学的能力の保存が、平和、持続可能な開発、レジリエンスと回復の鍵である。
      3. ダイバーシティが科学、技術、イノベーションにおける卓越を現実化し、その妥当性とインパクトを最高にする鍵である。
      4. 我々は、科学への世界共通の権利を満たすことにコミットする。
      5. 我々は、アラブ圏のための地域科学フォーラムの発足を支援する。



会議の模様

科学技術については、AI、ロボットやビッグデータ、ゲノムなどが進んでいるが、実用するにあたり、倫理的な配慮をどう進めるか、ゲノニクス(ゲノムとエレクトロニクスの融合分野)において、例えば障害のある人にロボットスーツを用いた場合、動けるようになることは素晴らしいが、スーパーヒューマンとして技術が悪用されないようにするにはどうしたら良いかといった点がまず挙げられた。核と同じく平和利用できるも武器として使われかねない技術について、科学者が認知していることの重要性、技術の応用に対する国際基準を設ける必要性が話し合われた。

女性科学者の課題は、各国によって状況は異なる。アラブ圏でもSTEM教育を受けている女子学生は増えているが、キャリアにつながっているか、またその中で意思決定をする役職になっているかという点がまだ課題が残る。セッションには王妃もと王女も現れ、女性科学者の活躍にエールが送られた。

SDGsについては、JST主催のセッションで日本の取り組み冊子が紹介され、海外の研究者からも参考にしたいという声があった。森林伐採をモニターできる技術やアフリカの非電化地帯における再生可能エネルギーでの電化による人々の暮らしや安全性の向上は、SDGsの中の環境保護と技術の具体例として紹介された。

国際共同研究は、ヨルダンのSESAMEを例に、国同士が紛争状態にあっても、研究者同士では平和を日々意識して働いていること、また紛争後に話し合いの席に着くときにも、科学技術の共有(例、気候、安全情報の共有)は関係改善の一助となることが語られた。

災害・紛争からの復興では、JST有本上席もパネルとして登壇し、日本の戦後復興、科学技術の発展と環境改善、震災後の復興について、ケーススタディとして紹介され、こうした過去の事例から学ぶ教育の重要性が伝えられた。天災・人災後、どのような街づくりをするのかについては各ステークホルダーの意見が分かれやすく、復興が進みにくい現状、経済やシステムの復興には時間がかかること、復興は外国が先導するものではなく、その国が主権を持って進めるべきであることなどが話し合われた。

こうした国をまたがる問題は、常に政治家、政策決定者との話し合いが求められ、科学者として政策に対する提言をするにしても、政策を扱う人達と同じ言語を用い、彼らの考え方を理解した上で行うこと、そのためには科学者もScience Diplomacyを学ぶことの重要性が挙げられた。米国では若手科学者が博士号を取得後、政府で働く経験を持つフェローシップがあり、各技術の応用について、政策的な視点も持ちながら取り組むことができている事例が紹介された。各国においてそうした取り組みが求められている。


次回開催予定2019年11月頃



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