報告「個人研究費についての実態調査~化学分野からの報告~」のポイント

1.現状及び問題点

 化学系研究者を対象として実施した個人研究費に対するアンケート(2019)は、個人研究費の額は減少しており、さらに、二極化が進行している可能性を示唆している。日本の研究者集団の相当の割合は、研究遂行が困難、あるいは、研究を諦めざるをえないような状態になってしまっている恐れがある。日本の学術研究の国際的位置付けの向上のためには、一部の大学だけでなく、全国の、特に地方にある大学の活性化が必須である。

2.提言等の内容

  1. 競争的資金の位置付けの明確化と、個人研究費の一律配分
     競争的資金について、1)あるミッションを提示し、それを達成するために提案する研究、と、2)独自の研究が進展してきたら、さらに進展を加速するために申請するもの、のように位置付けを明確にする。一方で、基盤的研究費として、全研究者に、一人につき年100万円程度の個人研究費を一律配分することにより、研究者集団の研究環境の健全化を急ぐ。
  2. 大学・大学共同利用機関連携の本質的強化とそのための基盤整備
     大学と大学共同利用機関との間のクロスアポイントメント制度活用による教員の相互長期派遣を全国的に制度化することにより、教育研究の水準を上げ、活性化させる。これにより、学生の研究も活発になり、多様性に富んだ次世代育成にもつながる。この制度の実質化のためには、組織の枠を越えた、教員のエフォートや業績管理の共通化の仕組みの導入が有効である。
  3. 全国規模での全研究分野を対象とした現状把握
     化学系に限らず全国規模での現状把握が必要である。日本学術会議の特徴を生かし、化学だけでなく他の専門分野の委員会や分科会と連携して個人研究費の実態を調査し、日本の高等教育機関や研究者の現状を明らかにしていくことが必要である。





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