代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   第6回防災グローバル・プラットフォーム会議2019
    (英文)   2019 Global Platform for Disaster Risk Reduction

  2. 会 期

    令和元年 5月13日~令和元年 5月17日(5日間)

  3. 会議出席者名

    西川智

  4. 会議開催地

    スイス国ジュネーブ
    国連欧州本部総会会議場及びジュネーブ国際会議場CICG

  5. 参加状況  (182カ国、約4000名、日本人参加者約60名、中村昭裕内閣府審議官、水鳥真実国連事務次長補・国連防災事務所長、井戸敏三兵庫県知事ほか)
  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題

      5月13,14日は準備会合の日とされ、国連欧州本部総会会議場で開催された「科学と政策のフォーラム」、ジュネーブ国際会議場で開催された「世界復興会議」及び「民間セクター会議」をはじめ多数の分野別・地域別・ステークホルダーグループ別会合を開催。5月15,16,17日はスイス連邦援助庁長官出席の開会式、全体会、閣僚級会合、テーマ別シンポジウム、テーマ別分科会、ステークホルダー別会合が同時並行で開催、このほかに、主要テーマに沿った短時間単独講演会(ignite stage)、ブース展示、特別セッション等が開催された。

    • 会議における審議内容・成果

      会議全体の総括結果については、Co-Chairs’Summaryとして最終日に発表された。こちらを参照。

    • 会議において日本が果たした役割

      このグローバルプラットフォーム会合は、2015年3月に日本が仙台でホストした第3回国連防災世界会議の全国連加盟国による推進のために開催されたものである。
      全体会では、中村内閣府審議官より、日本の復興の経験についての各国への示唆に富む発表がなされたほか、多数の分科会において、日本からの出席者から専門性の高い発表が行われた。例えば、「Inclusive Recovery」のセッションでは、内閣府防災の佐谷参事官より、わが国での様々な災害経験を踏まえて復興課程での障がい者への配慮がどのように取り組まれてきたかについて発表がなされたほか、災害復興の経験の全体会では、井戸兵庫県知事より、阪神・淡路大震災からの復興の経験について発表がなされた。
      「科学と政策」については、5月14日に国連欧州本部の総会会議場で開催されたセッションに於いて、土木研究所ICHARM小池所長、防災科学技術研究所林春男理事長、西川智他が出席し、各国において防災政策に科学をよりよく反映させるためには、各国に於いて、科学的知見をもとに防災に関係する様々な当事者を結びつけるファシリテーターが必要でありそれを各国の防災ナショナルプラットフォームが支援するという構図を作っていく必要があると、2017年11月に日本学術会議が国連ISDR等と開催した国際会議の成果から導き出されたコンセプトについて紹介したところ、参加者から有益なinputを得た。また、5月16日に開催された「防災と科学技術」分科会においては、フィリピン、タイ、インドネシアから各国での防災への科学技術の反映の取組について事例紹介が行われるとともに、小池所長よりIFI(国際洪水イニシアチブ)の紹介が行われた。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      会議期間中、毎日、UNDRRが外部委託したNGOによりDaily Bulletinという形で写真入りのsummary(内容は、どこのセッションでこんな発表があったというnews report形式)が会議のwebsiteにアップロードされるという形式で情報提供された。なお、会議の予定表、speakers ‘listなどは印刷物としては一切配付されず、会議参加者が、各自スマートホンやタブレットで適宜検索して見つけるという形であった。



会議の模様

(この会議の経緯)
2019年5月13-17日、スイスのジュネーブ(CICGジュネーブ国際会議場他)で国連防災機関UNDRR(この会議直前に国連国際防災戦略事務局UNISDRから国連防災機関UNDRRと自ら改名した)が主催する2019防災グローバルプラットフォーム会合がスイス連邦をホストとして開催された。このグローバルプラットフォーム会合は今回が6回目、2005年の第2回国連防災世界会議での兵庫行動枠組みの採択を受けて始まったもので、これまで2007年、2009年、2011年、2013年と国連ISDR事務局があるジュネーブで、2017年はメキシコのカンクンで開催され、今回は再びジュネーブでの開催となった。今回の会合は2015年3月の第3回国連防災世界会議での仙台防災枠組(SFDRR)採択後2回目の会合であり、会議参加者は、主催者の事後発表によれば182ヵ国約4000名であったとのことである。
(会議の内容)
防災グローバルプラットフォーム会合は、国連加盟国の政府間交渉である国連防災世界会議(これまで1994年横浜、2005年兵庫、2015年仙台で開催)とは異なり、防災(ここではDisaster Risk Reduction 日本語の防災よりもやや狭く、予防を中心とした防災)について、各国政府、国際機関や国際NGOのみならず、企業も含めて様々な団体が、いろいろな形式で討議し、自らの取組を紹介し、情報交換する、いわば「防災の文化祭」のような自由度の高い場として設定されてきているものである。
5月13,14日は分野別準備会の日とされ、「仙台防災枠組実現のための科学・政策フォーラム」が国連ジューブ本部で開催された他、世界銀行GFDRRがリードして開催した「第4回世界復興会議」が同じCICGの会場で、世界気象機関WMO本部での「第2回マルチハザード早期警戒システム会議」をはじめ多数の分野別・地域別・ステークホルダーグループ別会合が同時並行で開催された。5月15,16,17日の本体会議は、ホスト国スイス連邦の閣僚、国連開発計画UNDP危機管理局長、WMO事務総長なども出席した開会式、全体会、ハイレベル会合、テーマ別シンポジウム、テーマ別分科会、ステークホルダー別会合を同時並行で開催、このほかに、主要テーマに沿った短時間単独講演会(ignite stage)、企業や国際NGOによるブース展示等が開催された。
全体会では、中村内閣府審議官より、日本が防災を政府の主要政策として組み込んできた過程についての各国の参考となる発表がなされたほか、内閣府防災の佐谷参事官からも日本の防災の現在の課題などについての発表が行われた。また第4回世界復興会議では、井戸兵庫県知事から阪神・淡路大震災から24年間の復興経験について発表が行なわれた。
今回のグローバルプラットフォーム会合は、2015年仙台での第3回国連防災世界会議から4年経過し、仙台防災枠組(SFDRR)の7つの国際目標のうちターゲットE「2020 年までに、国家・地方の防災戦略を有する国家数を大幅に増やす。」の目標年が1年後に迫っていることから、これに関連したセッションがいくつか組織化された。仙台防災枠組は2030年までの国際合意文書であり、7つの国際目標のうち6つは2030年までに達成すべき目標を掲げているが、このターゲットEだけは、各国や地方政府が防災に組織的に取り組むには、まず防災戦略を策定しなければ始まらないだろうという趣旨で2020年が目標年と設定されている。ただ残念ながら、それらのセッションに出席してみると、自国の防災戦略(日本で言えば災害対策基本法に基づく防災基本計画に類するもの)が完成した、あるいはまもなく完成するといった発表は少なかった。また、地方の防災戦略のセッションにおいても、例えば、英国のマンチェスター市からのパネリストが「自市には災害はほとんど無いが」とわざわざ前置きした上で、事故やテロ対策への取り組みを紹介するなど、2020年の目標達成がなかなか困難であることをうかがわせる発表が多かった。
筆者が今回派遣されたテーマである「防災と科学技術」については、前述の5月13-14日の準備会合に、土木研究所ICHARM小池俊雄所長、防災科学技術研究所林春男理事長(地域安全学会元会長)、西川智他が出席し、小池所長より、日本学術会議の科学技術を生かした防災・減災政策の国際的展開に関する検討委員会において過去1年余検討を進めてきた各国での防災ナショナルプラットフォームへの防災科学技術のより良い反映のあり方とその実践方法の提案として、各国内の各地域で様々なステークホルダーを繋げる防災活動の媒介役(ファシリテータ-)を立てて行なうことが有効という提案を発表し、参加者から好意的な反応を得た。
さらに、今回の会議では、2015年3月の第3回国連防災世界会議から4年経過した時点で、前述の各国政府や地方政府での取組み状況の他に、様々な学術団体や専門分野別の国際NGOなどが、仙台防災枠組の推進についてそれぞれの立場からどのように取組むのかを自主申告し、その進捗状況をUNDRRが情報提供を受け、様々なステークホルダーによる仙台防災枠組の進捗を把握するためのセッションが特別に企画された。ここには、日本からは、西川智がNPO法人国際斜面災害研究機構の一員として、地すべり災害への国際的な取組み状況について報告したほか、第3回国連防災世界会議のホスト市であった仙台市の副市長からも取組み状況の報告がなされた。
この会合は、政府間交渉でもなく、また会議参加者の合意文書を作成することが目的ではないものの、ホスト国スイスとUNDRRが中心となり、会議の報告としてCo-Chairs’ Summary副題Resilience Dividend: Towards Sustainable and Inclusive Societiesが発表された。この文書については、こちらを参照願いたい。
(特記事項:防災への国際的な関心の高まりと欧州勢の進出)
2015年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議以降、防災への国際的な関心が高まり、防災科学技術に関する分野では、日本の学術界が参画しているIRDRやFuture Earthをはじめ、多数のイニシアチブが開始されている。また、それに伴い、2005年の第2回国連防災世界会議以前は、自然災害にほとんど関心の無かった西欧諸国がこの会議に大挙して参加するようになった。今回、同時並行で多数のセッションが企画されるに当たり、当初は関心のある各国の学術団体や専門NGOや援助機関に対してセッションの提案募集がなされ、また、この2年毎の会議に合わせて出版されるGlobal Assessment Report (世界防災白書のようなもの)への投稿募集などがいったんはUNISDR事務局によって行なわれたものの、その後、セッション構成や分科会へのパネリスト候補の人選などについては、聞くところによれば欧州に拠点のある外部コンサルタントにUNISDR事務局から外注され、日本側の関係者からのセッション提案や投稿提案は、何らフィードバックを受けることなくうやむやにされた事例が数多く発生した。実際に、各セッションに出席してみると、これまでのグローバルプラットフォーム会合では、災害経験の多い国々からの事例発表やそれに基づいた討論が多かったことに較べて、欧州からの発表者が従前に較べて大幅に増え、災害が多いアジアや中南米からの発表者が相対的に少なくなり、それが故に事故やテロ対策についての発表やリスクについての観念的抽象的な議論が増えてきている印象を受けた。
今回の会合は、前回2017年メキシコ・カンクンでの第5回会合同様、全世界から防災に多少なりとも関心のある者が多数集まり集客面また防災への多様な参加拡大の促進の上では大成功と言える。2005年の第2回国連防災世界会議以前から、防災のmainstreamingが大きな課題であったが、2015年の第3回会議が国際的に大きな関心を引き付けたがゆえに、多少なりとも防災に関心を持つ多種多様な者が参加し、防災の幅を広げること(mainstreaming)に成功しているが、他方、その裏返しとして会議参加者に占める「防災の初心者」さらには、防災よりもinclusiveness やgenderに主たる関心がある者の比率が高くなり、彼らの多くはこれまでの3次にわたる国連防災世界会議での議論の経緯についても知識が乏しく、相互の討論を通じての深い議論や問題点の洗い出しには至らなかったことが残念である。他方、今回の会議でのパネリストの半数は女性となり、120名の障害者が会議に出席したことは、国連が開催する国際会議としては、大きな成果である。会議準備は直前まで事務方が混乱した模様で、各分科会のspeaker’s listが事前に発表されない(直前までspeakerの変更が多数なされていたとのこと)セッションも多く、また、当該分科会の中心テーマに必ずしも当てはまらない発表者も、外交的配慮から登壇させることとなり、発表の場を失った各国や防災関係機関の代表は5分単位のステートメント発表会場での発言に回ることになったなど、会議運営面では課題が多かったものと思う。

次回開催予定:
次回防災グローバルプラットフォーム会合については、会議終了までに、開催地と開催時期の発表がなされなかった。これまで2年ごと、また次回ホスト国と開催地が必ず発表されていたことからすると、異例の事態となった。年々、より幅広い参加者を集め、防災のmainstreamingには、大きな役割を果たしているこの防災グローバルプラットフォーム会合は、参加人数が多くなったことから運営面や開催方法について転換点を迎えているようである。
その後、令和元年末までに、インドネシアが次回のGlobal Platformをホストする意向を表明したとのことで、令和4年にインドネシア(どこの都市で開催するか、令和4年の何月かは2020年2月段階では未定)で開催されるとのことである。
また、次回のグローバルプラットフォーム会合に至るプロセスとして、世界の各region毎に地域会合を開催することとなっており、2020年6月29日から7月2日にかけてオーストラリアのブリスベーンにおいてアジア太平洋地域会合が開催される予定である。


開会セッション・全体会の様子
写真1:開会セッション・全体会の様子
ハイレベル会合の様子、内閣府中村審議官らが発表 同時開催の第4回世界復興会議締めくくりセッションで井戸兵庫県知事らが発表
写真2:ハイレベル会合の様子、
内閣府中村審議官らが発表
写真3:同時開催の第4回世界復興会議
締めくくりセッションで井戸兵庫県知事らが発表
5月14日「防災と科学技術」準備会合、小池俊雄による日本学術会議提案の発
写真4:5月14日「防災と科学技術」準備会合、小池俊雄による日本学術会議提案の発表
5月16日仙台防災枠組推進セッションでの西川智の発表 5月16日仙台防災枠組推進セッションでの仙台市副市長の発表
写真5:5月16日仙台防災枠組推進セッションでの
西川智の発表
写真6:5月16日仙台防災枠組推進セッションでの
仙台市副市長の発表
各国や各団体によるステートメント発表会場の模様
写真7:各国や各団体によるステートメント発表会場の模様

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