見解「女性の理工系進学を加速するために必要な、初等中等教育へのジェンダー視点導入と望ましい理数系教育の環境整備」のポイント

1.現状及び問題点

 日本では、社会に根強く残るジェンダーバイアスの影響で、女子児童生徒が早くに理数系に興味を失う傾向が諸外国に比べて顕著であり、これが女性の理工系進出の遅れ、潜在的な人材損失につながっている。この問題を解決するために、これまで学校教育には取り入れられてこなかったジェンダーギャップ解消のための具体的施策を、初等中等教育から高等教育まで、段階的に導入することが急務である。

2.見解の内容

1.国は、女子生徒の学習環境や情意面での問題点を理解するための、客観的なデータを積極的に収集すべきである。初等中等教育に関する男女別データの積極的な公開や、データに基づいた適切な介入教育の推進が必要である。定量的データの収集は、STEAM教育や個別最適な学びなどの新しい教育施策が効果を上げるために特に重要である。

2.女子児童生徒が理数系教科についてのジェンダーバイアスの影響を早期から受けている実態を踏まえ、学習指導要領の総則の中に、社会に根強く残るジェンダーバイアス解消を、多様性、包括性を実現する取組の一つとして明記し、教育改革を進める必要がある。

3.文部科学省による教員の養成・採用・研修の中に、ジェンダーに関する諸課題の適切な対処方法を必須項目として取り入れることで、教員がジェンダーについての正しい知識を持ち、学級運営を行うことが望まれる。教職課程コアカリキュラムにジェンダーバイアス等についての言及を加えるとともに、どの学部から教員になる場合にも、ジェンダー平等に向けた教育の在り方に関する授業を履修できるよう、教員免許法の改正を含め早急に検討を始めるべきである

4.理数系教科や情報教育を担当する教員のジェンダーバランスをできるだけ早く解消することは、女子児童生徒が理数系教科を自らに関係のあるものと捉える上で重要であり、教育委員会等で数値目標を設定することが必要である。また、ICTや小学校の理数系教科担任となる女性教員育成のための指針を早急に設ける必要がある。

5.技術開発型の企業への女性の参画を拡充するために、広く理数系分野、ひいては社会のジェンダー平等意識を高めていく必要がある。特に、大学の理工系学部・大学院におけるジェンダー教育は充実しているとはいえず、ジェンダー平等教育の必修化等の積極的な対策をとることが求められる。

6.技術開発系の職種における女性の活躍への期待が女子児童生徒、保護者、教員に十分に伝わっていない。小学校、中学校における授業に、大学、産業界、国が一体となったアウトリーチ活動を組み合わせるなど、より積極的な働きかけを推進すべきである。





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