日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   第48回IUPAC総会 および 第45回IUPACコングレス
    (英文)   48th IUPAC General Assembly and 45th World Chemistry Congress

  2. 会 期
      2015年8月7日~14日(8日間)
      2015年8月9日~14日(6日間)
  3. 会議出席者名
      所 裕子
  4. 会議開催地  大韓民国・釜山
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      約60カ国、約300名、約15名
      約60カ国、約2000名、数十名
  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題

      IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、グローバルな視点で化学を進展させていくこと、化学を通して現代社会に貢献していくこと等を主な任務としており、2年に1度、総会(General Assembly)とコングレス(World Chemistry Congress)が開催されている。今年は第48回IUPAC総会(2015年8月7日~14日)と第45回IUPACコングレス(2015年8月7日~14日)が、大韓民国の釜山で開催された。

      IUPAC総会では、上述した任務を遂行するため、8つの専門分野の議題を取り扱うディビジョン・ミーティング(8月8,9日)、これからの化学のあるべき姿を議論するワールド・ケミストリー・リーダーシップ・ミーティング(8月10~12日)、化学産業や化学教育など特定のトピックスを取り扱う委員会(8月9~12日)、IUPACの最高決議機関である理事会(8月12,13日)が開催された。

      IUPACコングレスは、化学全分野を対象とした学術的な研究発表および研究討論を目的としている。鈴木章先生をはじめとするノーベル賞学者らによる基調講演とともに、総会とのジョイント・イベントとしてのDistinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering award授賞式も行われた。約60カ国から世界中の化学研究者が集まり、各専門分野に分かれて研究発表および研究討論が活発に行われた(8月9~14日)。

    • 会議における審議内容・成果

      IUPAC総会ではYoung Observerとして参加した。Young Observers Briefing(説明会)、ディビジョンI(物理化学、生物物理化学分野)のミーティング、ワールド・ケミストリー・リーダーシップ・ミーティング、理事会に参加した。
      Young Observer Briefingでは、参加者の自己紹介の後、IUPACの任務および活動に関する説明、IUPAC総会でYoung Observerが果たす役割についての説明が行われた。

      ディビジョンI(物理化学、生物物理化学分野)のミーティングは、ディビジョンIのメンバー参加者およびYoung Observer参加者の自己紹介から始まり、ディビジョンIの任務と目的の説明および再確認を行った。続いて、ディビジョンIのこれまでの活動報告、Titularメンバーの選考結果報告、これからの活動の提案、現在進行中のプロジェクトについての進歩状況報告、会計報告、物理化学Cartoon学生コンペの結果報告、新規プロジェクトの提案、他ディビジョンとの連携プロジェクトなど、15個の議題について報告・議論・提案が活発に行われた。

      ワールド・ケミストリー・リーダーシップ・ミーティングでは、Young Observerが4つのチームに分けられ、各チームで議題を決定し、その議題について討論およびプレゼンテーションを行った。議題のコンセプトは“Sustainable Development (地球に優しい開発)”であり、IUPACより予め用意されていた17のゴールを参考にした。翌日には、Prof. Yuan-Tseh Lee、Prof. Hubert Mandery, Prof. Javier Garcia Martinezらのご講演の後、各議題についてチームで討論した成果をプレゼンテーション形式で発表した。

      理事会では、国ごとに決められたエリアに着席した形式で、本総会での成果の発表および決議などが行われた。前総会(47th)の議事録および過去二年間にBureauとExecutive committeeにより作成した決定事項、IUPAC幹部メンバーらによる報告事項、各ディビジョンのプレジデントによるディビジョン・ミーティングの成果などが報告された。また、財務報告、次回総会コングレスの説明、その他必要な決議作業を経て、次々回開催地、Vice President、Members of the Bureauなど幹部役員の投票が行われた。

      Distinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering award表彰式では、12名の国際的女性研究者の受賞を祝し、受賞記念講演が行われた。日本からは、川合真紀先生(理化学研究所・東京大学 教授)がご受賞された。

      IUPACコングレスでは、基調講演および関連分野のセッションに参加した。特にマテリアル関連セッションでは自身の研究成果について発表を行い、研究討論を深めた。

    • 会議において日本が果たした役割

      巽和行先生(名古屋大学 名誉教授)がIUPAC前会長として、山内薫先生(東京大学 教授)がBureauとして、ご活躍されていた。さらに、川合真紀先生(理化学研究所・東京大学 教授)がDistinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering awardをご受賞された。また、理事会では日本が中国、ドイツ、韓国、米国と並んで6票の投票権(最多投票権数)を有し、存在感を見せた。その他、総会において、日本から参加された先生方や研究者の方々が鋭い意見を発信し各国の代表と議論を交わしており、コングレスにおいては、鈴木章先生の基調講演をはじめ日本から参加された研究者の方々が活発に研究発表・討論をされており、本会議において日本が果たした役割は非常に大きいものであった。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      インターナショナルイヤー・オブ・ケミストリー・セレブレイションズ2011のプロジェクトの一つとして始められた、世界の優れた女性化学者を顕彰する賞Distinguished Women in Chemistry / Chemical Engineeringの表彰式が開催された。国際的に著名な12名の女性化学者が受賞され、日本からは川合真紀先生が表彰された。



会議の模様

IUPAC総会ではYoung Observerとして参加した。

Young Observers Briefing(8月8日): 説明会には巽和行前会長やIPAC幹部の方々も多数参加され、IUPACはグローバルな視点で化学を進展させ、化学を通して現代社会に貢献していくこと等を主な任務としていること、2年に1度、総会とコングレスを開催していること、毎年多くの専門的なシンポジウムを開催していること、単位やデーターの国際標準の設定など多くの活動を行っていることなどが行われた。IUPAC総会でYoung Observerが果たす役割についても説明が行われ、約30名程度のYoung Observer全員が自己紹介を行った。日本からのYoung Observerは長谷川美貴先生(青山学院大学 教授)、報告者の2名であった。アジアから2名のYoung Observerが参加しているのは日本だけであった。今後も日本の存在感を高めていくことが重要と感じた。

ディビジョンI・ミーティング(8月8日、9日):2日間行われたディビジョンIのミーティングでは、世界各国からの代表者からなる約20名の参加者により活発な議論が行われた。まず、ディビジョンIのメンバー参加者およびYoung Observer参加者(米国4名、イギリス1名、スイス1名、日本1名、パキスタン1名)の自己紹介から始まり、ディビジョンIの任務と目的の説明および再確認を行った後、Young Observer参加者による研究紹介プレゼンテーションが行われた。続いて、Titular MembersやAssociate MembersなどディビジョンIの委員の紹介と、ディビジョンIの過去2年間の活動報告(国際ミーティングやTitularメンバーの選考結果報告(4名が新しく選出)など)が行われた。引き続き、これからの活動の提案、現在進行中のプロジェクトについての進歩状況報告、会計報告、物理化学Cartoon学生コンペの結果報告、新規プロジェクトの提案、他ディビジョンとの連携プロジェクトなど15の議題について報告・議論・提案が活発に行われた。これからの活動の提案では、今後開催予定のミーティングにおける議論の内容、ディビジョン’s ブックの進め方、グリーン・ブックなど書籍やウェブサイトなどを通したディビジョンIの活動の進め方について審議した。現在進行中のプロジェクトについては、例えばIUPCAが出版しているグリーンブックの要約版を作成するプロジェクト、パスト・プレジデントである山内先生がプロジェクト・リーダーを務める”超高速レーザー化学”についての集約を出版するプロジェクトなど、23のプロジェクト全てについて、1つ1つをリストアップし内容の確認および進歩状況を確認した。詳細な会計報告と物理化学Cartoon学生コンペの結果報告の後、新規プロジェクトの提案という議題では、前回のIUPAC総会にて提案された生物物理関連のプロジェクトの新規立ち上げについてデーター標準化の重要性などを踏まえた議論が行われるとともに、シェール・ガスについて、取り扱い・危険性・有用性を物理化学的見地から調べてまとめるプロジェクト、理論化学計算のDFT法について、その概要や用語集の作成および体系化を行うプロジェクトなど、今後の新規プロジェクト提案に関する議論が活発に行われた。その後、他ディビジョンとの連携プロジェクトに関して議論を行うために、ディビジョンIII(有機化学、生物分子化学分野)、ディビジョンII(無機化学)とディビジョンV(分析化学分野)との合同ミーティングが開催された。ディビジョンIIIとの連携プロジェクトでは、NMRのデーター記載方法の標準化に関する議論が行われ、ディビジョンIIとディビジョンVとの連携プロジェクトでは、例えば、高校生にモル(アボガドロ数)の概念を正しく正確に教えるための議論などが行われた。

ワールド・ケミストリー・リーダーシップ・ミーティング(8月10~12日):ミーティングの冒頭、このミーティングにおいてYoung Observerが行う仕事についての説明がなされた。次に、Young Observerが5つのチームに分けられ、各チームで議題を決定し、その議題についての討論を行った。議題のコンセプトは“Sustainable Development (地球に優しい開発)”であり、IUPACより予め用意されていた17のゴールを参考に、各チームが議題を決定した。議題はそれぞれ、チーム1は“Increasing awareness of IUPAC project impacts and resources (IUPACプロジェクトのインパクトとリソースの認知度の向上)”、チーム2は“Assessment of the status of phosphate recycling(リン酸リサイクルの状況評価)”、チーム3は“Guidelines for sustainable catalysis and their implementation(サスティナブル・触媒と実現のためのガイドライン)”、チーム4は“Solve the water pollution problem(水質汚染問題の解決)”、チーム5は“Water narrative: providing resources for cleaner water for all(水物語:水質改善のためのリソース提供)”であった。各チームでそれぞれ議論を深めるとともに、議題をIUPACプロジェクトに申請するため準備を行った。翌日には、Prof. Yuan-Tseh Lee、Prof. Hubert Mandery, Prof. Javier Garcia Martinezらのご講演の後、各議題についてチームで討論した成果をプレゼンテーション形式で発表した。

理事会(8月12日、13日):各国の代表が集まり、国ごとに決められたエリアに着席した形式で、会議が進行された。オープニングの後、IUPAC幹部メンバーらにより、前回のIUPAC総会(47th)の議事録および過去二年間にBureauとExecutive committeeにより作成した決定事項、IUPAC幹部役員候補者の紹介、IUPAPなどの国際学術組織や各国の化学会との連携活動などの報告がなされた。休憩をはさんで、各ディビジョンのプレジデントより、本総会でのディビジョン・ミーティングの成果が発表された。

2日目には、Vice President、Treasurer、Secretary General、BureauなどIUPAC幹部役員の投票が行われた。2016・2017年の副会長は中国のQi-Feng Zhou氏に決定した。巽和行先生の前会長の任期は本年末で終了し、2016・2017年の会長はロシアのNatalia Tarasova氏(現副会長)に決定している。幹部役員Bureauである山内薫先生の任期は2017年末まで続く。その後、財務報告、次回(2017年・ブラジル サンパウロ)および次々回(2019年・フランス パリ)IUPAC開催責任者から開催計画の説明がなされた。

Distinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering award授賞式および受賞講演会(8月11日): Distinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering award授賞式と、受賞を祝した記念講演会が開催された。12名の国際的に著名な女性研究者が受賞され、日本からは、川合真紀先生がご受賞された。記念講演会では、各国の女性研究者を取り巻く状況などについてのお話がなされた。特に川合先生は,ご自身のキャリアについて,研究者にとってたいへん参考になるエピソードを交えて分かり易くご説明されたとともに,日本における女性研究者の状況(割合)について紹介された。

コングレス(8月9~14日):IUPACコングレスは、様々な国から多くの研究者が参加しており、活気あふれる学会であった。基調講演および関連分野のセッションに参加した。特にマテリアル関連セッションでは、自身の研究成果についての発表を行い、研究討論を深めた。環境化学や触媒、電池など地球環境に関連した分野の研究発表が多く、環境問題における化学の重要性を再認識した。

次回開催予定 2017年7月 ブラジル(サンパウロ)で開催予定である。

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