代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   国際社会科学評議会総会・世界社会科学フォーラム
               (英文)   General Assembly of ISSC/ World Social Science Forum
  2. 会 期  2013年10月9日~15日(7日間)
  3. 会議出席者名   児玉克哉
  4. 会議開催地  モントリオール(カナダ)
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      50か国 650名 日本人参加者10名
  6. 会議内容
     国際社会科学評議会(ISSC)の総会、そしてそれに続く世界社会科学フォーラムがカナダのモントリオールで2013年10月開催された。ISSCは社会科学に関する国際学術団体である。1952年にユネスコの支援により設立され、フランス・パリのユネスコの本部内に事務局を置いている。2013年現在、社会科学系の国際団体としては最大の規模を持ち、国際地理連合、国際社会学会、国際政治学会、国際経済学協会など、約60の国際学会や国内学術協議会が加盟している。アジア学術協議会も新たにメンバーになり、日本学術会議もメンバーになる方向である。ユネスコとの連携も、設立の経緯などから非常に重要である。ユネスコはアメリカからの加盟金が引き上げられ、財政的な危機にある。その中でISSCは新たな関係を模索している。
     児玉は2004年-2006年に理事を務め、2006年ー2010年まで副会長の職を担った。2010年から2013年までまた理事であった。
     国際社会科学評議会が現在取り組んでいるものの中で重要なものをあげてみる。まずは、総会である。今回は総会と後述の世界社会科学フォーラムが連続して行われた。総会には、団体会員など30団体、50名が集まった。特記すべきことは、日本に事務局を置くアジア学術協議会が正式に連携会員として承認されたことである。ユネスコが財政的に苦しい立場にあることから、国際社会科学評議会への予算もカットされ、厳しい状況にはなっている。それをどのようにして乗り越えるかが総会での大きな議題であった。
    もう一つの大きな事業に世界社会科学フォーラムがある。これは世界の社会科学に関わる研究者を一堂に集め、未来社会を構想しようというものである。ノルウェーのベルゲンで第一回が開催され、モントリオールの会議は第二回となる。今回のモントリオール会議には約650名の社会科学者が集まり、議論を重ねた。今回のテーマは「社会変革とデジタル時代」。まさに時代の重要テーマを扱った会議となった。
     他の重要な事業としては、世界社会科学レポートの発刊があげられる。世界の社会科学の最前線の成果をまとめようというチャレンジングな取り組みである。社会科学の範囲は広いので、分厚い本となる。英語、フランス語などで発刊されている。残念ながら日本語での発刊はない。これだけの専門的なレポートの翻訳は難しそうである。
     今、ISSCが力を入れているものに、フューチャーアースのプロジェクトがある。これは国際科学会議(ICSU)などと協働で展開しようとするものである。フューチャーアースとは、地球的な環境の変化のリスクと可能性に対応する知識を蓄え、持続可能な地球の創造を模索する10年を単位とする研究イニシアティブである。何千もの科学者が関わり、総合的なアプローチをしていくものである。このフューチャーアースにどのように関わるか、も今回の総会、会議の大きなポイントであった。ICSUからも次期会長もずっと参加しており、熱の入った議論が行われた。
    日本の研究者の総会での関わりとしては、まずは、児玉克哉(三重大学副学長)と齋藤安彦(日本大学教授)が理事として参加し、齋藤氏は次期理事としても再選されたことである。またこの総会で、2014年5月27日、28日、29日に福岡県宗像市にてISSCの理事会が開催されることも最終決定した。
    フォーラムでの関わりとしては、以下のことがあげられる。児玉はpanel titled "Information Strategy for the Solution of Global Issues - Connecting Research Community and Business World" を組織し、日本人研究者の柏木展子らと論文発表も行った。また、数名の日本人研究者も論文発表を行った。
     ISSCが果たすべき役割には大きいものがある。環境破壊の問題だけでなく、貧富の差や文化摩擦、平和など地球的な規模で社会科学が貢献すべきテーマはたくさんある。自然科学の技術だけでは解決しない問題がある。しかし、社会科学には予算はあまりつかない状態であり、これからさらに発展するためには一種のブレークスルーが必要である。これからどのような展開があるのか。世界からの研究者が率直な意見交換をしたことが最大の収穫といえる。

会議の模様

 カナダのモントリオールにて世界社会科学フォーラム(World Social Science Forum)が開催された。この世界社会科学フォーラムは、国際社会科学評議会(ISSC)が主催するもので、今回が2回目となる。前回はノルウェーのベルゲンで開催された。そのベルゲンでのフォーラムには800名を超す参加者がありました。今回のモントリオールでのフォーラムには、約650名の研究者が集った。日本からの参加者は少なく、前回も今回も10名に満たないところであった。日本の社会科学の国際的な存在感は低く、発表者も少ないのが問題である。日本国内での社会科学の学会の会員数は相当に大きい。1万名を超す学会もある。しかし、国際学会となるとさっぱりといえる。安倍政権も国際化を重要課題としてあげるが、社会科学の研究の分野ではまだまだ内向きといえる。日本学術会議もまだ国際社会科学評議会の会員になっていないが、前向きな議論もあり、新たな段階に移りつつあると国際社会科学評議会の理事会は受け取っている。
 今回のフォーラムのテーマは、'Social Transformations and the Digital Age' (社会変革とデジタル時代)である。確かにデジタル社会への移行は、社会システムの大きな変革をもたらしている。政治も、経済も、産業も大きく変わっています。エジプトのクーデターなども情報革命が大きな影響を与えたと言う。社会科学にとって、情報化社会、コンピュータ社会は非常に大きな要素である。
 児玉の報告は、2日目に行った。「地球的課題の解決のための情報戦略~学会とビジネス社会との連携を」をテーマの分科会での発表であった。私も関わっているWebメディアであるUBrainTVの展開について、そのUBrainTVのディレクターの柏木展子氏とともに発表をした。こうした取り組みを多くの人に知ってもらい、多くの研究者と新たなネットワークを作っていきたい。
 今後の開催としては、2015年に南アフリカ・ダーバンで世界社会科学フォーラムが予定されている。総会は2016年になる予定である。
 また次回理事会は、日本の福岡県宗像市にて2014年5月27日、28日、29日に開催される予定である。

このページのトップへ

日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan