代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)国際宗教学宗教史学会 理事会
    (英文)International Association for the History of Religions (IAHR), Executive Committee meeting

  2. 会 期

    令和4年6月26日~7月1日(6日間)

  3. 会議出席者

    藤原聖子(筆者)

  4. 会議開催地

    アイルランド コーク市

  5. 参加状況

    参加国数 12か国 参加者数 12名(うち日本人1名)

  6. 会議内容
    • 日程及び会議の主な議題
      国際宗教学宗教史学会 理事会 6月26~27日
      ヨーロッパ宗教学会(European Association for the Study of Religions)年次大会 6月27日~7月1日
      主な議題
      (1)ロシアのウクライナ侵攻に対する理事会声明
      (2)第23回(2025年)世界大会 開催地・主催者の決定
      (3)2023年国際委員会 開催地・主催者の決定 議題の検討
      (4)若手研究者支援プログラム
    • 会議における審議内容・成果
      (1)ロシアのウクライナ侵攻に対する理事会声明について

      国際宗教学宗教史学会理事会はロシアによるウクライナ侵攻に対して2月末に声明を発出した。しかしその発出の経緯や意義については理事会内外で異論が出されたため、発出に至るまでのプロセスについて検証した。


      (2)第23回(2025年)世界大会 開催地・主催者の決定

      国際宗教学宗教史学会の世界大会は5年に1度開催され、次回は2025年になる。複数の候補地を検討した結果、ポーランド・クラクフ市で8月に開催することが決まった。本学会(IAHR)は1950年にヨーロッパで発足したが、中・東欧での世界大会はこれが初となる。さらに、2025年は1900年の第1回国際宗教学宗教史学会議(ICHR)から125年、1950年のIAHR設立から75年、2000年のヨーロッパ宗教学会設立から25年という節目の年になる。


      (3)2023年国際委員会 開催地・主催者の決定議題の検討

      国際宗教学宗教史学会は、加盟学会の代表者から構成される、50~100名規模の国際委員会という名称の会議を2~3年ごとに開催している。来年は東京にて日本宗教学会の主催によって開くことになった。この会合では、上記(1)に関わる議題、すなわち学会としてロシア批判を含む反戦の声明を出すことが適切かどうか、より広くは、21世紀の国際宗教学会の世界的役割とはどのようなものであるべきかを踏み込んで議論することになった。反戦運動それ自体は重要であっても、本学会やその所属学会である国際哲学人文学会議(CIPSH)は、ICSUやISSC同様、第二次大戦後に冷戦下においても東西の研究者の交流を可能にするためにユネスコの働きかけにより設立されたという経緯がある。ウクライナ侵攻を批判するという理由からロシア学会や研究者を本学会から締め出すことは、この設立の精神に沿うことではない。しかし全くアクションを起こさないことについても懸念の声が主としてヨーロッパの会員から出されている。その一方で、これまでどのような戦争やテロについても声明を出したことがない本学会が、今回特定の政治的立場をとることはヨーロッパ寄りの判断であるという批判もある。
      本学会の世界大会を1958年・2005年の2度にわたって開催し、本学会のあり方についての論議に長く関わってきた日本宗教学会・東京は、このような重要な議題について議論を尽くすには最適の場であることについて、役員の意見が一致した。同時開催するアカデミック・プログラムのテーマもこれに合わせて “Can the IAHR be engaged and relevant without being political or confessional?: The position of ‘science’ in 2023”とする案が出された。


      (4)若手研究者支援プログラム

      ウクライナの若手研究者を支援するために、次年度のヨーロッパ宗教学会参加のための旅費助成金を本学会から支出することを定めた。

    • 会議において日本が果たした役割
      報告者は本学会の事務局長として理事会を招集するとともに、ヨーロッパ外からの視点を複数示すことで多角的な議論が行われるよう努めた。また、自身の立場をポジション・ペーパーとして事前に提出し、議論の深化に貢献した。

会議の模様

次回への課題、議論の継続については上述の通りである。他に、世界大会のヨーロッパでの開催が続いたため、アジア・中南米等での開催可能性を今後積極的に検討することになった。また、気候危機問題を鑑み、ハイブリッド開催を望む会員が増えているが、完全なハイフレックス形式をとるには費用がかかることがネックになっている。クラクフ大会ではその点も課題である。

次回開催予定: 2023年12月