代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)宇宙空間研究委員会(COSPAR)総会プログラム委員会及び科学アドバイザリー委員会等

    (英文)COSPAR Scientific Advisory Committee Meeting, Assembly Program Committee Meeting, Symposium Program Committee Meeting, Space Exploration Roadmap Meeting

  2. 会 期
    2025年3月16日から2025年3月19日まで(4日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:対面
    2. 会議の開催周期:年1回
    3. 会議開催地、会議場:ローマ・イタリア、INAFローマ天文台
    4. 会議開催母体機関:COSPAR
    5. 会議開催主催機関及びその性格:COSPAR、国際学術機関
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)

      参加国名:イタリア、インド、英国、オランダ、キプロス、ギリシャ、中国、ドイツ、日本、フランス、米国、ポーランド、ポルトガル
      参加国数:13か国
      参加者数:30名
      日本人参加者:矢野創・助教・JAXA宇宙科学研究所

    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):

      会 期:2026年3月
      開催地:パリ・フランス
      準備組織:COSPAR
      主なテーマ:科学アドバイザリー委員会、総会プログラム委員会等

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

      2025年3月16日~19日、 COSPAR運営に関する科学的知見からのアドバイス、総会及びシンポジウムそれぞれのプログラム編成に関する討議、COSPAR独自の宇宙探査ロードマップの方針・編集に関する討議等。

    2. 提出論文:なし
    3. 学術的内容に関する事項:

      ロシアのウクライナ侵略等各地での世界紛争及び米国新政権による科学行政方針の大幅な変更が、今後の宇宙科学、特に地球観測・深宇宙探査分野の学術研究、とりわけ国際協力プロジェクト・プログラムに与える影響について、時間を割いて議論された。具体的には、米国参加者より情報収集し、当該学術活動の停滞・後退に関する懸念を整理し、COSPARにおける喫緊の総会・シンポジウム、ロードマップ編纂などへのアクションの反映を議論した。

    4. その他の特記事項:

      報告すべき審議内容・成果:
       2026年総会及び2025年シンポジウムそれぞれのプログラム案について、(3)項の観点を踏まえた改善策が議論され、承認された。従来の両学術会議で参加総数の20-25%を占めていた米国研究者の大半が不参加となった場合でも学術内容、予算両面から学術会議を成立させるためには、今後も不断の努力が必要である。一方で、COVIDパンデミック時のようなオンラインによるハイブリッド講演は極力避けるべきとの意見が大半であった。今後は、アジア太平洋地域諸国と欧州諸国の間で、地球観測や宇宙探査に関する国際協力を強化していくことを求める意見も出た。

      日本が果たした役割:

      (1)科学コミッションB(太陽系探査科学全般)委員長である筆者は、2026年総会、2025年シンポジウムの両プログラム中の関連分野セッションの準備で、中核的役割を果たした。

      (2)2027年出版を目指すCOSPAR独自の宇宙探査ロードマップの編纂に、共同編集者の一人として参画することになった。

      (3)COSPARの8つの科学コミッションを横断して、機械学習とデータサイエンスを応用するパネルが新設された。筆者は初代パネルリエゾンとなり、活動を支援することになった。

      (4)キャパシティビルディングパネルのキューブサット教育プログラムに、日本発のUNISEC Globalと国際宇宙ステーションからキューブサットを放出するKibo-CUBEスキームを筆者が紹介し、新しい連携を促した。

      (5)2026年総会のハイライトの一つである学際講演会に、人類初の月裏面サンプルリターンの初期成果をScience誌に掲載した中国研究者を推薦し、了承された。

      共同声明の有無:なし

      国内外での報道状況:国内ではなし。
       国際的には、LinkedIn等のSNSメディア及びCOSPAR公式ホームページ等で、準リアルタイムの報告がなされた

      次回開催に向けての課題等:
       今回は、通常使用しているフランス宇宙機関(CNES)本部ビルが改修中のため、例外的にイタリア(ローマ)で開催された。2026年3月の定期会議は、改修後のCNES本部に戻る見込み。なおNASA等の連邦政府職員である米国人役員の多くは、引き続きオンライン参加となる可能性がある。

所見

 会議場が例年のパリ市街の中心にあるCNES本部に代わり、イタリア国立宇宙物理学研究所(INAF)のホストによる、ローマの街を一望できるモンテマリオ山頂にある歴史的研究施設・ローマ天文台での開催だった。そのため、一日中参加者間で濃密な対面コミュニケーションが図られ、各課題について会議中のみならず休憩時間でも深い議論が継続された。極めて効率的な会議だったといえる。
 科学アドバイザリー委員会、総会及びシンポジウムのプログラム委員会、宇宙探査ロードマップ会議の全てに共通して、世界各地の戦争と米国新政権下での地球観測および宇宙科学の政策変更がもたらす影響とその対策に関する議論に、多くの時間が費やされた。こうした困難な世界的状況にこそ、「国際協力による宇宙科学の発展」というCOSPARの根本理念と歴史的実績が再注目され、その活動の重要性が一層高まっている、という使命感に似た認識が共有された。特に、米国とロシアの参画が停滞した現状で、宇宙科学分野をどう牽引していくのか、米国新政権が否定したIDEA(Inclusion,Diversity,Equity, Accessibility)概念を、国際学術団体であるCOSPARはひるまず推進すべきであり、そのためにも欧州、アジア地域、アフリカ地域等の連携を強化しつつ、民間企業との新しい協力も進めるべき、という議論が多かった。
 2025年11月にはキプロス島でCOSPARシンポジウムが開催される予定で、そのアブストラクトの投稿締切りが2025年4月に迫っている。現況の中で、そのプログラムを学術的にも予算的にも成立させることが、この新状況でのCOSPAR成功の試金石の第一歩となると考える。

本会議の様子 参加者との集合写真