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提言「低平地等の水災害激甚化に対応した適応策推進上の重要課題」のポイント

1 現状及び問題点

 気候変動の影響を受けて大規模な水災害が相次いでいる。特に令和元年の台風第19号では首都東京も危うかった。ゼロメートル地帯を抱える大都市、また低平地等は、豪雨などによる氾濫に対して極めて脆弱である。このため、「氾濫を防ぐための対策」と「氾濫を前提とした対策」のいずれもが強く求められている。
 大規模な氾濫は二次、三次の連鎖的な影響をもたらす。防災・減災対策には社会全体の連携や助け合いが必要となるが、連鎖的で広範な影響を伴う具体的なリスクを認識し共有していなければ実効は上がらない。また、顕在化していないリスクやリスクへの対応策を理解していなければ、「想定外」や「対処不能」といった事態を招く。このため、すでに発生した水災害に対処するとともに、幅広く「リスク認識の共有」に向けた社会全体の動きを加速することが喫緊の課題となっている。

2 提言の内容

  • (1) リスクの把握とリスク認識の共有

     すでに発生した水災害に関する徹底した分析と記録が重要である。氾濫による二次、三次影響はリスク認識を構成する本来の内容と考えるべきである。また、防災・減災対策による効果だけでなく、被災しなかった場合の余力の程度や復旧対策後も残留しているリスクなど、防災・減災対策とリスクとの関係について調査研究することも重要である。このため、自治体や国などの行政や研究者は、こうした分析、記録、調査研究に注力するべきである。
     また、気候変動による将来影響を予測することに加え、豪雨等と治水施設整備効果のそれぞれについて過去から現在に至るまでの変動状況を明確化した上で現在の相互関係を評価することがリスク認識の基礎となる。このため、国土交通省は、研究者の支援を受け、現在評価や将来予測を実施するべきである。
     広範な対象を含むリスク把握には実施体制の整備やデータベースの構築が不可欠である。このため、内閣府等が中心となり、関係省庁や自治体、研究者、産業界などを網羅した体制を整備し、リスク把握やデータベース構築を進めるべきである。
     リスク認識の共有には地域に根差した取り組みが基本となる。このため、各地域の大規模氾濫減災協議会などが中核的な役割を果たすことが強く望まれる。

  • (2) 海面上昇等による高潮氾濫リスクの現在評価と将来予測

     令和元年9月のIPCC特別報告は2050年には海面上昇によって高潮等の発生頻度が格段に増大すると指摘している。米国などでは地域ごとの海面上昇量を予測して対策検討を進めているが、我が国では未着手に近い状況にある。
     このため、国土交通省及び気象庁は、研究者の支援を受け、海面上昇と台風の凶暴化による高潮氾濫リスクの現在評価と将来予測について、早期に体制を整えるとともに本格的な調査研究に着手するべきである。

  • (3) 耐水性建築技術の確立

     水災害による建築物の損傷や機能喪失の程度は人の生死や被災後の復旧・復興に大きく影響する。米国では浸水を防ぐ建築技術と、浸水は許容するが復旧しやすい建築技術のそれぞれに関する耐水性建築の技術基準がすでに整備されているが、我が国では未着手に近い状況にある。
     このため、研究者及び技術者は、国土交通省や関連企業等の支援を受け、日本建築学会をかなめとして水災害に対処できる耐水性建築技術の確立に向けた研究を急ぐべきである。

  • (4) 大規模氾濫減災協議会における情報ハブ機能の強化

     大規模氾濫減災協議会は、すでに防災意識の向上や避難訓練など様々な取り組みを進めており、リスク認識の地域内共有を進める上で重要な組織体となっている。
     このため、各地域の大規模氾濫減災協議会は、当該地域内のリスクの把握や他地域への発信、他地域や全国的なリスク情報の地域内共有など、当該地域におけるリスク情報のハブとしての機能を強化することが強く望まれる。





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