見解「多様な知が活躍できる大型パワーレーザー施設の実現と国際的な中核拠点の構築」のポイント

1.現状及び問題点

 パワーレーザーは、比較的容易に地上に存在しない極限状態をつくり出すことができ、宇宙や物質の本質探求に関わる新しい学術を創成できるとともに、エネルギー、材料、デバイスなど社会に役立つ多様な新技術を生み出すことができる。そのため、パワーレーザーによる高エネルギー密度科学として世界中で重要性が増し競争が激化している。我が国も、この学際性豊かな高エネルギー密度科学に関する多くの実績とそれを推進するためのパワーレーザー技術における競争力を有している。
 一方で、我が国の競争力とともに国際的な重要性にもかかわらず、我が国では、多様な知が活躍できるオールジャパン体制の要となる高エネルギー密度科学の中核拠点が整備されていない。また、要素技術の活用に関しても、日本発の技術が海外ではいち早く大型プロジェクトで採用されている一方、日本では強みとなる要素技術を生かしたプロジェクトが少なく、その活用に関しても遅れている。
 我が国の強みを活かした、国際競争力ある高繰り返し大型パワーレーザー施設を有した中核拠点を速やかに実現し、様々な学術と多様性ある社会の持続的発展に貢献する道筋を示した学術研究構想を明らかにする必要がある。

2.見解の内容

(1) 我が国の強みを活かした中核拠点の実現
 パワーレーザーを用いた高エネルギー密度科学は、多様な「知の創造」と「知の具現化」を実現できる学際分野として、世界的にその重要性が増すとともに飛躍的に発展している。特に最近では、パワーレーザーの技術的ブレークスルー(我が国の高繰り返し大型パワーレーザー実現のメド)や、レーザー核融合研究のマイルストーン達成(米国における核融合点火燃焼の実証)、それに続く米国政府の高エネルギー密度科学推進本格化の動きなど、大きな進展があった。
 このような飛躍的な進展と急激な変化の中、我が国がこの分野で世界を先導していくためには、独自の戦略の下で機を逸することなく我が国の強みを活かした中核拠点を実現するべきである。

(2) 競争力あるパワーレーザー施設の実現
 パワーレーザーに関する我が国の強みである競争力ある様々な要素技術(高耐力光学素子、レーザーセラミック、半導体レーザーなど)を速やかに統合・集約し、システム構築と実装を加速し、高繰り返しの大型パワーレーザー施設を世界に先駆けて実現することに挑戦するべきである。
 これにより、激しい国際競争において、多様な知の活躍による様々な共創を実現し競争力あるパワーレーザー施設を有した国際的な中核拠点を構築するべきである。

(3) オールジャパン体制
 中核拠点で切り拓かれる学術・科学技術の展望及び人的資本・技術的資源の広がりを明確にし、当分野において世界を先導する産学オールジャパン体制を強化するべきである。


 これらの取組により、多様な「知の創造」と「知の具現化」を実現する高エネルギー密度科学という大樹を育み、基礎科学、物質材料科学、生命科学、エネルギー学から通信・プロセス技術など様々な分野・領域に横断的なレーザー科学という浩大な学術・科学技術創成の杜を形成できるとともに、エネルギー学や物質科学などと幅広く連携することで、我が国の学術と社会の持続的発展に貢献できる。





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