代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   湖水と人類の相互作用に関する国際ワークッショプQuickLake H2014
               (英文)    An International workshop on Lakes and Human Interactions
  2. 会 期
      平成26年9月15日から平成26年9月19日まで(5日間)
  3. 会議出席者名

      奥村晃史、鹿島 薫ほか

  4. 会議開催地
      アンカラ・コンヤ(トルコ共和国)
  5. 参加状況  
      参加国数:17カ国 参加者数:70人 日本人参加者:2人
  6. 会議内容  
    • 日程と主な議題
      本会合はINQUA(国際第四紀学連合)の研究運営を担う International Focus Group の一つ、"Humans and Hazards" の研究プロジェクト、"Rapidly Changing Large Lakes And Human Response"が開催した現地研究集会で、地球環境変動に伴う湖水環境の急激な変動とその人類への影響を地形・地質・考古学および湖沼学から検証し、将来の変動予測と対応を検討するものである。
      会議に先立ち、9月14日午後アンカラ大学において、INQUA International Focus Group (IFG) リーダーの S. Leroy (Brunel University), 本会議科学委員会のN. Roberts (Plymouth University), 現地組織委員会の N. Kazanci (Ankara University) と奥村晃史(INQUA 副会長)が準備会合を開き、シンポジウムの運営方針、IFG の今後の運営方針について議論した。9月15日・16日はトルコ地下資源探査開発総局(MTA)附属自然史博物館講堂でシンポジウムを行った。開会式で、N. Kazanci の開会宣言、S. Leroy の IFG 報告に続いて奥村晃史がINQUAの立場から本研究分野の研究推進の必要性と2015年大会に向けた展開についてスピーチを行った。シンポジウムでは21件の口頭発表と20件のポスター発表が行われて活発な議論が交わされた。9月17・18・19日はコンヤ周辺の内陸湖を見学して現場でアンカラで報告された研究成果の検証と討論を行った、17日・18日は現地見学後セルチュク(コンヤ)大学でも討論を継続した。
    • 会議の意義と内容
      気候変動と人間活動による環境変動に対して、湖水環境は非常に敏感に反応し、その結果は地質、地形、湖水周辺の考古遺跡等に記録される。現在進行しているといわれる地球温暖化に伴う環境変動を理解し適切な対応を可能にするために、湖水環境の現在と過去の変動を明らかにして、将来の変化を予測することは第四紀学の緊急の課題の一つである。特に、中近東および周辺の乾燥した地域の内陸湖は、現在の人類の居住と産業立地、現代文明の発生と発展に深く関わりながら、過去数十年~数千年の間大きく変動を繰り返しながら消長してきた。その地形・地質の実証的・定量的な研究は、過去10年余りの間に著しく進展した。特に、青銅器時代からローマ時代にかけての湖水環境変動が精密な年代値に基づいて厳密に復元されるようになった。本集会では、地中海東部とトルコにおける最新の優れた調査成果が多数報告され、活発に議論が行われた。この地域では精密な年代学に基づく考古学的資料の収集と人間活動と環境の復元も、地形・地質資料の精密化と軌を一にして進展しており、文明と環境の関連が、厳密に実証的に語られるようになってきた。本集会では、このような湖水環境変動と人類との関わりの具体的な解明を通じて、現在起こりつつある内陸湖の縮小や消滅、あるいは拡大、人為的な水質変化による人間活動への影響を評価し、変動への対応を可能にすることの重要性があらためて確認された。本会議での主要な発表論文は、国際第四紀学連合(INQUA)の機関誌である Quaternary Interanational の特集号として出版することが計画されている。
    • 日本人の活動
      奥村は INQUA 副会長の立場から、本研究集会の意義と INQUA の活動における重要性を確認し、今後の成果のとりまとめと発信の方針を議論し、それを伝えるメッセージを開会式で伝えた。環境と人類に関わる実証的で最も緊急性の高い研究であることが確認された。
      研究発表では、日本の湖の地震性地殻変動にともなう急激な湖底環境変化を指標とした古地震研究の成果を報告し、トルコ・北アナトリア断層で同様の研究が進めている研究者と議論を行った。
      地中海東部~中近東地域では、日本の考古学者が数多くの地点で発掘を継続しているが、奥村と鹿島薫(九州大学)も長年考古学者と共に遺跡立地に関わる地形・地質の研究を続けてきた。本地域の青銅器時代遺跡と内陸の水文環境は密接に関連しているため、二人ともその研究の蓄積をもとに活発に質問や議論を行ってた。さらに、水質汚染や湖岸の人口改変による環境変動についても共通する問題として議論を行った。
      2015年7月にINQUA第19回大会が名古屋で開催されるが、湖水環境の急激な変化と人類の問題は、地中海東部~中近東地域だけでなく、温帯湿潤地域や亜寒帯地域にも共通するグローバルな問題であることを確認した。そして本研究集会と IFG の成果が名古屋で発信されて研究が一層進展することを要請した。
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