代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)国際地理学連合(IGU)役員会及び設立100周年記念特別国際地理学会議(IGC)パリ2022
    (英文)IGU Centennial Extraordinary International Geographical Congress (IGC) Paris 2022 and Executive Committee Meeting

  2. 会 期

    2022年7月15日~22日(8日間)

  3. 会議出席者

    氷見山幸夫(筆者)

  4. 会議開催地

    パリ(フランス)

  5. 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)

    (1)国際地理学連合 (IGU)役員会
      参加国11か国、参加者数11名(うち日本人1名、オンライン1名)
    (2)国際地理学連合 (IGU)設立100周年記念特別国際地理学会議(IGC)パリ2022
      参加国79か国、参加者数2300余名(うち日本人49名、オンライン233名

  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題
      (1)国際地理学連合 (IGU)役員会(7月17日、21日)
       17日午前の会議はThe Ecole Normale Superieure(パリ高等師範学校)で行われた。主な議題は、経理報告、役員選挙の結果とこれからの役員体制、役員分掌報告、IGU年次報告、役員会スケジュール、IGUウェブサイトと情報発信、ブレチン、出版計画、100周年記念特別IGC打合せ、IGU総会打合せ、コミッション代表者会議打合せ、UN-GGIM Geospatial Societies、GeoUnions、ISC(国際学術会議)への対応など。
       同日午後には同じ会場でISC GeoUnions所属の9つの地球科学系学術連合の代表者会議(ハイブリッド)が開かれ、IYBSSD(国連持続可能な世界のための国際基礎科学年)協賛事業として“Distinguished Lecture Series on Basic Sciences for Sustainability”を実施すること等が決定された。
       21日午後、the Societe de Geographie(フランス地理学協会)で行なわれたIGC閉会式の終了をもって2020年~2022年のIGU役員会は終了し、2022年~2024年の役員会がスタートした。そこで新旧の役員はIGC閉会式場から別室に移動し、新旧役員の引継ぎをし、新体制の第1回役員会を10月にスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラで開始することなどを決定した。
      (2)国際地理学連合(IGU)設立100周年記念特別国際地理学会議(IGC)パリ2022
       この記念すべき会議(IGC)は、7月18日~22日の日程で、Pantheon-Sorbonne(パリ大学1)とInstitut de Geographie(地理学研究所)を主会場として行われた。開会式は地理学研究所隣のMaison de l'Ocean(海の館)で、閉会式はthe Societe de Geographieで執り行われた。Maison de l'Ocean の大会議場は2018年7月に国際学術会議(Iinternational Science Council) の設立会議が開催された場であり、それにIGU会長として参加した筆者にとって感慨深いものがあった。 この会議には79か国から2,300 人以上の研究者(うち2,100人近くが現地参加)が参加、5日の日程で30の部屋を使い263のパラレルセッションが実施された。会議のメインテーマは”Time for Geographers”(地理学者の活躍の時)で、その下に自然科学から社会人文科学の広い領域に及ぶ地理学のほとんどすべての分野をカバーするセッションが開設された。それらのほとんどは、IGU Commissions(研究委員会)が中心となって組織したものである。会期中、他にもNational Library of France(フランス国立図書館)など数か所で関連イベントが開催された。
    • 会議における審議内容・成果
      IGCでは上記のパラレルセッションの他、幅広い地理学の諸分野が一緒になって共通の課題に取り組む試みとして、Anthropocene、Planet of migrants、Open scienceの 3つの円卓会議、Space and disability、Meta geographies - major divisions to tell the World、Himalayan Mountains in Transitionの3つの全体会議、研究委員会特別賞を受賞したGeography of Tourism; Urban Geography; Geography of Governance の3つの研究委員会の代表による特別講演会、それにFaces of exploration in the 19th century; Jean Gottmann, an iconography of movement、 Touching to discover the world、Geography adapted to the visually impairedの3つの特別展示会が開催された(写真1, 2)。扱われたテーマの中には人新世、気候変化、環境、生物多様性、国境、サイバー空間とデジタル化、都市化、国境ガバナンス、移民と人口移動、戦争、伝染病、ジェンダーと多様性等々現在的なテーマが多く含まれていた。
    • 会議において日本が果たした役割
      日本からは49名が参加したが、この数はヨーロッパ諸国を除くとブラジルと米国に次ぎ、伸長著しいインドと中国を上回った。ただし従来の実績に照らせば100名以上の日本からの参加が予想された会議であり、日本におけるコロナ禍からの立ち直りの遅れや厳しさを増す教育研究環境などの影響を感じた。
      今回の会議では、IGUが従前からもっていた2つの賞と今回新設された2つの賞(下線)のうち、次の3つの賞で日本から受賞者を出すことができた。
       IGU Laureat d'Honneur:      村山祐司(筑波大学名誉教授)
       IGU Distinguished Practice Award:小野有五(北海道大学名誉教授)
       IGU Early Career Award:     久保倫子(筑波大学助教)
      これは日本の地理学コミュニティの層の厚さとIGU分科会を中心とするネットワークの力を反映したものであり、特筆される。なお新設の二つの賞は、筆者が会長在任中に設置を決めたものである。
    • その他
       上記の小野有五氏の受賞は、北海道内の新聞等で広く報道された。

会議の模様

  • IGU設立100周年を記念する重要な会議であったが、コロナ禍やウクライナ情勢の緊迫化などの逆風にも関わらず、IGU設立100周年に相応しい、大規模かつ充実した会議であった。IGU前会長(第25代会長)として、この会議を組織した国際地理学連合フランス国内委員会(=フランス地理協会) に大変感謝している。
  • アフリカ14か国から74名、ラテンアメリカ9か国123名もの参加があったが、これはIGUの息の長い地道な努力の成果であり、これまで12年間IGUの副会長、会長、前会長を歴任してきたものとして、嬉しく思っている。
  • 科学の世界で日本が然るべき地位を占めていくことは、世界の科学の健全な発展のみならず、日本の発展と国益にとっても極めて重要である。日本政府としてもその認識を広く共有し、支援を一層強化してほしい。
  • ほとんどの会場にエアコンが無い中で気温40℃を超える猛暑に見舞われた今回の会議では、扇子が参加者全員に配布され、喜ばれた。扇子の配布は3か月前に会場の下見に訪れた筆者が提案したものであるが、それを実践していただいた会議の組織委員会に心底感謝している。

次回開催予定
第35回IGU国際地理学会議(IGC)が2024年8月25-30にダブリン(アイルランド)で開催される予定である。

円卓会議 “Anthropocene ≫(人新世)”話しているのは東京大学小口高教授
円卓会議 “Anthropocene ≫(人新世)”話しているのは東京大学小口高教授