日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です。

提言「子ども・妊婦への受動喫煙対策をさらに充実させるべきである」のポイント

1 背景

 2018年8月の健康増進法改正により、公共・非公共に関わらず、多くの人が利用する全ての施設において受動喫煙をなくすための取り組みが明確に示されることとなった。しかし、家庭内での受動喫煙に対する取り組みは具体的には示されていない。子ども(18歳未満)や妊婦の受動喫煙は、近年軽減傾向にあるものの、多くの人が利用する公共・非公共の施設のみならず、家庭内でも少なくないと考えられるが、その対策は必ずしも十分ではない。このため、子ども・妊婦の受動喫煙の問題を認識し、これを防止するための取り組みをさらに充実させる必要がある。

2 現状と問題点

 約250種類の有害物質を含むタバコの煙は、喫煙者の主流煙や副流煙として、環境汚染や受動喫煙の原因となっている。子どもの受動喫煙は、乳幼児突然死症候群、喘息の発症・重症化、呼吸機能低下、中耳疾患、う蝕(虫歯)、学童期の咳・痰・喘鳴・息切れとの関連が示されている。また、妊婦の受動喫煙は、子宮内胎児発育遅延,出生体重の減少(低出生体重児)、乳幼児突然死症候群との関連が示されている。
わが国の成人喫煙率は年々低下傾向にあるが、男女ともに子育て世代の年齢層で高いことが特徴である。タバコを消した後に家具の表面、喫煙者の衣服・毛髪等に長く残留するタバコ由来の化学物質を吸入する三次喫煙も含め、家庭内や家族で過ごす空間における受動喫煙を完全に防ぐためには保護者が禁煙することが強く求められる。しかしながら、保護者の喫煙がもたらす子どもの受動喫煙の危険性が広く認識されておらず、その対策は置き去りにされているのが現状である。したがって、子どもが生活する環境からタバコの煙を完全に排除し受動喫煙を防ぐためには、保護者や社会全体への教育啓発と家庭内での受動喫煙をなくす社会規範の醸成、それに繋がる小中学校における早期からの教育が重要である。また、妊婦の受動喫煙を防ぐためには、母子保健担当部署等の支援により妊婦健康診査をはじめ母子保健事業や医療現場など様々な場での妊婦や家族への啓発を義務化する等の組織的な取り組みが必要である。さらに日本では種々のメディアを活用した受動喫煙の危険性を啓発する活動(メディアキャンペーン)やタバコの危険性の警告表示の強化の遅れが、タバコ使用者の受動喫煙の認識やタバコ規制に対する意識の低さに現れていることが考えられる。したがって、受動喫煙を防ぐためには、健康教育や保健指導といった従来の方法にとどまらず、厚生労働省は、多様なメディアを活用したキャンペーンを実施することや、財政制度等審議会 たばこ事業等分科会に対して先進国において標準的なパーケージへの画像表示や注意文面の強化といった受動喫煙による健康影響の認識を高めるための取り組みを確実にするよう働きかけることが必要である。

3 提言(提言の対象となる所轄省等をカッコ内に示す。)

  • (1) 子どもの受動喫煙を防ぐために、家庭内を含めて子どもが生活する環境からタバコの煙を完全に排除するよう、保護者や社会全体への啓発が必要であり、小中学校における早期からの教育を強化する必要がある。(厚生労働省、文部科学省)

  • (2) 妊婦の受動喫煙を防止するために、妊婦健康診査をはじめ母子保健事業や医療現場など様々な場での妊婦や家族への啓発が必要であり、特に厚生労働省は妊婦健康診査の実施基準に受動喫煙に対する啓発を行うことを義務化するよう通知すべきである。(厚生労働省、日本医師会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会)

  • (3) 子ども・妊婦の受動喫煙を防止するためには、健康教育や保健指導といった方法にとどまらず、多様なメディアを用いたキャンペーンの実施や国際標準である画像を用いたタバコの警告表示の強化といった受動喫煙による健康影響の認識を高めるための取り組みや働きかけが必要である。(厚生労働省、財務省)





     提言全文はこちら(PDF形式:778KB)PDF
このページのトップへ

HOME日本学術会議とは提言・報告等一般公開イベント委員会の活動地区会議の活動国際活動会員・連携会員等協力学術研究団体▲ページトップ
このホームページについて
Copyright 2012 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN