第35回国際美術史学会世界大会

代表派遣会議出席報告

会議概要

名称

(和文) 第35回国際美術史学会(CIHA)フィレンツェ大会、理事会 (英文) The 35th CIHA World Congress, Florence (with CIHA board meeting)

会期

2019年 9月1日~6日(6日間)

会議出席者名

三浦篤

会議開催地

フィレンツェ(イタリア)

参加状況

参加国 27か国(香港などを旧CIHA加盟国区分どおり1カ国とする)約300人(うち日本人 10人)

会議内容

日程及び会議の主な議題

2019年9月1日―9月6日 第35回国際美術史学会(CIHA)フィレンツェ大会 総テーマ Motion:Transformation(動き:変化) 9月1日(日) Firenze, Villa Vittoria 18:00-18:30 開会セレモニー 18:30- Welcome Cocktails 9月2日(月) Firenze, Villa Vittoria, Palazzo Vecchio 9:30-19:00 第1、第2セッションの発表およびポスターセッション展示 21:00- 基調講演 9月3日(火) Firenze, Villa Vittoria, Palazzo Vecchio 9:30-18:00 第3、第4セッションの発表およびポスターセッション展示 18:30- Palazzo Vecchioの自由見学 21:00- 現代アートをめぐるラウンド・テーブル 9月4日(水) Firenze, Kunsthitorisches Institut 11:00-13:00 拡大理事会(理事会メンバー、加盟国代表委員および代理委員) 主な議題: ①2020年に開催するサンパウロ世界大会の準備状況説明(テーマはMotion:Migration)by Claudia Mattos ②2019年の東京コロキウム(テーマはToward the Future: Museums and Art History in East Asia)の報告と e-bookによる報告書刊行by Atsushi Miura ③2024年(6月23-27日の予定)の第36回リヨン世界大会のコンセプトと準備状況説明(テーマはMatter and Materiality) by Laurent Baridon and Sophie Raux ④新加盟予定国の紹介Georgian Committee by Giorgi Papashvili、Swedish Committee by Jessica Sjoholm Skrubbe. 今後もイスラエル、韓国、東南アジア諸国など候補となる国々に働きかけること。 9月5日(木) Firenze, Villa Vittoria 9:30-18:00 第5、第8セッションの発表およびポスターセッション展示 9月6日(金) Firenze, Villa Vittoria, Kunsthitorisches Institut 9:00-16:00 第6、第7、第9セッションの発表およびポスターセッション展示 16:00-17:30 ポスターセッション展示見学 18:30-閉会セレモニーとFarewell Cocktails

会議における審議内容・成果

第35回世界大会は2019年のフィレンツェ大会と2020年のサンパウロ大会を合わせる形で行われ、正式の理事会と総会はサンパウロで開催される。したがって、今回の理事会は参加者を拡大して非公式な形で行われ、Motionという共通テーマの下、フィレンツェのTransformationからサンパウロのMigarationへとスムーズに継承されることが確認された。東京コロキウムとリヨン世界大会の報告も問題なく、新加盟国予定国の委員の挨拶と説明も好意的に迎えられた

会議において日本が果たした役割

拡大理事会に報告者がCIHA副会長の一人として出席して、2019年東京コロキウムについて報告した。セッションの発表に関しては、第1セッションの議長と発表者の一人が日本人研究者であり、ポスターセッションには若手研究者(ポスドク、博士)が3人参加した。他に、海外の大学に所属する日本人研究者による発表が一つあり、外国人研究者による日本の美術を主題にした発表も散見された。それ以外の日本人聴講者も4人確認できた

その他特筆すべき事項

(共同声明や新聞等で報道されたもの等) フィレンツェ大会に関しては新聞報道のほかに、開会式と第1日目の第1セッションにはテレビ取材も入り、文化事業として注目を浴びていた

会議の模様

  第35回国際美術史学会(CIHA)フィレンツェ大会の総テーマはMotion: Transformation(動き:変化)であった。各セッションのテーマは①「聖なる芸術家としての神秘的な精神 ヴィジョン、芸術制作、共感を通したイメージの創造」、②「芸術家、力、公衆」、③「芸術と自然 収集という文化」、④「芸術と宗教」、⑤「デザイン/記号と書記言語」、⑥「アイコンを建てること 企画から製造までの建築」、⑦「芸術と美学における事物と物質性 時間から深層時間へ」、⑧「機械の中の幽霊 芸術家、批評家、観者の消滅」、⑨「旅」となっていた。美術のグローバル化の流れを受けて、多様な地域やジャンルにまたがる大きな広がりが感じられるテーマ設定であった。 報告者は主に第1、第3,第5セッションを聴講し、最終日は三つのセッションを移動して聴講した。「動き:変化」を総テーマとしているものの、さまざまな方向に派生する問題を扱っていたために、大会全体として明確な印象を得ることは難しかったが、研究成果の発表に優れたものはあった。日本人研究者の発表も二つあった。秋山聡氏(東京大学教授)が議長の一人を務めた第1セッションでは松崎照明氏(金沢美術工芸大学、東京家政学院大学客員教授)が日本独特の建築様式である「懸造」について、第6セッションでは青木美由紀ジラルデッリ氏(イスタンブル工科大学准教授補)が西アジアに調査旅行した建築家の伊東忠太について発表した。 大会の発表言語は主に英語で、ときにイタリア語の発表もあったが、英語で発表した場合も、質疑になるとイタリア語使用になりがちであった。開催国の母語使用をどこまで認めるのかという点は、大会公用言語の問題を含め、文科系国際学会の運営上の課題として残った。全体のコミュニケーションを優先して、使用言語を英語のみに限定できるかどうか、デリケートな問題と言えよう。 もう一つの課題として気づいたのは、議長の人選や発表者の配置に偏りがあったという点である。私が聴講した第5セッションは「デザイン/記号と書記言語」というイメージと文字の関係を扱った興味深い内容で、古代の文字から、書の問題、現代のデジタルの文字にいたるまで多彩な発表が集まっていた。しかしながら、発表者は非ヨーロッパ圏、周縁ヨーロッパ圏の研究者がほとんどで、聴衆がきわめて少なかったのは残念であった。議長2人も若手研究者であり、聴衆を惹きつける要素が希薄であった。例えば、議長の一人はよく知られた実績のある経験者にするとか、ヨーロッパの中心国やアメリカ合衆国の発表者を加えるとか配慮があってもよかった。グローバリゼーションの掛け声とは裏腹に、欧米の研究者の異文化への関心の薄さが目立ったセッションともなり、逆に日本人の聴衆が集まった点も際立っていた。 また、拡大理事会では、2019年3月に東京国立博物館で行われたコロキウム(Toward the Future: Museums and Art History in East Asia)について肯定的な評価をいただいた。世界大会とは規模が違うとはいえ、コロキウム全体としてのまとまりと発表の質の高さ、組織運営の仕方など、参加した他国の理事から一つの模範例として認識されているという印象を受けた。将来、再び日本でコロキウムなどを開催するときも、中国と並んでアジア地域の中心的なCIHA国内委員会として、充実した成果を残せればよいと思う。 第35回世界大会前半のフィレンツェ大会の後を受けて、来年行われる後半のサンパウロ大会がMigration(移動、移住)の統一テーマの下にどのようなプログラムを作り上げるのか、期待とともに見守りたい。ブラジルには日系移民のアーティストたちもいるので、移民と美術という問題も興味深い。ただし、欧米と比べて日本からブラジルははるかに遠距離になるので、日本からの発表応募者、参加者の数が少なくなることが危惧される。発表が受理された若手研究者に限って渡航滞在費を補助するような仕組みを作ることも検討したい。

次回開催予定: 2020年9月13日~18日、サンパウロ(ブラジル)

会場(Villa Vittoria)

開会式