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提言「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して―2030年に向けた課題―」のポイント

1 本提言の目的と背景

 2020年、世界では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が脆弱な立場にある女性・女児に深刻な影響を及ぼしている。コロナ危機が顕在化させたジェンダー不平等のほとんどは、新しい問題ではない。それらは、もっとも包括的なジェンダー平等の行動計画とされる「北京行動綱領」(1995年)や「ミレニアム開発目標(MDGs)」(2001~2015年)及びその後継である「持続可能な開発目標(SDGs)」(2016~2030年)などでかねてから国際的課題として指摘されてきた。コロナ危機は、取組が不十分であったことを顕在化させ、問題の深刻さと解決の緊急性を世界及び日本のわたしたちに突きつけたと言えよう。
 本提言では、「男女共同参画/ジェンダー平等」政策の対象期間を2020~2030年に設定し、危急かつ重点的に取り組むべき課題を示したい。2020年は「北京行動綱領」制定25周年にあたり、2030年はSDGs最終年にあたるという意味で、いずれも国際社会におけるジェンダー平等の達成度をはかる重要な節目となる年である。国内でも2020~2030年には、第5次(2020年)及び第6次(2025年)の男女共同参画基本計画に基づいて男女共同参画政策の整備が進められる予定である。
 男女共同参画社会基本法(1999年)が21世紀日本社会の「最重要課題」とした男女共同参画を人権・家族・労働・教育・医療・福祉を貫く横断的な重要政策の一つと位置付けて取り組まなければ、未来社会は立ちゆかない。本提言が、2030年を見据えた日本のあらゆる法・政策において十分考慮されることを期待する。

2 日本の男女共同参画政策の推進に向けた五つの提言

  •  提言1.あらゆる法・政策における「ジェンダー視点の主流化」を基本方針として明示すべきである。
     内閣府男女共同参画局をはじめとして、すべての省庁及び自治体は、2030年までにあらゆる法・政策における「ジェンダー視点の主流化」を基本方針として明示した上で、21世紀日本社会が「持続可能なジェンダー平等社会」になるための明確なビジョンを示すべきである。目下、社会のジェンダー・バイアス(雇用形態・職種・賃金・暴力被害・ケアワークなどの男女格差)を反映して、コロナ危機による負担・リスクの男女不均衡が顕在化しつつある。関係省庁及びすべての自治体は、負担・リスクの男女差も含めた公的なジェンダー統計の整備・統合をはかり、これらのデータをもとに男女共同参画政策を含むあらゆる法・政策をジェンダー視点から総合的に検証・立案・実施・評価すべきである。

  •  提言2.21世紀日本社会を「持続可能なジェンダー平等社会」にするための最優先課題として、意思決定への女性参画と「無意識の偏見」の克服に取り組むべきである。
     すべての省庁・自治体及び教育・研究機関は、改革を加速するために達成目標を明示し、クオータ制等を導入して指導的立場の女性比率を計画的に引き上げることにより、政治・経済・学術分野の意思決定過程への女性参画をはからねばならない。また、文部科学省、自治体、教育・研究機関は、「無意識の偏見」の克服を次世代育成政策として明確に位置付け、学校や地域における啓発・教育活動を組織化すべきである。

  •  提言3.「ジェンダー平等社会」をめざすための重点的政策課題として、性的指向・性自認(SOGI)差別の解消、男性・男児のためのジェンダー平等実現、「性やジェンダーに基づく暴力」の根絶、ケアワークの適正な評価と男女対等な配分に取り組むべきである。
     国際社会の動向に従い、日本でもSOGI/LGBT政策を男女共同参画基本計画に明確に位置付けるべきである。コロナ危機は、DV被害とケアワーク負担が女性に偏ることを顕著に示した。「歪んだ男性性」の克服を取り込んだ公的なDV加害者更生プログラムの開設を義務づけるなど、現行DV法の改正に向けた取組が急務である。ステイホームによるケアワークの急増が女性の大きな負担となったことに鑑み、内閣府・厚生労働省・自治体が協力して「ケアする男性性」の開発を目指すことが望まれる。また、「女性に対する暴力」根絶の法・政策を国際人権基準にあわせるべく、国はハラスメント禁止条約をすみやかに批准し、刑法性犯罪規定の改正にも取り組むべきである。

  •  提言4.科学技術や医療においてこれまで不可視化されてきた「性差(ジェンダー)」という要因に積極的に着目すべきである。
     大学・研究機関・学協会は、ジェンダー視点がイノベーションの新たな地平を拓き、社会の安全性を高めるという認識を共有して研究を進め、その成果を国・産業界・市民社会に向けて積極的に発信・提供すべきである。また、厚生労働省・文部科学省などの関係省庁及び自治体は、人生100年時代に向けて、ホルモン等の身体的性差をふまえた生涯にわたる健康支援を行うべきである。その重要な柱として、妊娠を生活習慣病の予防的介入を行う機会として位置付けるとともに、性差を踏まえた男女の健康支援に資する調査・研究の推進をはかる必要がある。大学は医学部医学系入試の女子学生への不公正処遇をなくすための取組を徹底するとともに、厚生労働省はこのような不正を引き起こした背景にある医師の過酷な就労環境の改善と固定的性別役割分担に対する意識改革に努めるべきである。

  •  提言5.学術の振興をはかるために、学術のあらゆる分野でジェンダー視点を主流化すべきである。
     大学・研究機関・学協会は、ポジティブ・アクションの活用、ワーク・ライフ・バランスの拡充、ハラスメント対策の強化をはかり、計画的な対策を進めることが望まれる。また、若手研究者をエンパワーメントするために安定した雇用とキャリアの多様化、多様な研究者が自由に発想できる研究環境の整備をはかるべきである。内閣府は、科学技術・イノベーション基本計画における人文社会科学系女性研究者の採用目標値を設定し、指導的地位を担う人文社会科学系領域の女性研究者の育成をはかるべきである。生命科学分野及び理学・工学分野について、大学・研究機関は、文部科学省と協力して「無意識の偏見」の払拭と世代を超えたその再生産の阻止、女子の理工系進路選択への理解を進めるための情報の積極的提供に努めるべきである。





     提言全文はこちら(PDF形式:6,659KB)PDF
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