報告「材料工学ロードマップのローリンク゛<デバイス、医療・バイオ材料分野>~30年後の未来に向けた夢・技術~」のポイント

1.現状及び問題点

     
  •  過去30年を振り返ると、数多くの画期的な基礎研究の成果が報告されてきており、これを基盤として、大きな社会変革、Quality of Life (QOL)の向上、経済の変換などが期待されてきた。一部ではその兆しが見えつつあるものの、それに対して世界情勢の変革はより大きな速度で進み、結果として我が国の技術発展がかすみがちとなっている。次の30年間を考えると、この状況をいかに打破し、我が国独特の経済文化の確立と世界的な協調を図れるかが課題となる。その際に、明確に科学技術に基盤を置いた確固たる展望が必要となる。また、30年後の社会を見通すと、より多角的に思考できる人材の育成が急務であり、そのためには、現状のような基盤となる科学専門分野に主点を置いている領域型教育から全く異なる感性の人材教育へのパラダイム転換が必要であろう。

2.提言等の内容

 本報告は、2014 年に報告した「理学・工学分野における科学・ 夢ロート゛マップ 2014」を基に、応用材料学の2領域のデバイス材料分野及び医療・バイオ材料分野について、「30年後に達成されるであろう技術を考えた時にどのような社会が実現し、そこで考慮すべき点は何か?」という視点からローリング(見直し)を行い、現状の課題や10代の子どもたちに夢を与える内容とすることも踏まえ、30年後の未来に向けたデバイス材料、医療・バイオ材料分野の夢・技術を10項目にまとめるとともに、30年後の未来社会の材料工学を支える人材育成についてまとめた。  

     
  • 30年後の未来に向けたデバイス材料、医療・バイオ材料分野の夢・技術(10項目)
    1: 分子解析と機能制御に基づく医療技術
    2: 精密な動作とヒトと協調できるロボットベース医療技術
    3: ヒトの五感に匹敵する高精度画像技術、バーチャル・リアリティ構築技術
    4: 超高速、大容量情報・エネルギー伝達システム技術
    5: 生体情報の連続モニタリング技術
    6: ヒトを支援する高精度AI技術
    7: 環境対応型エネルギー製造システム技術
    8: 完全に生体組織と適合する材料・デバイスシステム
    9: 高機能で分子を分離、除去、回収、再生、変換する高効率膜システム技術
    10: 個人を特定しその情報認識、処理する大規模システム
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  • 30年後の未来社会の材料工学を支える人材育成
     現在の社会は、様々な技術・情報が人間系も含めて相互に緊密に関連する巨大複雑システムとなっているが、30年後の社会は、さらに高度化した情報社会が実現されていると考えられる。特にAI技術の高度化により、現在ヒトが行っている経験則に基づいた判断の多くは、AI技術に委ねられることとなる。
     そのような社会においては、さらに豊かな未来社会の構築に向けて、多角的な視野に立ってあるべき未来の姿を描くことのできる人材の重要性が増すと考えられ、人材育成においては、従来の「情報を教える教育」から「価値を創造できる教育」への転換が必要である。
     人材育成のしくみとしては、現状の基盤となる科学専門分野に主点を置いている教育を見直して、多角的な視野を持てるように学問領域選択の任意性を増やす等の高等教育の自由化や、創造力を鍛えるための初等教育の段階からの自己学習力の育成等が考えられる。
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