代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)第28回国際測地学地球物理学連合総会(IUGGベルリン2023)及びIUGGの評議会
    (英文)The 28th General Assembly of the International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG Berlin 2023)&IUGG Council meetings
  2. 会 期
    2023年7月11日から2023年7月20日まで(10日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:開会式、閉会式、執行委員会、評議会、総会、科学セッション、受賞式、講演会、受賞記念講演をすべて対面で実施
    2. 会議の開催周期:4年に1度
    3. 会議開催地、会議場:ドイツ連邦共和国・ベルリン市 City Cube Berlin
    4. 会議開催母体機関:国際測地学・地球物理学連合(International Union of Geodesy and Geophysics)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:

      主催機関:国際測地学・地球物理学連合(International Union of Geodesy and Geophysics)
      主催機関の性格:常設の国際学術団体

    6. 参加状況

      参加国名・数:
      ドイツ958人、中国662人、米国454人、日本279人、イタリア272人、フランス、英国他(全部で105か国)
      参加者数:5020人
      日本人参加者の氏名・職名・派遣機関:
       東久美子(筆者)・国立極地研究所教授・日本学術会議連携会員
       佐竹健治・東京大学教授・東京大学及び国際測地学・地球物理学連合

    7. 次回会議予定(会期、開催地、準備組織、主なテーマ):

      会期:2027年7月12日~22日(予定)
      開催地:韓国インチョン(仁川)市
      準備組織:韓国IUGG国内委員会
      主なテーマ:社会・環境・人間の未来

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

       IUGG評議会は7月12日午後、15日午前、18日午後の3回行われた。第1回目は、IUGG役員の報告、会員(メンバー国)の動向報告、役員推薦委員会報告と役員候補者の発表、規約委員会報告、次回総会開催候補地選定委員会報告、学術プログラム報告があった。第2回目は、8つのアソシエーション(IACS, IAG, IAGA, IAHS, IAMAS, IAPSO, IASPEI, IAVCEI)の活動報告、科学・教育プログラム報告、国際学術会議(ISC)報告、政府間委員会報告、財務委員会報告、2024-2027年予算案報告があった。第3回目は、2024-2027年予算案の採択、新役員投票、次回総会候補地プレゼン、委員会新役員の承認、レゾルーション採択投票があった。また、開会式と受賞式が7月12日夕方、閉会式が7月19日夕方に開催された。
       IUGGは8つのアソシエーション(IACS, IAG, IAGA, IAHS, IAMAS, IAPSO, IASPEI, IAVCEI)から構成されるため、それぞれのアソシエーションでの総会や執行委員会も開催され、それぞれの会長や役員などの交代も行われた。筆者は7月15日に開催されたIACS総会に参加した。IACS総会では、委員長による過去4年間のIACSの活動報告、事務局長による会計監査報告、IACSの各賞の受賞者紹介があった他、役員選挙があり、日本の1票を投じた。また、IACSの活動計画の紹介があった他、IACSのワーキンググループ、常置委員会、IACSとの合同委員会の報告があった。
       科学行事としては、ユニオンシンポジウムが4つ、8つのアソシエーションのジョイントシンポジウムが50、各アソシエーションのシンポジウムが84開催された。5034件の発表申し込みがあり、口頭発表セッションが620、ポスター発表セッションが166であった。研究発表のうち、約7割が口頭発表であった。
       IUGG分科会から推薦した仲田典弘氏(IASPEI)がEarly Career Science Award、谷口真人氏(IAHS)がFellowを受賞した。日本から別途推薦されていたIUGG分科会委員の日比谷紀之氏もFellowを受賞した。仲田典弘氏の受賞記念講演が行われた。
       筆者も選考委員を務めたIUGG Gold Medalは、フランスのValerie Masson-Delmotte氏が受賞し、7月15日に受賞記念講演を行った。同氏はIPCC第6次報告書ワーキンググループ1の議長を務めており、受賞記念講演ではIPCC第6次報告書の出版経緯と概要について講演した。

    2. 提出論文(日本人、日本人以外):

      発表要旨は全部で5034件投稿された。国別の投稿数は公表されていないが、日本から300件近くの投稿があったと推定される。

    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等):

       IUGG全体としてはオープンサイエンス、国際的な課題解決のためのサイエンス、基礎科学の推進、若手研究者の育成、EDI(Equality, Diversity, Inclusion)の方向性、南北の対話、データ共有やアナログデータの救出などの重要性が示された。温暖化防止のための気候・気象エンジニアリングについては、現時点で実施すべきではなく、今後もさらに研究・検討を進めていくべきことが推奨された。筆者と関係が深いIACS、IAMAS、IAPSO関連の分野では、地球温暖化に伴う自然災害の増加や海面上昇、古気候研究に基づく気候変動メカニズムの解明と将来予測の精緻化、大気-海洋-氷床の相互作用に関する研究の重要性が更に高まっている。

    4. その他の特記事項:

       日本人は数多くのシンポジウムでコンビーナーを務めた。また、10名のEarly Career Science Awards受賞者のうち1名が、5名のFellow受賞者のうち2名が日本人であった。このように、日本の科学的貢献の大きさが世界的に認識されている。

所見

  • 前回の2019年モントリオール大会に比べて中国からの参加者が大幅に増加した。特に若手の研究者が多数参加していた。研究発表件数が多いだけでなく、コンビーナーも多く、中国の存在感が大きくなっている。また、海外の大学や研究機関に所属している中国人の研究発表やコンビーナーも多かった。
  • ジョイントシンポジウムの存在感が大きく、異分野連携が進んでいるとの印象を受けた。