会長室(25期)

梶田 隆章 会長

日本学術会議会長 梶田隆章

第25期会長就任のご挨拶

この度、第25期の日本学術会議会長に選出された梶田隆章です。これからの3年間よろしくお願いいたします。

日本学術会議は、昭和24年(1949年)1月、科学が文化国家の基礎であるという確信のもとに、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、内閣総理大臣の所轄のもと、政府から独立して職務を行う特別の機関として設立されました。この設立の趣旨に基づき、日本学術会議は我が国の人文・社会科学(第1部)、生命科学(第2部)、理学・工学(第3部)の全分野の科学者コミュニティを内外に代表する機関として活動をしてきました。その役割は大きく分けて、政府や社会に対する政策提言、国際的な学術活動、科学者間のネットワークの構築、科学の役割についての世論啓発です。これらの活動を210人(定員)の会員と約2000名の連携会員が担っています。

このように、我が国の学術にとって極めて重要な学術会議ですが、第25期は、推薦した6名の会員候補者が任命されないという前代未聞の事態のなかで始まりました。こうした事態は大変遺憾であり、日本学術会議としては、10月2日の総会で決議した内閣総理大臣宛の要望書の通り、任命されなかった理由を明らかにしていただき、また6名を速やかに任命していただくよう引き続き求めてまいります。実際、6名が任命されていないことで、第1部は定員の1割近くを欠いた状態になっており、第1部の今後の活動に影響がでることが懸念されます。こうした事態が速やかに是正されるよう求めてまいります。

日本学術会議が設立されて70年が経過しました。その間科学技術は驚異的に発展し、学術における世界との繋がりも格段に強くなりました。そして科学、技術の成果が我々の日々の生活に広く反映されるようになってきたことにより、それらを社会や広く国民により良い形で普及させていく際には人文・社会科学的な検討も非常に重要になってきています。目下の新型コロナウイルス感染症は、科学、技術と国、そして国民が広く協力して対応することを求めています。その一方では、温暖化をはじめとする地球環境の悪化、ひずみが非常に大きくなった経済社会の現状、そして民族間や宗教的な対立、近年新たな形で大きくなってきた国家間の対立など、多くの新たな難題も顕在化してきました。このような課題の解決に向け、学術が果たす役割が極めて大切であることは自明と思います。とりわけ、現在の複雑化した問題の解決には、あらゆる学問分野の英知を結集して課題解決の道を探ることが大切です。

日本学術会議は、あらゆる学術分野の専門家が集まる組織として、これらの問題の解決の道筋を示したり、あるいは未だ顕在化していない問題を社会に示して警鐘を鳴らしたりすることなどによって、学術を通してより良い日本と世界の実現のために貢献していきます。そしてそのためには今まで以上に社会や政府等への発信、そして学術会議メンバーと社会や政府等との対話が重要だと痛感しています。そして学術会議の検討課題は日本国内のものに限らないことも明らかであり、世界各国のアカデミーなどとの協調や国際的な発信を更に強化する必要があると感じています。このようなことを念頭に置きながら、今期の活動を行ってまいります。そして日本学術会議が学術を通して社会や政府により大きく貢献できる存在になるよう不断の努力をしてまいります。

2020年12月 第25期日本学術会議会長 梶田隆章

プロフィール、メッセージなど