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提言「新学習指導要領下での算数・数学教育の円滑な実施に向けた緊急提言:統計教育の実効性の向上に焦点を当てて」のポイント

1 現状及び問題点

 今回の学習指導要領の改訂では、小学校からプログラミング教育を行うこととなり、手引きを発行し実施に備えている。中学校での技術・家庭科技術分野、高等学校では情報科での指導を主とし、全教科でICT(Information and Communication Technology)の活用と併せて、小・中・高等学校でのプログラミング教育が強調され過ぎの感がある。
 平成10年12月14日付告示の学習指導要領では、中学校数学科から統計に関わる内容が消え、平成11年3月29日付告示の高等学校数学科の選択科目(数学基礎、数学B、数学C)に移行され、算数・数学教育における統計教育の小・中・高等学校の一貫性が失われた。平成20年3月28日付告示の中学校学習指導要領において、中学校で「資料のちらばりと代表値」、「標本調査」の内容が復活し、高等学校の必履修科目数学Ⅰに「データの分析」が入り改善されたものの、選択科目数学Bの「確率分布と統計的な推測」については多くの大学が入学試験で出題範囲外としていることもあり、実際にはほとんど学ばれていない。新型コロナウイルス感染拡大に関わってニュース等で数表やグラフでデータが示されたり、ウイルス感染検査の精度、薬の有効性評価における実験研究と観察研究の違い等が話題になる中で、国民一人一人がそれらの情報を得て、リスク(危険性)を確率的に考慮し、意思決定・行動に繋げるためには、統計教育の現状を改善する必要がある。
 新学習指導要領下では、高等学校の科目編成が大幅に変わり、現行数学Bにある「確率分布と統計的な推測」、「数列」と「ベクトル」という内容が、新数学Bと新数学Cに分かれて入り、必履修科目の新数学Ⅰの「データの分析」という内容に新たに「仮説検定の考え方」の扱いが、選択科目の新数学Bの「統計的な推測」という内容に「区間推定」に加えて、新たに「仮説検定」の扱いが入るため、令和4年度からの教育後、令和7年度大学入学共通テストにおける出題範囲について検討が必要になっている。

2 提言の内容

  • (1) 基礎教育の一環として数学教育を充実すること
     小・中・高等学校の算数・数学科の教育の中でプログラミング教育の基礎となるアルゴリズム(計算の方法・問題を解決する手順を表したもの)の考え方が育てられている。高等学校では文系理系分けによる教育が広く行われ、学習内容に差異が生じているが、文系理系を問わず、同程度教科・科目を履修し、数学を含む基礎的学習を充実すべきである。

  • (2) 統計教育の実効性を高めること
     データを活用し、意思決定につながる問題解決の方法として、算数・数学科での統計的な方法、考え方を体得させるべきである。そのために、高等学校では、数学Bの「統計的な推測」をより多くの生徒に履修させるとともに、理数探究や総合的な探究の時間も利用し、また、情報科とも連携して、統計データに基づく判断のための生徒主体の活動を行うべきである。
     また、高等学校段階での統計教育が十分実施されていない現状を踏まえると、統計教育を実効性のあるものにするためには、現在、義務化されている法定研修(初任者研修、10年経験者研修)、教員免許状更新講習の中に統計教育の内容を必修科目として入れるなど、教員に対する統計教育の研修・講習を全国津々浦々に行き渡らせるべきである。

  • (3) 新科目編成の趣旨を活かした数学教育を実施すること
     新高等学校学習指導要領では、選択科目として数学A、数学Bと数学C(それぞれ3つの内容、標準2単位)が設けられ、現行科目「数学活用」の内容が分散して入り、数学Bと数学Cは並立の位置付けである。これらの科目を各校の授業で学習者のために活かし、令和7年度以降の大学入学共通テストでは、「数学Ⅱ・数学B・数学C」を設けるべきである。その際、解答時間を増加させても数学Ⅰ・数学Aの70 分間(現行より10分間増)が限度で、数学Bと数学Cで「4問を選択」とすると時間不足につながると考えられるため、「3問を選択」とすべきである。
     各大学は個別入学試験で数学Bと数学Cを出題範囲とすべきである。





     提言全文はこちら(PDF形式:1,203KB)PDF
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