日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

代表派遣会議出席報告

会議概要

1 名 称   スウェーデン及びオランダ若手アカデミー等との意見交換

2 会 期 2012年2月21日(火)~24日(金)

3 会議出席者名  狩野 光伸(若手アカデミー委員会副委員長)

4 会議開催地  スウェーデン(ストックホルム)、オランダ(アムステルダム)

5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
        1.スウェーデン若手アカデミー (先方2名、当方1名)
          出席者: 同代表Helene Andersson-Svahn博士
                同Director Anna Sjostrom-Douagi氏
                狩野光伸 博士(若手アカデミー委員会副委員長)
          於:スウェーデン王国科学アカデミー
        2.オランダ若手アカデミー (先方4名、当方2名)
          出席者: 同代表 Arianna Betti博士
                同副代表 Marie-Jose Goumans博士
                同事務補佐二名
                狩野光伸 博士(若手アカデミー委員会副委員長)
          於:オランダ王立アカデミー(Trippenhuis)
        3.欧州科学人文学術会議連合(先方1名、当方2名)
          出席者: 同Director Rudiger Klein博士
                羽場久美子 博士(第一部会員)
                狩野光伸 博士(若手アカデミー委員会副委員長)
          於:オランダ王立アカデミー(Trippenhuis)

6 会議内容

1.スウェーデン若手アカデミー
 ・打合せ、意見交換の内容
  スウェーデン若手アカデミーの設立から現在までの状況について説明
  今後の交流可能性について意見交換

2.オランダ若手アカデミー
  日本学術会議若手アカデミー委員会の活動状況報告
  オランダ若手アカデミーにおける教育活動の状況についての紹介
  今後の交流可能性について意見交換

3.欧州科学人文学術会議連合
  日本学術会議若手アカデミー委員会の活動状況報告
  世界他地域の若手アカデミーの現況について紹介

7 会議の模様

1.スウェーデン若手アカデミー
 スウェーデン若手アカデミーは2010年から開始された。現在22名の委員で構成されている。2012年5月に向け6名を加え、最終的には40名規模を目指している。
 委員の募集にあたっては、Scientific excellenceと本人のやる気を重要視している。したがって、まずScientific excellenceを持つと思われ、年齢条件を満たす国内の科学者をリストアップし、これらすべてに対して、異分野連携活動に興味を持ち、若手アカデミー委員に自ら志願する者を募っているという知らせを送った。結果として35名の応募があり、ここから6名を選抜するプロセスに入った。
 ここでは、面接に加え、応募者を5名ずつのグループに分けて、何らかの提示された課題に対して議論をさせ、その中でのコミュニケーション能力を試験した。その結果、選抜を行った。この方法を取ることによって能動的なメンバーを選出することができる。若手アカデミー活動に対して能動的なメンバーを選出しないと、その後の組織としての活動度が下がってしまう。
 Scientific excellenceについては、例えば他の北欧国家では重要視しないで若手アカデミーが設立運営されている。この結果、Andersson-Svahn博士が一度行ってみたときに感じたことは、その若手アカデミーは、議論を楽しむ場のようになっていて、具体的な活動が見えてこない印象となっていたという。
 スウェーデン若手アカデミー内のコミュニケーションは、Facebookと同様のインターネットツール(ただし部外非公開に設定できるソフトウェア)を利用し、電子メールの総数をできるだけ減らし、かつ各委員の都合のつくときにすべての議論の流れを追いなおすことができるようにしている。電子メールはどうしても返事を必要とする場合にのみ発信している。
 実際に顔を合わせる会議の開催は1泊2日のものを年4回程度にとどめ、しかも委員の出席動機を高めるために、必ず部外から人を招いて開催する。これまでに例えば政治家を招いたこともある。
 スウェーデン若手アカデミーの紋章は、種(たね)の集合として表象している。これをさらに具現化して、会合に招いた人たちには必ず「スウェーデン産植物の種詰め合わせ」の前記紋章入り小袋を、お土産として渡している。若手アカデミーは、将来のアカデミーの「種」である、どうぞ大事に育ててください、という意味を持たせている。
 組織運営にあたって、DirectorであるSjostrom-Douagi氏がまず親アカデミーに雇用され、これまで若手アカデミーにおける唯一のフルタイム勤務者として、若手アカデミーの設立運営に関わってきた。現在代表のAndersson-Svahn博士は、Sjostrom-Douagi氏により指名された。このような代表の選び方は今後しない予定であるが、初代には組織運営にふさわしい人物を選ぶ必要があったため、このようになった。Andersson-Svahn博士によれば、一方、Sjostrom-Douagi氏の存在なしには若手アカデミーは回らないだろうという。会議開催を行う、政策アピールを出す、などの際には、Sjostrom-Douagi氏がまず下準備を行って、それに委員が乗っていくような運営の仕方になっている。委員はすべて研究活動を本業としているわけなので、こうしたフルタイムの運営者がいなくては、回っていかないとAndersson-Svahn博士はいう。
 スウェーデン若手アカデミーとして、すでにEUに対する政策アピールを出すことができた(別紙)。これは設立後2年以内であることを考えると、誇るべき成果と考えているとのことである。
 スウェーデン若手アカデミーの活動は、今のところ100%が一外部団体の資金によって賄われてきている。この資金が当初2年期限であったことから、設立と活動を急ぐ必要があり、その結果早くに活動が軌道に乗った面はあると思う。
 日本とスウェーデンは実は文化的にも多くのことを共有しており、また現在の立ち位置から、両国とも、強い牽引的な文化の間に入って各国をつなぐ役割を果たすことができよう。またAndersson-Svahn博士は既に多くの共同研究者を日本に持っている。これらのことから、ぜひ今後日本とスウェーデンの若手アカデミーで交流ができたらよいのではないか。
 当方からは、日本学術会議若手アカデミー委員会の活動の現状について共有し、今後の交流については持ち帰って検討させていただきたい旨お返事を申し上げた。
 以上で会合を終了した。

2.オランダ若手アカデミー
 オランダ若手アカデミーとは、これまでにも日本学術会議若手アカデミー委員会関係者と交流の実績があることから、まず当方から、日本学術会議若手アカデミー委員会の最近の活動の現状について共有した。
 これに対して、まずオランダ若手アカデミーにおける委員選出の方法について紹介があった。男女比はちょうど1:1となっていること、毎年10人が抜けて10人新しく取るという方法論を取って人数を安定させていることなどが改めて紹介された。
 次に、オランダ若手アカデミーにおける活動、特に社会への発信の一環として行われている、学校教育への参画について紹介があった。これに対しては、オランダ若手アカデミー内部でまず「科学はなぜ必要なのか」「科学は何をしているのか」を子供にも分かるレベルで表現できるよう議論し、さらに外部デザイナーなどに委託して、カードゲームの形にしたとのことである。これは非売品だがインターネットからフリーにダウンロードできる。(下記がリンク。)
  http://dejongeakademieonwheels.nl/bestel-het-spel(※外部サイトへリンク)
  http://dejongeakademieonwheels.nl/uploads/EXPEDITIE_MOENDOES.zip(※外部サイトへリンク)
 これを学校に出向いて教材として用い、科学に対する議論を生徒にしてもらうという方法を行っている。授業の初めはうまく議論が進まなくても、しばらくすると生徒同士で大変豊かな議論が展開されるようになっていく。若手アカデミーメンバーはそのような議論の発展を補助する役割をする。
 興味深いことは、こうした教材は、科学技術に造詣が深くないままに科学技術担当閣僚になってしまったような政治家に対して、科学の重要性を語るにあたっても、実に効果的であったことである。
 オランダ若手アカデミーのこうした活動は、資金面では親アカデミーから支援されていて、活動に困らないレベルにある。
 オランダ若手アカデミーでは最近この資金の一部で、若手科学者に対するグラントもスタートした。
 オランダ若手アカデミーのコミュニケーションではfacebookやtwitterも用いている。一部は公開としているが、主なやり取りはfacebookを非公開設定で用いている。公開とする情報は、常勤専属事務補佐のかたが判断しながら出している。
 オランダ若手アカデミーでは、若手アカデミーを初めて設立した意味からも、関係各国における若手アカデミーの設立運営を補助したいという気持ちが強い。2012年11月には関係のある若手アカデミーのメンバーを招待して会合を行うことを予定しているので、できれば参加してほしい。また、資金面でも問題はないので、日本側が招聘してくれるのであれば、経験を共有しにオランダ若手アカデミーの予算で出張することが可能である。必要について声をかけてほしい。
 当方からも、こうしたご厚意に感謝し、今後の交流についても持ち帰って検討したい旨をお返事した。以上で会合を終了した。

3.欧州科学人文学術会議連合
 Klein博士は2010年3月の日本学術会議公開シンポジウム「若手アカデミーとは何か」の折にも来日の上、講演をしていただくなど、すでに深い関係のある方である。
 今回はしたがって、まず当方から日本学術会議若手アカデミー委員会の活動状況について別紙の図を用いて説明を行った。
 これに対して、Klein博士が同時期に取り組んでおられたEUにおける各種科学政策の策定において、科学者以外の関係者との対話の必要も痛感されたという関連から、スコットランド若手アカデミーの取り組みが紹介された。すなわち、同若手アカデミーは開始したばかりであるが、そのメンバーに同年代であれば科学者以外の、法律家、企業家、政治家なども加える試みを行っており、この方向性も模索する価値があるのではないか、という御提案をいただいた。
 次に、ヨーロッパにおける若手アカデミー設立状況について説明があった。多くの国で設立が進む一方、例えばハンガリーやポーランドにおいては親アカデミーからの公には反対があり公式のものとしては進みにくい状況はあるが、実質的には若手年代の力を必要としているということは間違いなく、今後何らかの動きがあるだろうと予測される。
 次に、なぜ若手アカデミー設立の動きが、この時期に、このような速さで、全世界的に受け入れられつつあるのかについてのお考えを伺った。一つは若年層の取り込みによる活気の回復(rejuvenate)が必要であるという共通見解があるのではないかということであった。次に、同席の羽場博士からのご意見の通り、まさにglobalizationとcompetitionが進んでおり、21世紀型の国際社会に向けて急激に変化していることを皆が感じているからではないかということであった。これらの中で生き残るためには、変革を続けていく必要があるとお考えである。こうした国際社会の状況は、振り返ってみればこの200年程度すなわち帝国主義の興隆と国家主義の台頭以降の中で初めての事態ではないか、とのことであった。
 日本学術会議自体は第二次世界大戦後初めて創設され、その頃は新興団体であり日本における科学の再興を目指してきたと思うが、一方同じく敗戦国であるドイツ(Klein博士はドイツ出身)では、もともと英語ではなくドイツ語圏が科学においては主流であったという自覚のもとに、科学の再興を図ってきた。ドイツ国内各地域におけるアカデミーも存在しており、ここでも若手組織が重要視されてきている。
 これら若手アカデミーは国によらず多くの問題を共有していると思われ、それを共同アピールなどの形で国際社会に向けて発信することは有意義であろう。またそのための国際的協力は、次世代の国際的科学社会を構築していくにあたって極めて重要と考える。
 そのために必要な助力は惜しまないので、連絡を取ってほしい。
 以上の内容に対し当方から謝辞を申し上げ、また必要な御助力について当方で検討してみたいと申し上げて、会合を終わった。

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