報告「社会的ビッグデータの利活用に向けて」のポイント

1.作成の背景

     
  •  現代社会の様々な領域でビッグデータの利活用がなされている。しかし、一方で様々な領域で利活用されているため俯瞰的に利活用を見渡す視点が失われていた。他方で、ビッグデータ利活用の実用性が強調される傾向にあり、その利活用が社会のよりよい運営や改善にいかに貢献するか、また貢献すべきかという議論はあまりなされてこなかった。
     そこで、本分科会では、社会的ビッグデータの利活用について審議を重ねてきた。合わせて、従来型社会調査データとビッグデータの関係、ビッグデータに関する倫理的問題についても審議してきた。本報告はその審議に基づいて、社会学における従来型社会調査の蓄積を生かして、社会的ビッグデータのよりよい利活用について報告するものである。

2.報告の内容

(1) 社会的ビッグデータの特性を理解した上での利活用
 従来型社会調査データと比較した場合、社会的ビッグデータにはメリットもデメリットもある。社会的ビッグデータ利活用に携わる者はこれらの特性を理解した上で、そのメリットを生かした利活用を行う必要がある。また社会的ビッグデータはこれまで長蓄積されてきた従来型社会調査の学術的資源と対立するものではない。むしろ両者を相補的に捉え連携させることで、社会的ビッグデータのより有効な利活用が可能になる。

(2) 社会的ビッグデータに関わる倫理的問題に対する十分な配慮
 社会的ビッグデータには配慮すべき倫理的問題が多々ある。さらに、収集の際に対象者が個人情報の取扱いについて十分に理解した上で収集に同意するシステムを構築する必要がある。社会的ビッグデータ収集に携わる者はこれらの点に留意する必要がある。

(3) 社会のよりよい運営や改善のための社会的ビッグデータの公開
 社会的ビッグデータは適切な利活用をすれば、社会のよりよい運営や改善のために大いに貢献する。このためには、民間企業や官公庁が収集した社会的ビッグデータを研究者が学術的に利活用できるための枠組みを構築する必要がある。また研究者も単なる業績作りのためではなく研究成果の公表がいかに社会に貢献するか問い続ける必要がある。

(4) 社会的ビッグデータの利活用のためのコンソーシアムの設立
 上述の倫理的問題に対する十分な配慮や社会的ビッグデータの公開は、一研究者や一民間企業、官公庁の一部局だけで対応するのは困難である。また私企業が収集したビッグデータを公開することは自由経済社会においては難しい点もある。このため、社会的ビッグデータに関わる機関による産官学のコンソーシアムを設立して、倫理的問題の整理と遵守すべき基準の制定、公開の基準と方法、などの検討をする必要がある。





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