代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   第24回国際科学史技術史医学史会議
               (英文)   24thInternational Congress of History of Science, Technology and Medicine
  2. 会 期  2013年7月22日~28日(7日間)
  3. 会議出席者名
     木本忠昭、矢島道子、橋本毅彦、溝口元、黒田光太郎、梶雅範
     学術研究部会出席者:62名氏名省略
  4. 会議開催地  Manchester大学、Manchester 市、英国
  5. 参加状況
      47カ国、参加者数 1758名(うち日本から62名)
  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題:

      会議は、総会2日間、学術集会7日間、および随時の学術見学会・社会プログラムによって構成され、総会は、事務局長活動報告、新役員選挙、財政報告(含監査)、次回開催地選挙、新commission役員承認、新commission設置、新加盟国、マンチェスター宣言の検討が議題となった。
      学術集会は、論文提出が約1400篇で、設置セッションは並行して23会場で行われた。学術集会の全体テーマは、Knowledge at Workであった。多数の科学史技術史諸団体や、加盟国の研究者が設定したシンポジウム以外に、通常の時代別、分野別的なセッションも設定された。
      社会プログラムでは、産業革命期に栄えたマンチェスターの科学や技術を見学する多数の見学会や、コンピュータの初期先駆者Alan Turingをテーマにしたオペラや、喜劇あるいは音楽会等多彩な行事が用意され、これら学術見学会など約100のプログラムは、産業革命の一中心地であったManchesterと科学・技術の発展の背景を理解するに有益な役割を果たしていた。
      若手研究者賞の表彰式や、Dingler賞、Koyre賞関連講演等も行われ、全体的に会期いっぱいに学術討論や諸行事が詰め込まれた盛りだくさんの会議であった。

    • 会議における審議内容・成果

      総会の規約改正は、従来の名称IUHPS(International Union of History and Philosophy of Science)をIUHPST(International Union of History and Philosophy of Science and Technology)とすることとなった。役員は選挙の結果、会長、副会長以下改選されたが、日本からは橋本毅彦氏をMembersの一員に推薦し、当選した。DHSTのCouncil以外に、DHST組織内のcommissionやcommitteeでも、役員選出が行われ、梶雅範氏が、History of Modern Chemistry,伊藤憲二氏がHistory of Physicsのそれぞれ副部会長に、伊藤憲二氏がInternational Association of Science and Cultural Diversityの部会長に選出された。
      Commission としては、新しくScience and LiteratureとHistory and Philosophy of Computing が設置され、History of Modern Physics Commission が History of Physics Commission と名称変更された。

    • 会議において日本が果たした役割

      総会:一般的に議事運営上での議論深化以外に組織運営上新役員を日本から選出できた。
      学術集会:上記の様に各研究テーマでの学術報告での個別課題的貢献を除いて特段に日本自体が研究上、問題になったことはない。
             (個別的に貢献を列記することは論文や議論を解説することになり多数につき不能。)

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      科学史技術史医学史の意義をアピールする“Manchester Manifesto”が総会で検討された。字句修正を経て9月以降に発表される予定である。

会議の模様

学術集会:
前述の様に約1400本の論文は、411のセッションで、並行する23の会場で報告・議論された。論文は、一般報告論文以外に、全体のテーマである'Knowledge at work'のシンポをはじめ、諸コミッション、委員会あるいは科学史、技術史関係団体の組織する多数のシンポジウムが、開催された。
特定課題に関するシンポジウムの外に、今回は幾つかの特別セッションも設けられた。その一つは、ICOHTEC(国際技術史委員会)によるもので「ICOHTEC40周年記念」の3つのシンポ、もう一つは、特殊現代的問題に関わって「社会メデイアと公的関与、科学史技術史医学史に関する討論」、「科学史、技術史、医学史雑誌の将来」、「アフリカにおける情報通信技術の歴史と現代及び知識の創出:カメルーンにおけるケーススタデイ」、さらに明治日本の工部省お雇い外国人John Milneの映画等もトピックス的なセッションとして組まれていた。
この種の学術集会の常として、問題によっては国際的な討論を行うことによって、研究者の国別地域別の問題意識の違いや科学や技術と社会の関係の捉え方についての違いなどが鮮明になり、科学史技術史研究に何を求めるかが浮き彫りになったり、あるいは問題の取り上げ方の深化が行われたことは、重要な成果であろう。あるいは、複数の国による研究者の議論から、テーマがより総合的に深化されて研究されていくことも多く見られた。例えば、戦後日本での原子力研究でも西脇がイギリスに調査に行った際BBCでインタビューされたことはわかっていたが、セッション会場に当時放送局に関与した人物がいてより詳しい歴史的事情も明らかになったことなど、この論文報告が無ければBBC関係者の体験事情は歴史に現れなかったかもしれない。さらには、明治日本の鉱山冶金研究者においては、ドイツのBergakademie Freibergに留学することが、東京帝国大学等の教職への一つのキャリアパスになっていたが、当時中国でも鉱山関係者はドイツやフランスに留学していた。日中の事情を綜合することによって当時の日本や中国、アジアでの西洋技術の移植過程がより深化されて全体的に把握されるようになったことなども、まさに国際的学術集会の成果であったといえる。
論文報告の中、日本からの報告は約50本。今回、シンポジウムは、日本人関係の組織によるものは前回に比べ激減し、計量史関係一つにとどまった。これは、会期が、日本の大学授業期間(しかも学期末)にかかるため、共同組織することが難しくなったということもあると見られる。
なお、イギリス科学史学会が2年ごとに授賞するDingler賞のDavid Wrightの「Downs: History of a disability」も現代の問題と科学を問うsessionであった。
国際科学史協会による2年ごとのKoyre賞の受賞講演、それにイギリス科学史学会によるSinger賞、本国際会議DHSTによる5人の「若手研究者賞」(及び同准賞5人)の表彰式や記念講演も示唆あふれる問題提起が含まれていた。
若手研究者賞では、アメリカ人の日本の時計史に関わる論文が授賞しているが、外国人による日本研究が、科学史技術史分野にも広がってきたことを一面喜ばしいことであると同時に、他面では日本人研究者の一層の研究が国際的にも望まれていることを意味している。


次回開催予定平成 29年7月23日から平成29年7月29日まで 7日間
             開催地 Brazil国  Rio de Janeiro 市

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