代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)第31回国際地図学会議、第19回国際地図学協会総会
    (英文)The 31th International Cartographic Conference, The 19th General Assembly of the International Cartographic Association
  2. 会 期
    2023年8月13日から2023年8月18日まで(6日間;総会は8月13日と18日)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:対面
    2. 会議の開催周期:2年に1回、総会は4年に1回
    3. 会議開催地:南アフリカ共和国・ケープタウン
      会議場:ケープタウン国際会議場
    4. 会議開催母体機関:国際地図学協会(ICA)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:常設の国際学術団体
    6. 参加状況

      参加国名・数:南アフリカ共和国、アメリカ合衆国、中国など87か国
      参加者数:845人
      日本人参加者の氏名・職名・派遣機関:若林芳樹(東京都立大学・教授、筆者)ほか12人

    7. 次回会議予定(会期、開催地、準備組織、主なテーマ):

      2025年7月28日~8月1日、カナダ・バンクーバー、カナダ地理情報学会、テーマは「Volunteering to map our future」

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

       第31回国際地図学会議は、2023年8月13日~18日の日程でケープタウン国際会議場を会場にして開催され、大会初日の8月13日と最終日の8月18日に第19回国際地図学協会総会が大会会場に隣接するスカイホテルで開催された。
       大会の共通テーマは「持続可能な発展のためのスマート地図学」であり、開催地のアフリカ諸国が目指す持続可能な発展をAI(人工知能)やビッグデータなどの新技術を活用した地図によって支援するという意図が込められていた。
       基調講演は5件で、「気候変動のための地図」「地図学の妥当性再考」「国連の統合空間情報フレームワークの活動」「レジリエントな未来のための知の交換としての地図作成の力」「持続可能な発展を駆動する文化経済地理学を目指して」と題した発表が日替わりで開催された。
       ほぼ28の委員会のテーマに対応した合計113のパラレルセッションと4つのポスターセッションが開かれた。新たなテーマとして倫理の問題を取り上げたセッション、国連のSDGs(持続可能な開発目標)やUN-GGIM(世界地理空間情報管理に関する国連専門家委員会)など国連と連携したセッションもみられた。

    2. 提出論文(日本人、日本人以外):

       発表は要旨またはフルペーパーに基づいて審査が行われたが、査読委員会には日本から若林芳樹ICA小委員会委員が加わった。日本からは本大会のパラレルセッションで伊藤香織、若林芳樹、森田喬、矢野桂司、大西宏治、佐々木一織、吉田桃子が研究発表を行った。
       大会前日の8月12日には、ユビキタスマッピング委員会と地図とインターネット委員会の共同ワークショップを開催し、日本からも3件の発表を行った。

    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等):

       パラレルセッションのテーマには明示的に表れていないが、大会前ワークショップを含めてスマートシティやAIに関連した発表が増えている。前々回からの大会で各種センサーやソーシャルメディアなどから得たビッグデータや機械学習によって解析するAIの活用はすでに始まっていたが、今後さらに重要性が高まるであろう。一方でSDGsや倫理の問題に関連した発表も増えており、地図の社会的役割への関心も高まることが予想される。

    4. その他の特記事項:

       当初はハイブリッド開催の予定だったが、南アフリカ共和国の電力事情を考慮した対面による開催に変更された。そのため、日本からの参加は12名にとどまった。しかし、全体では800人を超える参加があり、フィレンツェで開催された前回のICC2012を上回る参加がみられた。コロナ禍から明けつつあるとはいえ、ウクライナへのロシア侵攻など厳しい国際情勢の中で、不利な地の理を克服して成功裏に大会が開催できたのは、主催者の多大な尽力もさることながら、UN-GGIMのアフリカ部会が同時開催されたことも大きかったと思われる。