見解「若年女性の望まぬ妊娠における母子の支援と児童虐待の防止」のポイント

1.現状及び問題点

 令和3年12月に慈恵病院(熊本市)で行われた国内初の内密出産を機に、若年女性の望まぬ妊娠における母子の支援のあり方が、社会的に大きく注目を集めている。
 日本では女子中高生の妊娠、出産と中絶が多い。若年女性の望まぬ妊娠では、妊娠を誰にも相談できず、母が孤立出産の直後に子を殺したり遺棄したりする例が多い。母に対する教育や社会的・経済的支援が不十分である。匿名での子どもの委託(通称「赤ちゃんポスト」)や内密出産が法制化されておらず、そのための議論も足りない。
 出産から子育てまでの問題として、実母が育てられない場合の特別養子縁組の制度は作られたが、現状では養子縁組の成立は少なく、家庭的養育をされる子どもの割合が低い。養子縁組される場合でも、養親に対する経済的・社会的支援が足りない。子どもの出自の情報の管理体制が構築されていない。施設養育の子の処遇や、子の発達の状況が不明である。

2.提言の内容

(1) 若年女性の妊娠・出産・育児の状況改善に向けて
 いつでも匿名でも相談しやすい電話相談?妊婦健診のシステムを整備・周知すべきである。子どもを性被害から守る教育を推進し、妊娠?育児しながら通える学校を作るべきである。

(2) 匿名での子どもの委託と内密出産の課題の解決に向けて
 予期せぬ妊娠で悩む母の救済と、生まれてくる子どもの命と権利の両立が図られるよう、匿名での子どもの委託と内密出産制度に関する法制度が整備されるべきである。令和4年9月の内密出産ガイドラインは貴重な一歩であるが、より総合的な制度化が議論されるべきである。

(3) 社会的養護を要する新生児の処遇・養育の改善に向けて
 特別養子縁組の制度を活用し、養育の意思と能力のない実親との法的な親子関係を終了し、養親との縁組を行うべきである。里親の制度についても、改善を検討すべきである。

(4) 養親に対する経済的・社会的支援の強化に向けて
 特別養子縁組及び養父母の自助団体・支援団体に対する国の支援を増やすべきである。

(5) 子どもの出自の問題解決に向けて
 戸籍に公示されない出自の情報を安全・確実に管理する国のシステムを構築すべきである。

(6) 子どもの処遇と発達の状況の把握・改善に向けて
 乳児院措置児の処遇、及び社会的養護を受けた子の発達について調査すべきである。





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