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提言「より良い近未来創造のためのロボット/AIの理解と人材育成」のポイント

1 現状及び問題点

 ロボットは、センサ、コンピュータ、アクチュエータなどの要素を統合したシステムである。近年、各要素の性能は向上し、オープン化によって一般に利用し易い状況となっている。このようなロボット要素の技術的な発展に伴って、様々なロボットの実現可能性が近年急速に高まっている。一方で、先進諸国では、労働人口減少問題や製造業国内回帰、各国でのGDP拡大、災害対応、環境変化対応,感染症対策などへのロボットの利活用が期待されている。
 現在のAIは深層学習から情報通信技術にわたる広範な技術によって実現されている。AIは膨大なデータを利用して学習し、統計的な処理のもとに、妥当な解を見出すソフトウェアである。弱点は、未定義な問題、未整理な問題への対応である。一方、ロボットはセンサ、コンピュータ、アクチュエータからなる物理システムにソフトウェアが組み込まれた統合システムである。両者の間にはソフトウェアという共通のキーワードがある。昨今のロボットの要素の充実とAIの急速な発達により、AIを搭載したロボットの実現が現実となりつつある。AI搭載ロボットという言葉も一般に浸透してきた。これに伴って、誤った理解によるロボット/AIに対する過度な期待と将来に対する不安を持つ場合もある。さらに、AIを搭載したロボットが人類に危害を加える可能性も指摘されている。
 このような状況の中で,道具としてのロボット/AIをユーザーがどのように理解して望ましい未来を創造するか,期待される新しい技術を開発する人材をどのように育成するかが大きな課題となっている。

2 提言の内容

  • (1) ユーザーがロボット/AIを正確に理解して正しく利用するために
     AIを含む要素を統合した人工物がロボットであり、ロボット/AIを道具として理解することが重要となる。今後、行政を含めて一般ユーザーが、ロボット/AIの利用法を決定する。その際、ロボット/AIの技術の本質部分や技術の限界/弱点などを理解する必要がある。また、道具としてのロボット/AIの利用に関する倫理についての理解を深めることが重要である。その結果、現状のロボット/AI技術が正しく利用され、ユーザーからの正確なニーズが研究開発者側に効率的にフィードバックされることによって、人類にとってより良い未来が構築できると期待される。
     この目的のために、ロボット/AIの研究者は、今まで以上に一般ユーザーに対して、単に最先端技術の公開のみならず、ユーザーの正しい理解を促進するための情報提供活動を行うべきである。また、ユーザーのニーズ、社会的価値観などを共有できる体制を構築すべきである。
     教育現場においても、ユーザーとしての持つべき知識をカリキュラムに反映すべき段階である。高等教育において、ロボット/AIを専門としない人文社会科学分野を含む他分野における教育内容にも盛り込むべきである。特に、人との関わり合いの大きい医療、看護、介護における専門基礎教育としての導入は必須である。文系と理系の両方に、より具体的で実用の視点をも含めたカリキュラムとするために、ロボット/AIを専門としない分野におけるカリキュラム改革は当然のこととして、ロボット/AI分野の教育者/研究者との教育活動における連携協力を強化し、この課題を解決すべきである。
     また、関連する学協会は、ロボット/AIをユーザーが適切に利用できるような啓発活動を積極的に実施すべきである。関連する学協会主催の様々な協働活動によって、ロボット/AIを一般ユーザーが正確に理解し、正しく利用するために貢献すべきである。たとえば、関連する学協会が、教育機関からの要請に応じて、ロボット/AI教育の講師派遣を組織的に実施するなどは検討に値する。

  • (2) ロボット/AI研究開発者育成のために
     ロボット/AIの研究開発者を育成するためには、工学分野に限定しても機械工学、電気電子工学、情報学、材料学など多岐に渡る分野の分野横断的な教育カリキュラムの整備が重要となる。現実的なカリキュラムとするためには、各分野の教育内容の基礎を明確にし、共通概念を抽出するなどの知の精選と知の統合の作業が必要となる。また、ロボットの社会実装を目的とすれば、社会的課題、倫理、法律などについて一定の知識を有する人材を育成すべきであり、人文社会科学分野との連携が有用となる。そのためには、将来のロボット/AIの研究開発者育成を目的として、文部科学省を始めとする国の関係機関は初等教育から高等教育おける教育プログラム開発と教育者の育成を急ぐべきである。また、新しいロボット/AI技術開発を担える人材を育成できる国家プロジェクトなどを文部科学省、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、総務省、内閣府など関係する国の機関が実施すべきである。たとえば、初等中等教育からロボット/AIの研究開発者としての人材育成プログラムを開始し、幅広い分野を効率的に学習できるように、知の精選と知の統合の成果を生かして、連続的で一貫した教育カリキュラムによって大学、大学院へ繋げるなどが挙げられる。また、学際的で新しい分野の開拓のために、分野の異なる若手研究者の自発的集まりによる研究プロジェクトも新しいロボット/AI技術開発に効果的と思われる。そのような国家プロジェクトの評価として、課題解決型のシステム統合の研究を新しい基準で評価すべきである。





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