代表派遣会議出席報告
会議概要
- 名 称
(和文) 国際人類学民族科学連合2019年中間会議
(英文) The 2019 Inter-Congress of the International Union of Anthropological and Ethnological Sciences (IUAES Inter-Congress 2019) - 会 期
令和元年8月26日~9月1日(7日間)
[IUAES役員会、WAU運営会議、WCAA代表者会議等を含む。IUAES中間会議は2019年8月27日~8月31日に開催。] - 会議出席者名
小泉潤二
- 会議開催地
ポーランド共和国ポズナン市 アダム・ミツキェヴィチ大学(ポズナン大学)
- 参加状況 参加国数 59か国、参加者数 615名(発表者数のみ)、日本人発表者 55名
- 会議内容
日程及び会議の主な議題
IUAES=国際人類学民族科学連合 International Union of Anthropological and Ethnological Sciences [小泉は会長]
WCAA=人類学会世界協議会 World Council of Anthropological Associations [小泉は元会長]
WAU=世界人類学連合 World Anthropological Union [小泉は共同議長]
IUAESとWCAAは昨年統合して、二院制の新組織(WAU)となった。
8月25日 ミハル・ブホフスキ教授(Michal Buchowski 本中間会議組織委員会委員長、アダム・ミツキエヴィチ大学民族学文化人類学部長、ポーランド民族学会会長、元WCAA会長、元ヨーロッパ社会人類学会会長)との会談。
8月26日 IUAES役員会、IUAES役員夕食会。
8月27日 IUAES2019年中間会議 (IUAES Inter-Congress 2019) 開会式、ハン教授による基調講演、歓迎レセプション。
8月28日 全体セッション、平行パネル、映像プログラム、WAU主催ラウンドテーブル、IUAES/WCAA合同役員会、IUAES各コミッション会議、ミハル・ブホフスキ教授(上記)との夕食会、ほか。
8月29日 全体セッション、平行パネル、ウォーターストン教授による基調講演、欧州研究機構(ERC)主催ワークショップ、WAU運営会議、IUAES研究部会協議会、中間会議主催夕食会、ほか。
8月30日 全体セッション、平行パネル、ウェンナー・グレン財団主催ワークショップ、WCAA会議、IUAES役員会、IUAES総会、WAU総会、ほか。
8月31日 平行パネル、WAU 運営会議、ミハル・ブホフスキ教授(上記)との夕食会、ほか。
9月1日 会員との懇談、ほか。
会議における審議内容・成果
本中間会議の全体テーマは「世界の連帯」(World Solidarities)だった。このテーマのもとに600本以上の論文が提出され、きわめて活発な議論が展開された。組織の管理運営面でも、IUAES、WCAA,WAUの役員会や総会・代表者会議が長時間にわたって開かれ、組織の発展が図られた。会議において日本が果たした役割
小泉はIUAES全体の会長として、IUAES役員会、IUAES総会、WAU総会、IUAES/WCAA合同役員会など、すべての主要会議で議長・共同議長を務め、IUAESとWAUに関わる全決定の中心となった。また窪田幸子も役員を務めている。この中間会議に日本から参加した発表者数は55名で全体の1割に近く、主催国ポーランドに次いで第2位だった。その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
定款(Constitution)と付帯規則の変更があり、これまで「IUAES中間会議」(IUAES Inter-Congress)として開催されてきた会議の名称が、「IUAES大会」(IUAES Congress)に変更された。これにより、4年ごとの「IUAES世界大会」と毎年の「IUAES大会」が開かれることになる。
また、これより小規模な「IUAES会議」(IUAES Conferences)を含めて、IUAESの会議をより頻繁に開催する可能性が議論されている。また、今回の規則変更により、IUAES研究部会(Commissions)の活動の活発化と、WCAA諮問会議(Advisory Board)の強化が図られている。
なお、IUAES総会・WAU総会において、アマゾンの森林が焼き払われ環境と生活が破壊されていることを非難する動議が可決され、国連事務総長などに送付された。
会議の模様
今回の大会を組織したのは、ポーランドのアダム・ミツキェヴィチ大学とポーランド民族学会であり、組織委員会委員長は、同大学民族学人類学部長で同学会会長のミハル・ブホフスキ教授である。アダム・ミツキェヴィチ大学の創立百周年とポーランドにおける人類学の成立百周年を記念して開催された。恵まれた会議施設を最大限有効に活用し、参加者にとってわかりやすく、きわめてよく準備された会議が実現した。
ポーランドにふさわしい「世界の連帯」というテーマのもとに、現代世界が直面する課題が増殖しますます多様かつ深刻になりつつある中で、それらについての活発な議論が行われた。参加国はポーランド、日本、英国、インド、ドイツ、アメリカ、中国、ロシア、オランダ、フランス、ブラジル、カナダ、イタリア、メキシコ、イスラエル、南アフリカ、ベルギー、韓国、オーストラリア、トルコ、ギリシア、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、インドネシア、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、スリランカ、タイ、ウガンダ、ザンビアなど約60ヵ国で、開かれたパネルは103、ラウンドテーブルが8、ワークショップが8、全体セッションが3、基調講演が2、民族誌映画のセッションが23である。基調講演は、マックスプランク社会人類学研究所の創設者クリス・ハン教授による「ヨーロッパの誘惑とユーラシアの連帯」、及び、米国人類学会前会長のアリース・ウォーターストン教授による「私たちが生きる未来のために世界の連帯を想像する」だった。本中間会議のパネルや提出論文は、全体として、現実的・実践的課題に正面から向き合う研究が増えつつあることを示しているように思われた。以下のような研究対象が目立った――地球環境、持続可能性、災害、感染症、グローバル紛争、移民、先住民、開発、食糧問題、都市問題、人種、差別、ジェンダー、教育、政策、人権、観光、文化遺産、など。こうした問題に関して、人類学がどのような役割を果たし得るかについての意識が強まっている。
今回ポーランドで開催されたこの中間会議も、IUAES会長・前会長、WCAA会長・前会長・元会長、ブラジル人類学会長・元会長、アメリカ人類学会前会長、カナダ人類学会元会長、ウェンナー・グレン財団会長、ヨーロッパ社会人類学会元会長、オーストラリア人類学会元会長、パンアフリカン人類学会会長、インド人類学会会長をはじめとする各国・各組織の代表者が集まって、今後の組織の発展について議論する重要な機会となった。
今回の中間会議は、IUAES(国際人類学民族科学連合)とWCAA(人類学会世界協議会)が、新たに二院制の統一組織WAU(世界人類学連合)となってから最初の会議だった。数千人の個人会員が参加し毎年世界のどこかで国際大会を開催する組織IUAESと、全世界のほぼすべての主要学会を含め53学会を網羅する組織WCAAが、それぞれの独自性と独立性を保ちながら緊密に協力して活動する形態が明確になった。WAUの二院制をさらに合理化・整備し、IUAESとWCAAの統合の相乗効果を最大とするための議論が始まっており、活動全体が活発化しており、今後人類学の重要性が増していくことが期待される。
次回開催予定:
・2020年
2020年10月7日-11日
クロアチア共和国シベニク市
クロアチア共和国ザグレブの人類学研究所主催
大会テーマ 「地上に来たる時代――人類学が受け継ぐもの、次世代人類学がつくるもの」(Coming of Age on Earth: Legacies and Next Generation Anthropology)。ホームページ https://iuaes2020.conventuscredo.hr/
・2021年
2021年11月を予定
メキシコ(調整中)
・2022年(ロシア サンクトぺテルブルク市)
2022年5月25日-31日を予定
ロシア人類学民族学会(AAER)、サンクトペテルブルク ピョートル大帝記念人類学民族学博物館(クンストカメラ MAE)、サンクトペテルブルク国立大学、ロシア科学アカデミー民族学人類学研究所(IEA RAS)の共催
・2023年(世界大会)
2023年1月15日-19日
インド ブヴァネーシュヴァル市
カリンガ社会科学研究所(KISS)の主催
開会式会場のアダム・ミツキェヴィチ大学本部 | 開会式会場 |
中間会議組織委員長ミハル・ブホフスキ教授による開会スピーチ | IUAES小泉会長による開会スピーチ |
開会式 | |
開会式 | ハン教授による基調講演 |
ウォーターストン教授による基調講演 | 基調講演会場 |
中間会議会場のアダム・ミツキェヴィチ大学 | ポズナン市内での中間会議主催夕食会 |
IUAES総会 | WCAA代表者会議 |