代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   国際宗教学宗教史学会 理事会・国際委員会
    (英文)   International Association for the History of Religions (IAHR), Executive Committee Meeting, International Committee Meeting

  2. 会 期

    平成30年 6月16日~平成30年 6月21日(6日間)

  3. 会議出席者名

    藤原 聖子

  4. 会議開催地

    スイス・ベルン市

  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)

    理事会

    参加国名:デンマーク、オーストラリア、スイス、ドイツ、フィンランド、インド、スウェーデン、リトアニア、米国、日本 参加国数:10か国
    参加者数:10名(うち日本人1名)

    国際委員会

    参加国名:ベルギー、ブラジル、カナダ、エストニア、フィンランド、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、フィリピン、ロシア、スロバキア、南アフリカ、デンマーク、オーストラリア、スイス、ドイツ、フィンランド、インド、スウェーデン、リトアニア、英国、米国、韓国、日本、他
    参加国数:31か国
    参加者数:52名(うち日本人3名)

  6. 会議内容  
    • 主な議題

      ・会長、事務局長代行、副事務局長、会計担当、出版担当による報告
      ・他の委員による報告
      ・予算案の決定
      ・各国・地域の宗教学会の状況、学会新規加入に関する審議
      ・次期世界大会開催者からの進捗状況に関する報告
      ・学会誌の出版社・編集委員による報告
      ・学会アーカイブ計画に関する検討
      ・国際哲学人文学会議(CIPSH)に関する報告と検討
      ・2018年国際委員会の準備に関する検討
      ・名誉会員の推薦
      ・次期役員選挙のための委員会設置

      新しい試みとして、CIPSHの新プロジェクトに対応する形で、2つのIAHRワーキンググループ、「Religion and Public Schools」「World (Global) History of Religions」プロジェクトを立ち上げた。

      IAHRの歴史的な会議資料、事務局資料、各種記録文書・画像をデジタル・アーカイブ化するプロジェクトも、イタリアとドイツの研究者の協力を得て発足することになった。

      日本人の役割としては、報告者が事務局長を代行しているため、これらの会議を準備・主催するとともに、上記の新プロジェクトにおいても中心的に関わることになっている。また、議題のうち、名誉会員を推薦する委員会(3名から構成される)には日本人が1名加わっている。



会議の模様

昨年度の本理事会の報告において、報告者は、国際宗教学宗教史学会(IAHR)において、基礎研究派と応用研究派、前者の多いヨーロッパの研究者と後者の多い途上国の研究者の間の対立が深刻化していることを記し、それを調停し、科学性・反省力を保ちながらも社会的責任を何らかの形で果たすような方向へとIAHRを牽引していくことが、 日本の宗教学者の役割であると記した。基礎研究派と応用研究派の対立は他の多くの学問分野にも見られるが、宗教学においてはこれに独自の力学も絡んでいる。というのも、応用研究化は宗教研究においてはしばしば神学化(言い換えれば、宗教学者の“宗教家”化)を伴うため、19世紀に神学に対抗することによって近代宗教学を確立した国々、特にヨーロッパ諸国ではこれはディシプリンの根本的なアイデンティティ問題に関わってくるためである。

さらにもう一つの対立軸として、IAHRと、その加盟学会の一つである、アメリカ宗教学会(AAR)の力関係がある。IAHRは宗教学の国際学会として最大であり、70年(数え方によっては100余年)の歴史をもつが、5年に1度のその世界大会の規模と、アメリカ宗教学会の年次大会の規模を比べるならば、後者の方が大きく、また後者も近年では世界各国からの参加者を増やしている。このように、伝統的な国際学会よりもアメリカのナショナルな学会の方が規模、活動内容、資金のどれをとっても勝っており、世界の研究者を惹きつけているという傾向は、他の学問分野にも見られると聞いているが、これについても宗教学においては独自のファクターが介在している。アメリカ宗教学会には前述の応用研究派や神学者が多く、したがって、ヨーロッパの宗教学者と顕在的・潜在的な対立関係にあるのだが、IAHRはもともとヨーロッパの宗教学者が中心になって立ち上げたという経緯があるため、この対立は時としてAAR対IAHRという様相を呈するのである。これに関しても日本宗教学会は、IAHRの初期からの主要加盟学会であるとともに、AARとの交流も長いという独特な立ち位置にある。加えて昨年度から事務局長を代行している報告者は米国の大学で博士号を取得しており、両サイドの研究志向や利害が理解できるため、この観点からも調停者・媒介者としての役割を果たすことが期待されている。

以上のような状況を踏まえ、今回の理事会では、これからのIAHRのミッションと戦略について、近いうちに通常よりも時間をかけて総合的・徹底的に議論する必要があるという認識を理事全員で共有することができ、そのための特別な理事会を来年9月にギリシャで開催することになった。現会長・現事務局長代行(報告者)、前・前々事務局長がそれぞれ報告・提案書を提出し、それらについて集中して議論することになっている。IAHR史に残る歴史的な会合になることが予想されている。

次回開催予定 2019年9月




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