代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)第13回国際若手科学者会議・グローバルヤングアカデミー年次総会2023
    (英文)13th International Conference of Young Scientists and Global Young Academy Annual General Meeting 2023
  2. 会 期
    令和5年6月4日から令和5年6月9日まで(6日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:現地開催
    2. 会議の開催周期:毎年開催
    3. 会議開催地:ルワンダ共和国キガリ市
      会議場:Carnegie Mellon University Africa、Kigali Marriott HotelおよびHotel Sainte Famille
    4. 会議開催母体機関:グローバルヤングアカデミー
    5. 会議開催主催機関及びその性格:グローバルヤングアカデミー(国際版若手アカデミー)
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名):

      アイルランド、アメリカ、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、イタリア、インド、インドネシア、ウガンダ、エジプト、エチオピア、オーストラリア、オーストリア、オマーン、オランダ、ガーナ、カナダ、カメルーン、キプロス、クロアチア、ケニア、コロンビア、スウェーデン、スペイン、タイ、タンザニア、チリ、ドイツ、トルコ、ナイジェリア、ナミビア、ニュージーランド、ネパール、ノルウェー、パキスタン、パナマ、パレスチナ、バングラデシュ、ブラジル、フランス、ベルギー、ポーランド、マレーシア、メキシコ、モーリシャス、モロッコ、モンゴル、ヨルダン、ルワンダ、英国、韓国、中国、南アフリカ、日本(以上53カ国)、161名
      日本人参加者:岩崎渉連携会員(筆者、派遣機関:日本学術会議)、小野悠連携会員(筆者、派遣機関:日本学術会議)

    7. 次回会議予定:

      会期:2024年5月7日~10日
      開催地:アメリカ合衆国ワシントンDC
      準備組織:グローバルヤングアカデミー
      テーマ:未定

  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:

      6月4日および5日:プレカンファレンスワークショップ(テーマ:サイエンスリーダーシップ、バイオインフォマティクス)
      6月6日:オープニングセレモニー、パネルディスカッション(テーマ:低・中所得国におけるワクチン接種、世界的課題に対応した技術イノベーション)、ワーキンググループ(テーマ:オープンサイエンス、生物多様性、科学的助言、科学教育など)
      6月7日:キーノートスピーチ(Nature誌編集長マグダレナ・スキッパー博士)、パネルディスカッション(テーマ:世界的課題に対応した技術イノベーション、技術イノベーションの倫理的課題)、各メンバーによるライトニングトーク、交流を深めるためのエクスカージョン(キガリ虐殺記念館訪問)
      6月8日:パネルディスカッション(テーマ:科学における出版、科学的助言)、グローバルヤングアカデミー総会、ワーキンググループ(テーマ:オープンサイエンス、生物多様性、科学的助言、科学教育など)、グローバルヤングアカデミー共同代表・運営委員選挙
      6月9日:グローバルヤングアカデミー総会

    2. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等):

      本年度の第13回国際若手科学者会議・グローバルヤングアカデミー年次総会2023は、テーマを「技術イノベーションによる世界最重要課題解決(Technological Innovations for Discovering Solutions to the World’s Greatest Current Challenges)」と題してルワンダ共和国キガリ市にて開催された。COVID-19による3年間のオンライン・ハイブリッド開催を経た久しぶりの対面開催であったことから、ワクチン接種に関する世界的な協働システムをどのように形作るかというテーマから議論が開始された。その後は、やはりこれもCOVID-19パンデミックを受けたテーマとして、若手科学者が国境や分野を超えていかに連携し、人類の幸福に向けたイノベーションを加速していくかといった点に集中した議論が行われた。また、こうした分野や国境を越えたイノベーションの加速は、新興感染症への対応のみならず、気候変動など人類が直面するさまざまな課題を乗り越えていくためにも重要であるということについて、各国の若手科学者で改めて意思の統一が行われた。さらに、近年著しい進歩を遂げたいわゆる生成AIについても多くの議論が交わされ、こうした革命的な技術についてその負の側面に注意を払いつつも、積極的に活用していくことが必要(あるいは避けることができない)といった点が確認された。

    3. その他の特記事項:

      日本学術会議の小野連携会員が、グローバルヤングアカデミーの新会員として新たに選出され、歓迎とともに会員証の贈呈が行われた。グローバルヤングアカデミーは各国の多様な分野から200名を上限として会員を選出しているが、日本人会員としては12人目の選出となった。また、上記の学術的内容に関連して、日本学術会議の岩崎連携会員から、若手科学者の業績評価が世界的に短期的な指標に基づいて行われつつあることや、分野横断的研究の経験が研究評価者側に不足していることがイノベーションを長期的に阻害していることについての発言があり、各国の若手科学者代表から強い賛意が寄せられるなど、議論をリードすることにつながった。今後、本会議の内容を踏まえた声明が発表される予定である。

所見

先述のように、本年度の第13回国際若手科学者会議・グローバルヤングアカデミー年次総会2023はCOVID-19による3年間のオンライン・ハイブリッド開催を経た久しぶりの対面開催であり、国際的な若手科学者のつながりを再確認し、強める他にない機会となった。本年度は日本からの新会員として小野連携会員が選出され、日本からの存在感が改めて増すとともに、岩崎連携会員からのスムーズな引き継ぎが行われた。特に、昨年度の本会議は日本学術会議若手アカデミーがホスト国としてハイブリッド開催したものであり、今回の会議に日本から小野・岩崎の2名の参加がなされたことで、昨年度の会議についても多くのフォローアップの議論を交わすことができた。グローバルヤングアカデミーは研究分野も国境も異なる200名の若手科学者が世界から集まる団体であり、国際的かつ学際的な若手科学者の団体として極めてユニークな存在である。その一方で、各分野ごとの会議や国内の会合等で会員同士がお互いに顔をあわせる機会がほとんどない。そういった意味で、現地・対面での会議開催は効果的に会員間の連携を深める意味で極めて重要であった。今後また現れるであろう新型感染症への対応や、不安定化する国際情勢への対応、気候変動等の喫緊の課題への対応、そして人工知能の急速な発達に伴う諸分野への影響への対応など、数多くの重要な課題について有益な議論が交わされた。

グローバルヤングアカデミー総会の模様
発表する岩崎連携会員
発表する小野連携会員
Nature誌編集長マグダレナ・スキッパー博士と岩崎連携会員
会員証を受け取る小野連携会員