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報告「地名標準化の現状と課題」ポイント

1 現状及び問題点

  1. (1) 国内の地名

     国内の地名は自然地名のように国土地理院及び海上保安庁が現地調査によって確認し、あるいは地方公共団体の申請を受け調整・決定し、日本の地図及び海図に記載するものもあるが、大部分は事実上、各地方公共団体が歴史的地名として継承し、住居表示に関する法律(昭和37年5月10日法律第119号)の施行や市町村合併など行政区画の変動、更には地域計画・開発の実施に際し、これを変更し決定する。これに対し、総務省、国土交通省、文部科学省などは各々が独自に対応し、国としての統一的な対応はなされていない。地名は本来、国民全体の文化的歴史的共有財産であるにも関わらず、地方公共団体が個別に命名権を保持し、私企業が駅名や施設名など地名表記に関わる場合のガイドラインはない。地名表記は漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字など多様であるが、使用方法についての明確な基準を策定する機関を欠くため、教育・文化行政において地名表記が統一されておらず、教育現場にも影響を与えている。

  2. (2) 外国の地名

     日本では、外国地名は慣例を除き現地読みが原則であるが、現地の言語が当該国の公用語と異なる少数民族への対応は必ずしも適切になされていない。漢字使用国以外はカタカナあるいはラテン文字表記であるが、しばしば現地呼称ではなく英語表記をもとにカタカナ表記されることがあり、現地表記は貫徹されていない。中国地名は漢字・英語読みやカントン語読みやピンインの仮名書きが不統一である。外国地名は、外務省の読みを多くの機関が採用しているが標準化されているわけではなく、諸外国との交易に携わる私企業・ジャーナリズムや教育界などが用いるものも統一されているとは言い難い。

2 報告の内容

  1. (1) 地名標準化の必要性

     上記の問題点の原因は、日本でこれまで地名の標準化がなされてこなかったことにある。ここで「地名の標準化」とは「公的機関による地名の表現方法等についての規範の確立」を意味する。日本における地名の標準化のために、次のような方策を議論した。

  2. (2) 地名の統合管理

     日本国内の地名と日本で用いる外国地名を統合管理(命名・改名・呼名・表記に関する支援・指導・助言)し、各省庁並びに地方公共団体・民間などで地名を使用する際のガイドラインを作成し、地名改廃を見届け、地名表記と呼称の標準化への方向性をつけるための組織横断的な取り組みが必要である。特に、地方公共団体による現在の地名決定方式を検討し、文化的遺産・歴史的遺産としての地名の保存を図ることが望まれる。また、地方公共団体並びに各省庁と連携して、外国に対して日本の地名を周知し、国内地名について外国人観光客や外国書籍に向けた外国語表記の標準化を進め、外国語を用いた国内地名の評価・指導、場合によっては廃止など許認可を行い、対外的には外務省等の協力を得て地名ブランドの保護、外国との地名呼称問題などに総合的に対応するための有識者・専門家・研究者からなる組織が必要である。

  3. (3) 地名専門家の育成

     地理学・地図学・言語学・歴史学などの専門家や総務省(統計局を含む)・外務省・国土交通省(国土地理院・海上保安庁を含む)・文部科学省(文化庁を含む)などの関係省庁の協力を得て、地名の命名・廃止・改正に際しての地名の適切な運用に対して助言のできる専門家の育成が必要である。また、国内外における地名収集を進め、その呼称と表記を研究しうる人材の育成も必要である。

  4. (4) 国際的対応の強化

     国は関係機関と協力して、国連地名標準化会議(UNCSGN)関連の諸会議及びIGU/ICA共同地名研究委員会など地名に関わる国際的な学術団体に、多くの国々と同程度の数名の地名専門家を派遣し、世界の地名問題に対応する必要がある。特に国連地名専門家グループ(UNGEGN)への一定数の専門家の派遣が必要である。

  5. (5) 地名集(Gazetteer)の作成

     現存する100万分の1縮尺レベルの地図上に表記されている地名集では歴史地名、文化的地名、更には災害にかかわる地名などは扱われていない。これらを含めたデータベースを日本でも作成する必要がある。国内で使用される地名を標準化し、国外に対しては日本の地名の呼称・表記のガイドラインを提示して、国際的な地名に関する動向(地名の売買の抑制や文化財としての地名保護など)に対応することが必要である。



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