代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   国際微生物学連盟2014会議
               (英文)    IUMS 2014 Congress
  2. 会 期  2014年7月27日~8月1日(6日間)
  3. 会議出席者名  冨田 房男
  4. 会議開催地  モントリオール、カナダ
  5. 参加状況  参加国と地域数:90、参加者数:1,792(初日の集計しかなかったが最終的には1,850名位と想定される。)、
           日本人参加者:186名   
  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題
      2014年7月27日~8月1日(6日間)にわたり、細菌学および応用微生物学部会(Bacteriology & Applied Microbiology Division真菌学部会(Mycology Division)、ウイルス学部会(Virology Division)を全て並行開催された。
      この他、理事会、各部会の総会、全体の総会が開催され、7月26日の理事会で次々回(2020)の開催地をデジュン、韓国と決定され、27日の総会で承認された。 (その他の候補地は、メルボルン、オーストラリア、バルセロナ、スペイン、ミラノ、イタリアだったとの報告があった。)

    • 会議における審議内容・成果
      会議となっているが、3年に一度微生物学者が一同に集まり、基調講演(Keynote)、ポスター発表、ワークショップ、関連する国際委員会(分類命名会議など)を行う、大きな国際学会である。 話題は、極めて広範囲にわたるので興味のある方はIUMS Web Siteを参照して下さい。基礎から応用、農業などの一次産業から医薬品産業やバイオマス資源、エネルギー、環境問題まで広い範囲にかかわる大学会であった。
       その演題数などは、以下に示すようなものであった。会場は、非常に広くゆったりしていた。しかしこれは、4000人の参加を期待していたものであるが実際の参加は、2000名を切る1800人程度あったためでもある。

      1)細菌学および応用微生物学部会
         基調講演(Keynote) 10 講演者20人(内日本人0)、 ワークショップ 46 講演者200人(内日本人4)
      2)真菌学部会
         基調講演(Keynote) 10 講演者20人(内日本人0)、 ワークショップ 32 講演者86人(内日本人1)
      3)ウイルス学部会
         基調講演(Keynote) 10 講演者20人(内日本人1)、 ワークショップ 74 講演者258人(内日本人22)

      この他に、ポスター発表 907:内訳 BAM504(内日本人57)、NEM87(内日本人8)、VIR316(内日本人41)あった。更に今回は、3部会を同時に開催したので効率よくブリッヂングセッションが機能したと思われるが、これは4セッションで講演者は、11名(内日本人0)であった。

      また、商業展示は、40ブースだった。

      また、カナダ微生物学会(CSM)が同時開催された。これは独立に行われた感じがあるが、同じ会場であるので自由に聴講できた。カナダの若手の活動が分かり、またよい場所を提供していたと言える。
      このほかに、Nobel Session, Pasteur Institute のネットワークをまとめてPasteur Informatics Workshop, Pasteur breakout Sessionが5つあったのも特徴的なものであった。

    • 会議において日本が果たした役割
      日本からの参加者は、米国には及ばないものの186名(全体の10%)であり、米国の233名に次ぐ多くの参加者があり、その貢献度は大きなものであった。特にポスター発表には、 細菌学および応用微生物学部会では米国についで2番目の数があり、ウイルス学部会では、同数の1番目であった。

      これらは、わが国がこの分野で指導的役割を果たしていることを示している。また、IUMSに対する拠出金は、米国の微生物学会(ASM)が退会したため一番多いことになる。しかしながら、我が国からは理事会に誰も入らないとの事態になっていることは問題があると考えねばと思っている。しかしアジアの存在はますます大きくなり、このところの開催地は、日本(札幌)、カナダ(モントリオール)、シンガポール、韓国と、アジアに集中してきている。アジアの存在が大きくなっているといえるが、一方ASMが入らずに独自に世界展開を図っていることは明白であり、明らかにIUMSと競争する立場になっている。このせいもあってと考えるが米国からの参加者が少ないことまたkeynoteやworkshopの講演者に選ばれていながらキャンセルがあり、それらは米国の方であり、ポスターも同様に米国からの参加者のキャンセルが目立ったことは大きな問題であると考える。

      (各種委員会、COMCOFs))
      IUMSは、細菌学および応用微生物学部会(BAM、Bacteriology and Microbiology)、真菌学部会(Mycology)、ウイルス学部会(Virology)の3部会から成り立っており、それぞれの部会にCommittees、Commissions、and Federation(CCOMCFs)があるが、我が国にもっとも関係が深いと考えられる応用微生物学部会では、十分に機能しているとは考えられない状況が続いている。これは、部会の長の責任もあるが、我が国からの部会の役員や部会員としての参加がないことにも問題がある。これからは、この部会のみならずそのほかにも我が国からの委員としての積極的が参加なしには、うまく働かない。また、WFCCも我が国に関係が深いものであり、BAMとの関係も深いが、うまくIUMSの中で機能していない。これらが早急に解決できなければIUMSに我が国がとどまる意義が薄くあるいはなくなる恐れがある。


会議の模様

次回の開催は、シンガポールである。またその次も韓国と決定された。これでこのところの4回の会議の3回がアジアで行われることになる。アジアの存在が大きくなったことは喜ばしいが、先に述べたようにASMがIUMSを退会し、IUMSとほとんど同じ活動を行っていること、参加数が札幌の4800を越えるところからその半部もないところまで落ち込み、札幌以外のところで行われた過去の会議と同じになっていること、また運営が必ずしもうまくない。その理由のかなりの部分は我が国関与が少なくなっていることである。ウイルス学部会については、河岡義裕教授が部会長であることもあってか、日本からの貢献が大きいが、それ以外はまるで無視されたような状況ともいえるのではないかともいえそうである。ちなみに数字で示してみると、日本からの参加者は、186/1792=0.10であるが、細菌学および応用微生物学部会ではKeynote Lecture 0, Workshop speaker 4/200=0.02, Poster 57/504=0.11, 真菌学部会では、Keynote Lecture 0, Workshop speaker 1/86=0.01, Poster 8/87=0.09, ウイルス学部会では、Keynote Lecture 1/20 Workshop speaker 22/258=0.09, Poster 41/316=0.13, であり、ウイルス学部会以外は、かなりよくない取り扱いを受けているように思われてならない。

ここで、今後の対応策をよく考える必要がある。つまりIUMSにとどまり日本の影響力をアジアを中心に広げ、ASMにあるいはEU微生物学連盟に対抗できるものを考える必要があると考える時期にきていると思われる。

しかし一方、我が国は日本微生物学連盟にあらゆる分野の微生物学者が集まり、活動を進めていることをアジアそして世界に向けて示すには、IUMS分科会の存在は大きいといえる。




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