代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   太平洋学術協会執行理事会・評議会および第23回太平洋学術会議
    (英文)   PSA Council and Executive Board Meeting and The 23rd Pacific Science Congress

  2. 会 期  平成28年 6月12日から平成28年 6月17日まで(6日間)
  3. 会議出席者名
      理事会・評議会:土屋 誠、外間登美子、谷口 旭
      太平洋学術会議:大越和加、尾定 誠、片山亜優、北里 洋、木島明博、木暮一啓、中嶋 功、藤倉克則、他約22名
  4. 会議開催地  中央研究院(Academia Sinica、台北市、台湾)
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      理事会・評議会:10か国、20名、うち日本人3名
      太平洋学術会議:25か国、約450名、うち日本人30名
  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題

      理事会・評議会:
      6月13, 16, 17日および必要に応じて非公式打合せが行われた。公式会議では例年通りに、前年度の事業と決算の報告、新年度の事業計画と予算の審議、新年度理事の選出のほか、今後の会議運営に関する規則一部改正、終身名誉会員推挙等が行われた。

      太平洋学術会議:
      6月13-17日の日程で、次に示す8大課題につき、それぞれ招待基調講演があり、その後大課題ごとに複数の課題のセッションが設定され、シンポジウム形式の発表と質疑が行われた。各大課題におけるセッション数と発表件数は(カッコ内)、生物多様性と自然資源(12-54)、防災および減災(6-33)、社会の人的多様性と包括的な発展(8-29)、社会のための学術(4-25)、人類の健康(5-20)、地球環境変動と地球の科学(3-20)、食料・水・エネルギー (4-18)、台頭する新技術(7-17)であった。ほかに計158件のポスター発表があった。

    • 会議における審議内容・成果

      理事会・評議会:
      変化し続ける世界の政治経済と地球環境のもとでPSAおよびPSA加盟国が取り組むべき課題、とりわけサンゴ礁、海洋酸性化、水資源、生物多様性、公衆衛生と医学、人間社会の動態と国際化、人的資源とその将来、科学の啓発と教育(特に科学コミュニケーション)と関連するアピールを検討した。また、より頻繁な研究情報交換のため、隔年に開催される太平洋学術会議と中間会議との中間年に研究集会などを開催すること、島嶼国への外来種とそのDNAバーコーディングおよび各国の博物館収蔵物の国際共同利用、Future Earth 計画への積極的な参画について討議した。

      太平洋学術会議:
      上述の8大課題49セッションがプログラム通りに進行した。

    • 会議において日本が果たした役割

      理事会・評議会:
      土屋 誠琉球大学名誉教授がPSA事務局長として会の進行に関わった。日本からは、新理事会メンバーに土屋 誠(財務委員)と中嶋 功(常任理事)を、新しい終身栄誉会員に黒川 清(元PSA会長、元日本学術会議会長)を推薦し、いずれも採択された。
      1961年以来、太平洋学術会議の折に、我が国が主導して、太平洋の海洋生物学の発展に顕著な貢献があった科学者に故畑井新喜司博士の名を冠した畑井新喜司メダル(Shinkishi Hatai Medal) を授与しており、加盟諸国の強い支持を受けている。日本の選考委員会は今年の第23回太平洋学術会議での授賞者に国立台湾海洋大学学長張 清風博士を推薦し、承認を受けた。

      太平洋学術会議:
      大課題「防災および減災」の下に、東北大、東大およびJAMSTECが共同提案した“Science for a Huge Disaster - Lessons from Great East Japan Earthquake and Others in Asian Countries”が、アジア・太平洋地域の他の国からの講演者も迎えて、発表件数の多いシンポジウムとして開催され、関心を呼んだ。今大会初日の基調講演では、ICSU会長G. McBean博士が、Future Earth計画に防災・減災を取り込んで持続的な社会実現に貢献することの重要性を強調したこともあって、我が国が提案したこのシンポジウムは時宜を得たものとなった。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      理事会・評議会:

      太平洋学術会議:
      太平洋学術会議最終日に開催されたPSA総会で、開催地の張 清風台湾海洋大学長に畑井新喜司メダルが授与された。今年から、この顕彰事業の資金は畑井教授が生前在籍していた東北大学が負担し、授賞候補者の選考を日本学術会議が担い、授与式ではPSA会長が受賞者にメダルを授けることとなった。国際学術団体の活動の一環として我が国が国際賞を授与する例は極めてまれであり、この顕彰事業ゆえにPSAにおける日本のプレゼンスは際立っている。今回で受賞者は14名となり、うち日本人は3名、他の11名は外国の科学者である。この授与式は地元の新聞に報道された。



会議の模様

理事会・評議会:
PSAには太平洋地域に存在する多数の島嶼国が加盟しており、国数が多いわりに加盟分担金総額すなわちPSAの予算規模は小さい。そのため、PSAの会議では常に財務の逼迫が話題になる。以前は加盟分担金以外の資金的援助をしていた米国の支援も徐々に少なくなっている。今なお、米国はPSA事務局運営に多大の支援を寄せてはいるものの、調査研究費や若手後継者育成の資金が不足している。毎回増収策について討議されるが、名案はない。
一方、学術の進展は年々早くなり、隔年の理事会・評議会では対応できないことが多くなってきた。そのため、今年からインターネット会議を導入することとし、電子議決に関わる会則の改正を検討することとなった。次回の第24回太平洋学術会議の開催年は2020年と目されており、それはPSA創立100周年に相当するので、記念事業的な会議になる予定である。ただし、その2年前の2018年には第13回太平洋学術中間会議が通常の規模で開催される予定である。いずれも開催地は、今年これからのインターネット会議で審議され、電子投票によって議決されることになった。

太平洋学術会議:
最終日のPSA総会では理事会・評議会から提案されたアピール(PSA Official Resolutions)について討議し、ほぼ原案通りに承認された(全6 ぺーじ)。一部修正および追記が必要なため、総会終了後に改訂案が出され、インターネットによる理事会・評議会で検討し、採決することとなった。
今回の会場となった台湾の中央研究院(Academia Sinica)は多くの研究棟を擁しており、研究発表等を行うための設備が整った会議室や講義室が多数あり、本大会のような大規模な大会の開催場所として実に立派な施設であった。
もう一つ印象深かったことは、前のAcademia Sinca 副会長で今大会のLocal Organizing Committee委員長であったChien-Jen Chen博士が、今大会の直前に発足した台湾の新政権の副総統に任命されており、来賓として列席されたことである。科学者が副総統に任命されたことに、新鮮な驚きがあった。一方、参加者中には大陸中国の科学者はほぼ皆無、台湾と大陸の政権間の軋轢を感じざるを得なかった。もしこの想像が当たっていたとすると、学術の世界に政治が介入したことになり、真に遺憾なことだといわざるをえない。

次回開催予定 平成30年


Shinkishi Hatai Medal授与式で畑井メダルの趣旨と受賞者選考理由を説明する熊野 岳 東北大学教授。右はNancy D. Lewis PSA会長。 受賞の挨拶をする張 清風 国立台湾海洋大学長。左はメダルを授与したLewis PSA会長。


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