代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)海洋研究科学委員会2023年次総会
    (英文)SCOR 2023 Annual Meeting (SCOR, Scientific Committee on Oceanic Research)
  2. 会 期
    令和5年10月16日から令和5年10月19日まで(4日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:総会
    2. 会議の開催周期:定期(年に1回)
    3. 会議開催地、会議場:エクアドル共和国グアヤキル市、Wyndham Guayaquil Puerto Santa Anaホテル
    4. 会議開催母体機関:International Science Council
    5. 会議開催主催機関及びその性格:Scientific Committee on Ocean Research 国際的な非政府・非営利団体
    6. 参加状況:

      現地:16か国から21名のSCOR関係者が参加(チリ、中国、コロンビア、エクアドル、フィンランド、フランス、アイルランド、イタリア、日本、マレーシア、オランダ、韓国、スイス、トリニダード・トバゴ、英国、米国)。また、エクアドルからオブザーバー5名が参加。

      オンライン(Zoom):20か国から72名が参加(アルゼンチン、バングラデシュ、ベルギー、カナダ、チリ、中国、エクアドル、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ケニア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、英国、米国)

      参加国数27か国
      参加者数 98名(うち日本人5名)

      主な日本人参加者
      張 勁(筆者、富山大学学術研究部理学系(現地参加))、原田 尚美(東京大学大気海洋研究所(現地参加))、日比谷 紀之(東京大学大気海洋研究所(オンライン参加))

    7. 次回会議予定:

      会期:令和6年10月15日から令和6年10月18日まで4日間
      開催地:青島
      準備組織(主催機関):SCOR事務局(米国(University of Delaware)、代表者Sinjae Yoo (SCOR会長))

      主なテーマ:2024年度採択の新規ワーキングググループの審査、既存のワーキンググループの活動報告、既存の国際プログラム(IIOE-II, GEOTRACES, SOLAS など)の活動報告、人材育成などの各種活動報告、密接に関連する科学組織団体からの活動報告

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

      令和5年10月16日 プレイベント
      INOCAR (Instituto Oceanográfico y Antártico de la Armada)、エクアドル海軍海洋学南極研究所(Mairne Sciences in Ecuador)とSCORの共催シンポジウム
      https://scor-int.org/wp-content/uploads/2023/09/INOCAR-SCOR-Symposium-Oct-2023.pdf
      INOCAR側からEl Niñoやその影響、ガラパゴス諸島のマングローブ、海洋酸性化、津波関連の研究報告、SCOR側からアーリーキャリア(若手育成)と能力開発関連の活動報告

      令和5年10月17日
      セッション1:開会の挨拶、SCOR President、SCOR Executive Director等による報告、人材育成と能力開発関連の活動報告、SCORの2023年ワーキンググループの審査、関連団体の活動報告

      令和5年10月18日
      セッション2:既存の国際プロジェクト、及びワーキンググループの活動報告

      令和5年10月19日
      セッション3:パートナー組織の活動報告
      午後:エクアドル海軍海洋学南極研究所(INOCAR)視察

    2. 提出論文(日本人、日本人以外):

      各国のナショナルコミッティから2023年新規ワーキンググループプロポーザルの審査結果及びプロポーザル改訂コメントの提出があった。

    3. 学術的内容に関する事項:

      既存のワーキンググループの活動内容そのものが、当該分野である海洋学の国際的動向を探る上で重要な情報ソースとなっており、 基礎的な学術成果を水産業等の社会経済活動にどう貢献するかなど、SDGsを大きく意識した内容が目立ってきている。 また、SDG14(海の命を守ろう)を加速して進展させるために、 国連の旗振りの元で2021年からスタートしたUN Decade of Ocean (国連海洋科学の10年)に、SCORとしてどう貢献していくかの検討も今後の課題である。

    4. その他の特記事項:

      2023年の新規ワーキンググループ申請の審査決定に際し、 日本からの審査結果をより反映すべく働きかけた。 その結果、採択された3件のうち上位2件では、 日本学術会議SCOR分科会で評価点上位であった 4D-BGC(Coordinating the Development of Gridded Four-Dimensional Data Products from Biogeochemical-Argo Observations)と NEMOO(NEw physiological Metrics for Oceanography from ‘Omics)が採択された。 4D-BGCでは藤木徹一氏(海洋研究開発機構)がフルメンバーとして、またNEMOOには鈴木光次氏(北海道大学)がフルメンバー、 及び横川太一氏(海洋研究開発機構)がアソシエイトメンバーとなった。

所見

 会議があったエクアドル共和国最大都市グアヤキルは赤道直下で、会期中の気温が20~24℃と高かったが、 10月に入っても気温20℃越えの暑い日が続く平均気温観測史上最高の日本からの訪問ということで違和感がなかった。 今大会は昨年の釜山(韓国)に続きコロナ禍終焉後で対面とオンラインとの同時開催であり、出席者全員の熱気が高く、 より議論が深まったように感じられた。また、参加者は27か国から98名で、2019年に富山で開催された総会(完全対面式)に比べて参加者数は倍近くに上った。 ただ、エクアドルは日本との時差が14時間もあって、日本を含む東アジアからのオンライン出席者には昼夜逆転したアジェンダーとなり厳しい対応となった。
 プレイベントのエクアドル海軍海洋学南極研究所(INOCAR)とSCORの共催シンポジウムの研究報告では、El Niñoやその影響、 ガラパゴス諸島のマングローブ、海洋酸性化及び津波関連のものが目立っており、国情が感じられた。 最終日にINOCARを視察したが、その簡素な設備に驚き、発展途上国への能力開発というSCORの活動目的からみても今回のエクアドルでの総会開催は意義が大きかった。 ただ残念なことに、現地の治安が安定しておらず、自由な街歩きはかなわず、平和の大切さを再認識させられる旅であった。
 今後の世界における海洋研究と国際協力の向上のために、国際的な非政府非営利学術組織であるSCORの活動に期待したい。

 2024年の総会は、SCOR中国の設立40周年記念に合わせて中国の青島で開催される。

2023年SCOR総会出席者(グアヤス川沿い)
2023年SCOR総会の模様
エクアドル海軍海洋学南極研究所(INOCAR)視察