日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

会議出席報告

  1. 会議概要
    • 1) 名 称  (和文)   スウェーデン・日本若手アカデミー合同会議
                   (英文)   Joint Meeting between the Young Academies of Sweden and Japan
    • 2) 会 期  2013年6月12日~13日(2日間)
    • 3) 会議出席者名  狩野光伸、西山雄二、駒井章治、田中由浩、高橋良和、中村征樹、住井英二郎、一ノ瀬友博、蒲池みゆき、吉田丈人
    • 4) 会議開催地  スウェーデン、ストックホルム
    • 5) 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
        スウェーデン若手アカデミーのメンバー10名,日本学術振興会ストックホルムセンターの職員3名
    • 6) 会議内容  
      • 日程及び会議の主な議題
        12日:カロリンスカ研究所(Karolinska Institute)のSciLifeLab、王立技術学校(Royal School of Technology)、ノーベル博物館をスウェーデン若手アカデミーメンバーによるガイド付きで現場視察。
        13日:スウェーデン王立科学アカデミーにて合同会議。各アカデミーの紹介、研究発表、小グループ・ディスカッション、懇親会
      • 会議における審議内容・成果
        研究発表として、西山雄二(首都大学東京)が発表「カタストロフィを前にした人文学の誠実さ」をおこない、3.11という三重の災厄に対して哲学や文学は何をなしうるのかについて報告した。Danica Kragic Jensfelt氏(王立工科大学)が、ロボットやコンピュータの画像認識という観点から、物体の把握と操作の可能性と課題について報告した。4班に分かれて実施されたグループ・ディスカッションでは、「キャリア・トラックと研究生活(ジェンダー)」「各国の若手アカデミーの将来、国際的・国内的な活動や連携」「科学技術政策――政策の決定や議論における科学」「学際性をいかに機能させるか」という主題に即して、若手研究者ならではの議論が展開された。
      • 会議において日本が果たした役割
        2012年2月、日本学術会議代表派遣によって、若手アカデミー委員会副委員長・狩野光伸のスウェーデン若手アカデミー訪問がおこなわれた。その際に、本合同会議の開催が関係者間で合意され、今回実現するに至った。今回の合同会議では東日本大震災に関する報告をおこなうことで、災厄に対する科学の役割という問題提起をおこなった。グループ・ディスカッションにおいて、日本の若手研究者の現状と課題、展望を提示し、議論を深めることに成功した。
      • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
        来年度以降、スウェーデン若手アカデミーのメンバーを日本に招聘して、合同会議を開催することで合意した。
  2. 会議の模様
    初日はスウェーデン若手アカデミーメンバーによるガイドで各所を視察させていただいた。まず、カロリンスカ研究所(Karolinska Institute)のSciLifeLabにて現場視察をおこなった。カロリンスカ研究所は教育活動も備え、病院も併設する、医学系の単科教育研究機関としては世界最大の機関である。Erik Lindahl氏のコーディネイトによって、生命科学研究グループの研究成果を伺った。具体的には、次世代シークエンサーと呼ばれる高速の遺伝子配列読み取り機器が最近同研究所に複数導入されており、この機器を用いた各種研究の展開を伺った。
    お昼を挟んで、午後は王立工科大学(Royal School of Technology)を訪問し、ロボット工学の研究成果をみせていただいた。生活空間におけるロボットの活用を中心に、ロボットの未知環境への適応や人間との協調作業、ロボット間のコミュニケーションなどについてご紹介いただいた。
    夕方、ノーベル博物館を館員のガイド付きで見学させていただき、普段は公開されていない地下の書籍収蔵庫も視察することができた。

    翌13日、ストックホルム大学に近接する王立科学アカデミーの施設にて合同会議がおこなわれた。
    まず館内で、ノーベル賞の選考委員会にも使用される会場をガイド付きで見学した。歴代のアカデミー総裁の肖像が並ぶ壮麗な部屋は圧巻だった。王立科学アカデミーの歴史は古く、フレドリク1世の発意によって、植物学者カール・リンネ(彼は若干32歳で選出)ら数名の尽力で1739年に創設された。ペストの猛威や大北方戦争によって難局にあったスウェーデンの国力を再建するために、農学、林学、鉱山学の分野で実践的な研究成果をあげることが主要な目的だった。リンネの弟子にあたるトゥンベリー(Carl Peter Thunberg)についても紹介があった。彼は1775年に日本を訪問して江戸幕府参内も経験し、その記録を出版しているが、帰国後同アカデミーの総裁も務めた人物であり、帰国後の講演の自筆草稿を見せていただけた。現在、王立科学アカデミーはノーベル賞の選出の責任を負い、物理学賞、化学賞、経済学賞の選考委員会を設置している。
    会議では、まず駒井章治委員長とAnna Sjostrom Douagi事務局長からお互いの若手アカデミーに関して組織や活動、創設の経緯に関して紹介がおこなわれた。スウェーデン若手アカデミーは王立科学アカデミーのもとで2011年5月に創設された。その創立式では、実に印象的なことに、親アカデミーが植物の種に水を注いで、若手研究者に手渡したそうである。若手アカデミーの目的は、学際的な学術交流の促進、科学政策のプラットフォームの構築、高度な学術成果の社会的発信、国際的な交流の拡充など、一見すると親アカデミーと似通ったものだが、若手は親アカデミーとは異なる独自の仕方で活動を展開することが求められる。
    その後、双方からひとつずつ研究発表がおこなわれた。西山雄二(首都大学東京)は発表「カタストロフィを前にした人文学の誠実さ」をおこない、「3.11」という三重の災厄に対して哲学や文学は何をなしうるのかについて報告した。また、Danica Kragic Jensfelt氏(王立工科大学)が、ロボットやコンピュータの画像認識という観点から、物体の把握と操作の可能性と課題について報告した。

    その後、4班に分かれて実施されたグループ・ディスカッションは若手ならではの視点で議論が交わされた。
    「キャリア・トラックと研究生活(ジェンダー)」では、両国の若手研究者をとりまく情勢や女性研究者をめぐる状況、家事負担などについて情報共有と意見交換をおこなった。スウェーデンでは高額の研究費をとるためには海外での研究経験が必要とされるなど、若手研究者が海外で研究するモチベーションが制度的に確保されているとの指摘が印象的だった。他方で、スウェーデンでは大学での正教授の地位が安定している反面、米国などに比べて研究費などの研究環境は劣っているのではないか、とくに大学院生・ポスドクを雇用する際の社会保障の負担が大きいために国際的な競争力を削いでいるのではないかとの発言もなされた。
    「各国の若手アカデミーの将来、国際的・国内的な活動や連携」でまず確認されたのは、National Young Academies(NYA)メンバー以外の若手科学者の交流を促進するために、各NYAの交流は非常に重要だということである。スウェーデンと日本は文化的共通点があるため、学術的な交流において意思の疎通が比較的容易であろう。両国間の交流を促進する上で、若手アカデミーの将来的な活動は重要である。
    「科学技術政策――政策の決定や議論における科学」では、日瑞両国における科学技術政策への若手アカデミー関与について経験の共有がなされた。その上で確認された方針は、科学者個人ではなく組織として意見を出すこと、政治に入り込むのでなく政策への専門的アドバイザーという立場を貫くこと、意見をまとめる際には関連の状況を踏まえた上で「根拠に基づく(evidence based)」判断をすること、異なるセクターにいる同士(例えば科学者、政治家、官僚など)で適切に意見交換を行い相互理解を深めること、などである。
    「学際性をいかに機能させるか」では、専門分野と学際性との効果的な連携とその問題点が指摘された。学問分野の垣根を越えた共同といっても、高度に専門化した他分野について学術的見解を述べることは難しい。自分の専門分野に立脚した狭小なパブリック・コメントにしかならないのではないか。学際的研究における若手ならではのメリットは、ボス的存在を排して、柔軟な発想で民主的なネットワークを形成しうる点にあるだろう。

    短期間の滞在だったが、視察からはさまざまな学術的・文化的刺激を受け、日本・スェーデンの若手の連携に向けて、一気に交流が進んだことは有益だった。来年度以降、今度はスウェーデン若手アカデミーのメンバーを日本に招聘して、合同会議を開催することで互いに合意した。今回の出張に尽力していてだいた日本学術振興会および日本学術会議には心より感謝申し上げる次第である。
会議の模様
カオリンスカ医科大学を訪問
会議の模様
スウェーデン王立科学アカデミーを訪問
会議の模様
スウェーデン若手アカデミーとの会合
会議の模様
スウェーデン若手アカデミーとの集合写真
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