代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)データ委員会総会および国際データウィーク
    (英文)CODATA General Assembly and International Data Week
  2. 会 期
    令和5年10月23日から令和5年10月28日まで(6日間)
    うち、筆者(大武美保子)の現地参加期間は
    令和5年10月26日から令和5年10月28日まで(3日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:

       国際データウィークは、データ委員会(CODATA)と、世界データシステム(WDS)、研究データ連合(RDA)が共催で実施する、科学技術データに関する国際的な議論をする会議である。CODATAとWDS、RDAおよびそれに関連する国際的な取り組みの関係者が研究発表を行う。会費を支払えば、国や所属学術団体がCODATAやWDSに加入していなくても参加することができる。筆者は国際データウィークにオンライン、および対面で参加し、発表を行った。
       データ委員会(CODATA)総会は、国際データウィークの直後に連続して開催され、筆者は対面で参加した。加盟国代表者と、加盟学術団体代表者およびオブザーバが参加し、会長(President)、副会長(Vice President)、理事(Executive Committee)を、代表者の中から選挙で選出した。また、タスクグループの選定、戦略計画や会計の承認を行った。 この他、委員会に関連するプロジェクトの活動報告や、科学技術データの在り方全般に関する議論をした。
      <参考資料>
      CODATA総会2023
      https://codata.org/events/general-assembly/general-assembly-2023/
      国際データウィーク2023
      https://internationaldataweek.org/idw2023/

    2. 会議の開催周期:

      CODATA総会および国際データウィークは、2年に1回開催される。
      もともと偶数年に開催されていたが、COVID-19の感染拡大により開催年が1年ずれたため、現在は奇数年に開催される。

    3. 会議開催地、会議場:オーストリア共和国・ザルツブルク・ザルツブルク会議場
    4. 会議開催母体機関:

      データ委員会(CODATA)総会:データ委員会(CODATA)
      国際データウィーク:データ委員会(CODATA)、世界データシステム(WDS)、研究データ連合(RDA)

    5. 会議開催主催機関及びその性格:

      母体機関と主催機関は同一である。
      CODATAは、科学技術データの共有や社会課題解決に向けた利活用について、加盟国の代表や加盟学術団体の代表が、それぞれの立場も踏まえながら意見交換をし、持続可能な社会の実現に向けた、意思決定や合意形成を目指すものである。加盟国や加盟学術団体が分担金を支払う形で運営されている。
      http://www.codata.org/
      WDSは、研究データベースやデータリポジトリを運用する機関が加盟し、データベースやデータリポジトリの運営上の課題や相互連携等について議論するものである。加盟機関の中から事務局を運営する機関を選出し、一定期間毎に、持ち回りで運営する。事務局を運営する機関が運営費を支出する。
      https://www.worlddatasystem.org/
      RDAは、ヨーロッパ、米国、オーストラリアの資金提供機関により設立されたものである。
      会員は、個人と営利および非営利組織で構成され、データ交換に関する障壁を下げるための、政策、 実践、技術、基盤の実装について議論するものである。
      https://rd-alliance.org/

    6. 参加状況:

      国際データウィークの参加者数は、会場に676名、オンラインに191名、発表者は55名であった。発表者として登録されている参加者のうち、日本人は筆者のみであった。
      CODATA総会の投票権を有する国および学術団体数は54か国・地域および団体であり、そのうち49の代表者が、タスクグループおよび役員の選挙において投票した。日本人参加者の氏名・職名・派遣機関は以下の通りである。
      大武美保子・理化学研究所チームリーダー・日本学術会議(日本代表として)
      芦野俊宏・東洋大学教授(理事として)

    7. 次回会議予定:

      次回は、令和7年10月13日から10月16日まで、オーストラリアのブリスベンにて実施される予定。
      準備組織は、上記の通り、国際データウィークは、CODATAと世界データシステム、研究データ連合、CODATA総会は、CODATAである。
      国際データウィークの主なテーマは、イノベーションとよりよい世界へと駆動する信頼できる研究データ(Trusted research data driving innovation and a better world)である。
      <参考資料>
      国際データウィーク カテゴリー別参加者
      https://idw2023.events.whova.com/Attendees/Categoriesbr/> 国際データウィーク2025
      https://internationaldataweek.org/idw-2025/

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

      CODATA総会:
      日程 令和5年10月27日から28日
      主な議題 CODATAの運営
      国際データウィーク:
      日程 令和5年10月23日から26日
      主な議題 データ委員会(CODATA)、国際データシステム(WDS)、研究データ連携(RDA)のそれぞれに関連するパラレルセッションと、合同のプレナリセッションとで構成され、パラレルセッションでは、それぞれの組織における研究成果、実施状況、課題について、また、合同のプレナリセッションでは、共通の課題を全体で共有、議論した。

    2. 提出論文(日本人、日本人以外):

      国際データウィーク:
      筆者は、スイス・チューリッヒ大学・マイク マーチン教授との共著で、以下の論文を提出し、オンラインで発表を行った。これは、総会で提案するタスクグループの前身となる、Creative Living and Aging through Cross-disciplinary Utilization of Dataのワーキンググループの活動の一環と位置付けられる。
      Leverage the potential of data collection and utilization to foster cognitively healthy aging
      CODATA総会:
      この会議では論文発表の機会は設けられなかったが、筆者は、タスクグループData driven social change towards society promoting cognitively healthy ageingを提案したため、事前に提案書を提出し、会議当日は、提案に関する発表を行った。

    3. 学術的内容に関する事項:

      CODATAの主要な取り組みとして、以下の活動報告があった。
       WorldFAIR and WorldFAIR+
       FAIR Connect
       Global Open Science Cloud Initiative
       International Data Policy Committee
       Data Schools
       CODATA Connect
      FAIRデータ原則とは、次のように定義される。これを実現しようとするのが、WorldFAIR and WorldFAIR+、FAIR Connectなどの取り組みである。
      The FAIR data principles are international guidelines for research data management that aim to optimise the reuse of research data. This is achieved by making research data Findable, Accessible, Interoperable and Reusable.
      Global Open Science Cloud Initiativeは、Open ScienceとFAIRデータ原則を実現する各国の取り組みの間の連携を図ることを目指すものである。
      International Data Policy Committeeは、Open ScienceとFAIRデータ原則を実現するための効果的で適切な政策提言を推進するものである。
      CODATA Connectは、CODATAの若手を支援する若手の活動で、Data Schoolsの関係者や参加者をネットワークすることを目指すものである。
      <参考資料>
      WorldFAIR
      https://codata.org/initiatives/decadal-programme2/worldfair/
      FAIR Connect
      https://fairconnect.pro/
      Global Open Science Cloud Initiative
      https://codata.org/initiatives/decadal-programme2/global-open-science-cloud/
      International Data Policy Committee
      https://codata.org/initiatives/data-policy/international-data-policy-committee/
      CODATA-RDA Schools of Research Data Science
      https://codata.org/initiatives/data-skills/research-data-science-summer-schools/
      CODATA Connect
      https://codata.org/initiatives/data-skills/codata-connect/

    4. その他の特記事項:

      特記事項として、以下の2点の成果が挙げられる。
      2018年から2023年の任期で理事を務めた芦野俊宏・東洋大学教授が、2023年から2025年の任期の理事に再選された。
      筆者である大武美保子・理化学研究所チームリーダーがスイス・チューリッヒ大学・マイク・マーチン教授と共に提案した、2023年から2025年までのタスクグループData driven social change towards society promoting cognitively healthy ageingが、投票により採択された。

所見

国際データウィークについては、若手研究者の参画を意識するようになったためか、最終日のプレナリセッションでは、若手研究者が企画し、若手研究者が登壇するパネルディスカッションが開催されるなど、次世代育成を意識した運営が行われた。また、データについては、AI技術の急速な進展と、最近特に発展している、深層学習や生成AIの構築にデータを必要とすることから、そのことに対応したデータ作成、共有、利活用の在り方に関する議論が盛んに行われた。
CODATA総会について、特記事項として、CODATAが始まって以来、初の女性会長が誕生し、副会長2名のうち1名が女性、理事10名中4名が女性、役員合計13名中6名が女性となるなど、従来よりも女性の割合が高くなった。また、加盟学術団体の代表として派遣されている、その学術団体の若手の会の代表を務める学生1名が理事に選出された。この他、立候補者がいたにもかかわらず、中国およびインドの代表者が、会長、副会長、理事のいずれの役員にも選出されなかった。また、南半球の国のうち、アフリカからは南アフリカ共和国とボツワナが選出されたが、中南米からは選出されなかった。過去には、中国やインドの代表者が会長を務めたことがあり、今回の結果は、昨今の国際的な状況を反映していると考えられる。一方、アジア太平洋地域からは、日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランドの代表者が役員に選出された。

総会が開催された、ザルツブルク会議場
会長挨拶
意見交換で発言する筆者
タスクグループの提案を発表する筆者
参加者との夕食
オンラインによる投票の様子
副会長に選出されたデイジーと筆者
会長に選出されたマーシーの挨拶