代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称

    (和文)第35回国際生物科学連合(IUBS)総会

    (英文)35th International Union of Biological Sciences (IUBS) General Assembly

  2. 会 期
    2026年6月9日から2026年6月13日まで(5日間)
    (総会に先立ち、6月4日から6月8日までIUBS企画ワークショップ開催)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:対面会議(一部参加者はオンライン)
    2. 会議の開催周期:3年ごと
    3. 会議開催地、会議場:ベンガル―ル・インド、JN Tata Auditorium、IISc Bengaluru
    4. 会議開催母体機関:国際連合教育科学文化機関(UNESCO)・国際学術会議(ISC)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:
      開催機関:Indian Institute of Sciences, Bengaluru インド科学アカデミー傘下の研究組織
      主催機関:International Union of Biological Sciences (IUBS) UNESCO・ISC傘下の科学連合
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
      参加国・数:26か国・地域(インド、日本、スリランカ、バングラデシュ、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、ロシア、スウェーデン、ノルウェー、スイス、ベルギー、スペイン、中国、台湾、モンゴル、オーストラリア、パプア・ニューギニア、エジプト、ウガンダ、ケニア、南アフリカ、ペルー、チリ)下線は加盟国・地域(モンゴルとバングラデシュは副加盟国)
      参加者数:約350名(日本から3名、1名はオンライン参加)
      日本からの参加者:
      1.西田治文・中央大学名誉教授・日本学術会議派遣国代表(筆者)
      2.村上哲明・兵庫県立人と自然の博物館館長・IUBS役員
      3. 川北篤・東京大学大学院理学系研究科附属植物園教授・IUBS次期役員
    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
      会期 :2029年9月頃
      開催地:チリ
      準備組織:チリ生物学会及び科学アカデミー
      主なテーマ:テーマは審議中
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:
      全体のスローガン:Biodiversity Forever Despite the Anthropocene
      日程と審議内容については添付ファイル(35th IUBS GA Agenda.pdf(https://www.iubsga2026.org/pdf/conference.pdf)、IUBS_schedule_website.pdf(https://www.iubsga2026.org/pdf/IUBS_schedule_website_old.pdf))を参照のこと。以下は概要。

      なお、総会に先立ちIUBS-INQUA(国際第四紀研究連合)-ISZS(国際動物学学会)-IOP(国際古植物学機構)合同の若手科学者奨励ワークショップ“How Palaeontological Proxies can inform us about Climate Change Impacts on Biodiversity”(https://iubs.org/iubs-activities-2/iubs-collaborative-projects/joint-project-iubs-inqua-iszs/) が5日間(6/4−8)にわたって開催された。筆者は開催組織委員であるため、この日程も含め派遣参加した。概要は後述する。
    2. 提出論文:
      (運営会議なので該当せず)
    3. 学術的内容に関する事項:
       今回のメインスローガン「Biodiversity Forever Despite the Anthropocene(人新世とはいうが生物多様性は永遠)」が主張するように、ヒトはその存在と主体性を標榜する前提として、自然界を支える生物多様性の重要性を主体的に意識しなければならないのが現実である。IUBSは医薬分野以外の基礎的な生物学を総合して世界に研究分野の重要性と貢献を訴え、時代に即した研究と教育について方向づける役割を担ってきた。しかし、現在の国内外政治経済界は、依然として人類が直面している環境と生物多様性の危機的状況を的確に把握し、改善に向けて協調的に努力しているとはいえない。それどころか、負の方向に動きつつさえある。IUBSは特に生物多様性と生態系の持続性と自然資源の好ましい利用に焦点をあて、目的にかなう学術と教育への支援をさらに継続し、より広範な国際協力体制の構築をめざすことで合意している。また、活動においては若手支援、ジェンダー平等という基本理念も重視されている。
       現在の世界情勢と環境を鑑みれば、IUBSの重要性について支持こそすれ、否定する要因はないはずであるが、実際の加盟国数はわずか21で斬減を続けている。加盟国増加は最大の課題の一つで、日本は外交的にもIUBSの拡大を提言すべきであろう。
    4. その他の特記事項:
       日本は最大の分担金支出国として、IUBSに貢献している。このことは、日本が平和国家としての姿勢を科学において先頭に立ち、貫いてきた大きな成果で、国際的に高く評価されるとともに、自ら誇るべきことである。これまで3名の会長を含め、役員が継続して選任されていることも日本に対する期待の現れである。
       IUBSの理念と活動計画は、人類社会において永続的に継承されるべきものであり、本総会においても特に新たな声明は発出していない。活動目標に沿って審査された今後3年間の学術プログラム支援や、IPBES(Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)、CBD COP(Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity:生物多様性条約締約国会議)など協力団体との協働を継続することも確認された。
       IUBSの国内外における活動は、IUBS自体のホームページや学術誌などでコメントされる以外は、ほとんど報道されていないのは残念である。国内の受入団体は学術会議で、IUBS分科会や関連学会の活動も含め、IUBSに対する報道機関の興味を積極的に引き出す努力が十分できずにいるのが現状である。活動に関わる研究者の時間的制約と人的支援体制の不足が大きな要因の一つである。
       次回総会は南米大陸では初めて、チリで開催される。南米を含めた南半球は、生物多様性の独自性と地球環境の維持に果たす生態学的役割が無視できないにも関わらず、国際的な問題共有と議論が進まずにいる。チリ開催を契機に、ブラジルやアルゼンチンなど南米の未加盟国が積極的に参画することが望まれる。

所見

前回の東京大会は、限られた予算と人員のなかで開催されたが、運営と成果は高く評価された。インドでの総会は50年前に今回と同じベンガルールで開催されている。総会の規模と内容は各開催国の学術と経済状況によって異なり、今回の大会ではインドの生物科学が広範な多様性と成果基盤を有していることを改めて認識できるものであった。会場のあるIISc(インド科学研究所)は緑あふれる広大な敷地に無数の理学系研究施設が点在し、複数のゲストハウスも有した国際的な研究組織であった。この点では、残念ながら日本の国力が及ばぬものと認めざるを得ない。会議運営のスポンサーも複数あり、資金も潤沢であった。
 総会はIUBSの慣習に従って必要な運営が滞りなく行われ、決議事項も大きな問題もなく採択された。過去3年間に実施された科学プロジェクトの成果発表も行われた。また、通常は開催地ごとに独自の公開シンポジウムやワークショップが開催される。本大会では、教師や学生向けの教育能力開発シンポジウムが開催され、インド国内各地から多くの参加者があった。
 会議に先立って開催された若手支援シンポジウムは実行委員を含め、12か国から約80名の参加があった。欧米に加えモンゴル、ナミビア、タンザニア、アルゼンチン、コロンビアなど開発諸国から若手が招聘され活発な意見交換が行われたことは大きな成果であった。結果を集約して、いくつかの将来研究計画グループが誕生し、学術雑誌への意見掲載も予定されている。日本でも参加者を募集したにも関わらず、応募がなかったのは残念であった。