代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)IUBMB-FEBS-PABMB 生化学グローバルサミット2022
    (英文)IUBMB-FEBS-PABMB The Biochemistry Global Summit 2022

  2. 会 期

    2022年7月9日~14日(6日間)

  3. 会議出席者

    本橋ほづみ(筆者)

  4. 会議開催地

    リスボン(ポルトガル)

  5. 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)

    ヨーロッパの国々を中心に北米、南米、オーストラリア、一部アジアの国々約30~40カ国から参加していた模様。完全な現地開催であり、400~500名程度が参加していた。日本を始めとするアジアからの参加は少なく、日本からは10名程度だったと思われる。

  6. 会議内容
    12の特別講演と28のシンポジウムが行われた。そのうち、2日目の午前中のシンポジウムの一つは、がんの生物学に関するもので、本橋が講演を行い、がんの悪性化の分子基盤を転写因子のネットワークの視点から議論した。また、5日目のYagi Lecture特別講演では、東北大学の山本雅之教授が生体の酸化ストレス応答機構の発見からその重要性の解明に至る研究成果を講演した。

会議の模様

7月9日学会初日は午後からレジストレーションがあり、学会場となったリスボンのカンファランスセンターには、多くの参加者の姿が見られた。気温は33度まであがり、湿度も高く、つよい日差しが射すなか、多くの参加者はマスクなしで半ズボンにTシャツ、キャミソールなど、かなりの軽装だった。久しぶりの対面での再会を喜ぶ参加者たちの様子が目立っており、すでにコロナ禍の前とほぼ同じ雰囲気となっていた。一方、私は、母の介護をしている関係上、絶対に感染できないと考え、マスクを着用する数少ない参加者の一人だった。
初日は、開会式のようなセレモニーがあり、IUBMB, FEBS, PABMBのトップが挨拶、それぞれの団体に貢献した人たちの表彰があった。それに続いてプレナリーレクチャということで、イギリスのDr. Sarah Teichmannが、ヒトの一細胞解析に関する研究について講演を行った。
学会2日目の7月10日の午前中に、私が講演するシンポジウムが行われた。Molecular Medicine “Cancer and Metastasis”というセッションで、招待講演は、私と座長も務めるフランスのDr. Guido Kroemerで、3つのショートトークがあった。Dr. Guido Kroemerは、マウスモデルの胆管がんが、自己免疫疾患の誘導により緩和するという結果を示して、免疫応答の適切な制御の重要性を述べていた。ショートトークは、ポスドクレベルの若手研究者の発表であり、PAD2/PAD4阻害剤の検討、SHARP1の分解制御、POLE3/POLE4の抑制によるPARP阻害剤との合成致死性についてで、まだ解析中で十分な解析ができていない部分が散見される内容だったが、会場の若手研究者たちから活発な質問がでており、若手研究者たちの積極的な姿勢が印象的だった。
お昼には、アイルランドのDr. John Cryanの腸内細菌と神経機能についての特別講演、午後にはスペインのDr. Pura Munoz Canobvesによる老化した骨格筋の若返りの特別講演があり、いずれも一番大きな会場がほぼ満席状態で、大変興味深い内容だった。その後はポスター会場に行き、掲載されているポスターをすべて見て回ったが、玉石混交という印象だった。予想外だったのは、ロシアやウクライナからのポスター演題も10演題ほどずつ出されていたことで、政治での対立とは異なる次元でサイエンスの議論がなされていることにすこし心が和む思いがした。ほとんどがヨーロッパの国々からの演題であり、北米、南米、韓国からの演題がそれに続き、中東、アフリカ、中国、日本からの演題がわずかに見受けられた。内容は、生化学の会議とあって、構造生物学関連の演題や酵素学的解析の内容の演題が多くみられた。
今回はヨーロッパでの開催ということで、ヨーロッパ諸国からの参加が中心であったと理解される。若い大学院生やポスドクとみうけられる研究者の参加が目立っており、生化学を研究する若い世代の盛り上がりがあるように感じた。

次回開催予定
2024年9月末 オーストラリア メルボルン

生化学グローバルサミット2022の模様