代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)国際歴史学会議第23回大会
    (英文)XXIII International Congress of Historical Sciences

  2. 会 期

    令和4年8月21日~27日(7日間)

  3. 会議出席者

    吉澤誠一郎(筆者)

  4. 会議開催地

    ポーランド共和国ポズナニ市

  5. 参加状況

    参加約40か国、約1000名(うち日本人参加者 約10名)

  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題
      8月21日 開会式
      8月22日~25日 大テーマ、特定テーマ、ラウンド・テーブル、合同セッション
      8月24日 国際歴史学賞の授賞式
      8月26日 国際所属団体のセッション
      8月27日 閉会式(吉澤は欠席)
    • 会議における審議内容・成果
      コロナ禍で延期となっていた学術大会が7年ぶりに開催された。主催者側発表によれば、世界すべての大陸から約1000人の参加があった。3つの大テーマのほか、総計で50を超える特定テーマ、ラウンド・テーブル、合同セッションが開催された。
      通例であれば、大会とあわせて総会が開催されるはずであるが、コロナ禍のため大会が延期されたため、総会のみが2021年のうちにオンラインで開催された。それゆえ、今回の大会の時期には、非公式で議決事項の無いミーテイングのみが開催された。
    • 会議において日本が果たした役割
      (1)理事会において、渡邊啓貴理事が運営において重要な役割を担った。
      (2)大会のために日本が中心となって組織したラウンド・テーブル「自然災害の最中またはその後における歴史的な史資料の救出と保存」が開催され、阪神淡路大震災以降、日本で模索されてきた史資料の保存の意義・方法と地域社会の関係について議論した。
      (3)そのほか、多数のセッションにおいて日本人研究者が個別的に参加し、各セッションの内実が多様で充実したものになるように貢献した。
    • その他特筆すべき事項
      「国際歴史学賞」を創設した。第一回の受賞者はサンジャイ・スブラマニヤム(Sanjay Subrahmanyam)教授であった。

会議の模様

 この会議は、本来2020年月に同じ場所で開催される予定であったが、Covid-19の流行のため、2022年8月にようやく延期することができた。しかし、それでも主催者発表によれば、およそ4割がオンラインによる参加者であり、対面参加者は通例より少なかったことは遺憾である。また、組織者が現地参加できないために、取り消しとなったセッションもあった。
 今回の大会で、最も残念であったのは、開催地ポーランドの隣国にあたるウクライナで戦火が続いていたことであった。それに関連して、ロシア連邦の国内委員会およびロシアの大学の研究者は、今回の大会への参加が許されなかった。これは、会場を提供するアダム・ミツキェヴィチ大学がポーランド政府の決定等を受けて理事会に要請した結果である。このような排除は、主催国ポーランドにおける厳しい対ロシア世論と関係があるものと推察されるが、国家の枠組みをこえることをめざす学術大会の理念に照らすと、疑問がないとはいえない。
 会議の準備そのものは、コロナ禍のなかで進められてきたものであり、多くの困難があったことを想定すれば、十分に行き届いたものではあった。しかし、対面とオンラインの両方に対応しつつ大規模な会議を開催する経験は誰にとっても不足しているので、機器の不調をはじめとするトラブルは多少みられた。
 このこととも関係するが、今後、このような国際会議において、対面参加とオンライン参加との適切な組み合わせはどのようなものか、議論が深まっていくものと予想される。

次回開催予定: 令和8年8月頃 イスラエル国イェルサレム市

会場の様子