日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

提言「Web調査の有効な学術的活用を目指して」のポイント

1 作成の背景

 現代社会ではインターネットに繋がるデバイスの普及を反映して、Web調査が興隆している。しかしその特性を理解せずに安易に利用することは、Web調査に対する信用を低下させ、有効な学術的利用を阻害しかねない。このことを背景とし、本提言では、Web調査の利点と問題点を検討した上で、Web調査の有効な学術的活用のための提言を行う。

2 現状及び問題点

 Web調査は主にマーケティングのような商業目的の調査に用いられてきたが、近年では地方自治体でも多く利用されるようになっている。さらに、無作為標本による従来型の社会調査を用いてきた社会科学者もWeb調査を用いるようになってきている。その背景には、従来型社会調査において回収率が低下していることがある。低い回収率は多くの場合、得られた標本に歪みを生じさせる。一方、Web調査は必要な標本数を確保できるという利点を持っているが、標本の代表性は保証されない。このように、従来型社会調査とWeb調査はそれぞれ利点と問題点を有している。
またWeb調査の技術が発展するにつれて、質問紙調査では不可能だった柔軟でユーザー・フレンドリーな調査票設計ができるようになった。さらに、調査に付随するさまざまなコストも低減することができる。
本提言では、Web調査利用者およびWeb調査を実施している調査会社に対して、Web調査の問題点を踏まえつつ、その利点を生かして学術的調査に有効に活用するための提言を行う。

3 提言の内容

  • (1) Web調査の問題点を的確に理解した上での活用
     Web調査の利点を考慮するならば、無作為標本を用いないWeb調査は学術的に意味がないという単純な議論をすることはできない。むしろWeb調査利用者は本提言で論ずるWeb調査の問題点を的確に理解した上で活用すべきである。このために、総調査誤差の考え方を踏まえたうえで、Web調査の問題点を正確に理解し、解決可能な問題点は解決したうえで調査を行うべきである。また、インターネットのセキュリティに対する不安が高まる現代においては、Web調査に応じる人と慎重になって応じない人との間で生じる選択バイアスにも注意を払う必要がある。

  • (2) データ収集の幅の拡大
     Web調査はデータ収集の幅を拡大している。したがって、Web調査利用者は、Web調査の利点と問題点を十分に把握したうえで、従来型社会調査との相補的な役割分担を考え、データ収集の幅を広げるように努めるべきである。

  • (3) センシティブな質問の積極的活用
     従来型社会調査では質問することが困難だったセンシティブな質問(精神疾患や性的指向など)をWeb調査で行うことで、従来型社会調査で見落としていた知見を得ることができる。Web調査利用者は、この利点を積極的に活用すべきである。ただしその際には、個人情報保護に留意するとともに、質問の仕方においても回答者の特性に十分配慮することが必要である。

  • (4) 登録モニター情報の公開
     Web調査の問題点の1つは調査会社の登録モニターの特性(性別、年齢、居住地等の属性)の分布が明らかになっていないことである。このため、国勢調査等から得られる特性の分布と比較できず、登録モニターの分布を評価することができない。よりよいWeb調査を行うために、Web調査を実施している調査会社は個人情報保護に留意しつつ登録モニターに関する情報をWeb調査利用者に公開すべきである。





     提言全文はこちら(PDF形式:654KB)PDF
このページのトップへ

HOME日本学術会議とは提言・報告等一般公開イベント委員会の活動地区会議の活動国際活動会員・連携会員等協力学術研究団体▲ページトップ
このホームページについて
Copyright 2012 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN