代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)国際宗教学宗教史学会 臨時理事会
    (英文)International Association for the History of Religions (IAHR), Extraordinary Executive Committee meeting
  2. 会 期
    令和5年9月3日~9月4日(2日間)
  3. 会議概要
    1. 会議開催地:リトアニア国 ヴィリニュス
    2. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関):

      参加国数7か国 参加者数7名(うち日本人1名・藤原聖子(筆者))

    3. 次回会議予定(会期、開催地、準備組織、主なテーマ):2023年12月
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程及び会議の主な議題:

      国際宗教学宗教史学会 臨時理事会  9月3~4日
      ヨーロッパ宗教学会(European Association for the Study of Religions)年次大会 9月4日~9月8日
      主な議題
      ①2025年世界大会の開催準備について
      ②学会誌の企画運営について

    2. 会議における審議内容・成果:

      ①2025年世界大会の開催準備について
      国際宗教学宗教史学会は5年に一度世界大会を開催している。次回は2025年に第23回大会として、ポーランド・クラクフ市で開催される。そこでヤギェウォ大学の主催者を招き、準備状況について聴取した。2025年は国際宗教学宗教史学会設立75年、ヨーロッパ宗教学会設立25年にあたるため、会期中に記念シンポジウム・イベントを追加することになり、それについて、ヨーロッパ宗教学会の事務局長にも同席して検討を行った。他に、ファンド・レイジングについて意見交換を行った。

      ②学会誌の企画運営について
      国際宗教学宗教史学会のフラッグシップ・ジャーナルであるNumenの出版状況について、Brill出版社の編集者と編集委員長、書評委員長を招き、聴取と意見交換を行った。出版はこの5年間、毎号が予定時期よりも早く刊行されるほどスムーズに進んでいること、ダウンロード数、被引用数等も伸びていることが報告された。多く参照されている論文の傾向を分析した他、同分野の他誌の状況と比較したデータについても議論を行った。複数の雑誌間の引用・被引用関係を示した図が特に興味深かった。
      本誌は現状では無料オープンアクセス誌ではないため、その可能性について出版社側と議論を行った。

      ③その他、12月に東京で開催する国際委員会(加盟学会の代表者から構成される、50~100名規模の会議)の準備状況について、実行委員長である報告者から説明した。
      この臨時理事会に先立ち、2025年世界大会の開催地であるポーランド・クラクフ市において現地視察を行った。ヤギェウォ大学の会場は、規模、設備ともに申し分のない施設であることがわかった。他に、クラクフ市が、歴史・宗教史的にも重要な都市であり、本学会の世界大会の開催地として非常に適切であることを確認した。

    3. その他の特記事項:

      筆者は本学会の事務局長として理事会を招集し、司会を務めるとともに、ヨーロッパ外からの視点を示すことで多角的な議論が行われるよう努めた。

所見

ヨーロッパ宗教学会の大会テーマは「宗教とテクノロジー」であり、今年に入ってからの生成系AIの話題に直結する、時宜を得たものであった。初日の基調講演は、機械・テクノロジーの発展を人類史的規模でとらえ、現状を考えさせる内容であった。講演は詩の朗読調で行われ、アーティストとのコラボレーションにより印象的な映像と効果音とともに進められた。2日目の基調講演は、開催地が北欧ということで、バイキングの歴史を、デジタル・ヒューマニティーズの方法を用い、新資料を分析することにより新たに検証するものだった。「バイキング」という存在は、現在の歴史学では実体のない概念として扱われている(現代人のイメージの中にある「バイキング」は実在しなかったということ)。では、その言葉が指示していた時代・地域の人々の生活、信仰は実際にはどうだったのかが、従来の人文学の手法に新たなテクノロジーを加えることで明らかになりつつある。