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提言「歴史的思考力を育てる大学入試のあり方について」ポイント

1 現状及び問題点

 次期学習指導要領では、日本学術会議の「提言」を含むこの間の議論を踏まえ、歴史系科目について、「世界史」必修を廃止して近現代の「世界史」と「日本史」を総合した新科目「歴史総合」(2単位)を必履修科目とし、従来の選択科目「世界史B」『日本史B」(いずれも4単位)に代わって「世界史探究」「日本史探究」(同3単位)が設けられた。これには、暗記重視の知識詰め込み型から思考力重視の歴史教育への移行というねらいが込められている。

 一方、2020年度より大学入試センター試験にかわる大学入学共通テストが導入されることになっており、新科目の大学入試での位置付けは特に重要である。そこで、今回の高校歴史教育における改革を成功させるために、特に大学入学者選抜の歴史系科目に関する改善を提言し、合わせて大学入学共通テストにおけるマークシート式試験を念頭に、知識・技能と思考力・判断力・表現力をバランスよく問う出題例を提示する。

2 提言の内容

  1. (1) 入試科目
       歴史系の入試科目は「歴史総合・日本史探究」および「歴史総合・世界史探究」とすべきである。

     新しい必履修科目を大学入試の出題科目として、確実に高校生が必履修科目を学習するようにする。すなわち大学入学共通テストでは、地歴科の入試科目は、「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「地理総合・地理探究」とする。各大学の入試科目も同様に、必修科目を入試科目に取り入れる。「歴史総合」の入試問題の出題には、科目の趣旨を生かし、近現代の日本史と世界史を融合した内容だけでなく、歴史の学び方に関わる出題を心がける。また、中学校の歴史教育との接続を念頭に中学校までに学んだ内容を参照し出題することも妨げない。



  2. (2) 出題の際の配慮
       「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」ともに、大学入試の歴史系科目の出題に際しては、次のようなことを考慮すべきである。

     ① 基本的な歴史的知識(概念や時代像を含む)を問う問題と、多様な形式で歴史的思考力を測る問題をバランスよく配し、難易度の異なる問題を組み合わせるなどの配慮が望ましい。

     ② 教科書に掲載されている事実や史資料に関する知識だけを問うのではなく、既知の知識や考え方をもとに未知の史資料や課題を考えさせる問題を積極的に出題する。

     ③ 表・グラフや図像を含む多様な史資料を深く読み解く力を見る問題、また文脈に応じた判断の論拠や証明の方法の適切さを問う問題など、出題パターンを多様化する。そのために、アクティブラーニングの過程を問題文に利用することはもちろんだが、高校の教育課程全体で思考力・判断力・表現力を育てることに鑑みれば、教科・科目の枠を越えた内容の出題も試みられてよい。

     ④ 知識を問うバラバラな小問を並べるだけでなく、複数の問いを関連づける、全ての問題の正解が一つの問題だけではなく、複数の正解がある問題も配置するなど、解答形式にも工夫する。



  3. (3) 問題点の改善
       歴史教育改革を定着させうる効果的出題を続けてゆくために、大学入学共通テストでは、次のように従来のセンター試験の問題点を改善する。

     ① 出題に当たっては、必ずしも単年度の問題の中で完全に歴史上の地域や時代のバランスを取る必要はなく、数年単位でバランスが取れればよいものとする。

     ② すぐれた過去問や興味深い史資料は、一定年数経過後は若干のアレンジの上、再利用することを妨げない。

     ③ 各小問が完全に独立して解答可能でなくてもよい。また、別の設問、同時に実施される他教科・他科目の問題などが、解答の際にヒントになることを妨げない。



     提言全文はこちら(PDF形式:4,711KB)PDF
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