代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)気候と海洋-変動・予測可能性・変化研究計画(CLIVAR)全体会合
    (英文)Pan-CLIVAR meeting
  2. 会 期
    2025年9月22日から2025年9月26日まで(5日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:科学運営委員会、パネル会合、研究焦点会合、シンポジウムを組み合わせて実施
    2. 会議の開催周期:不定期。前回は2014年にハーグ(オランダ)で開催。
    3. 会議開催地、会議場:バリ・インドネシア、ビンタンバリリゾート
    4. 会議開催母体機関:
      気候と海洋-変動・予測可能性・変化研究計画(Climate and Ocean – Variability, Predictability, and Change 略称:CLIVAR)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:
      CLIVARは、世界気候研究計画(World Climate Research Programme)の6つのコア・プロジェクトの一つであり、30年の歴史を持つ。日本学術会議は、CLIVAR小委員会を、環境学委員会・地球惑星科学委員会合同 FE・WCRP合同分科会の下に設置している。
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
      現地参加者は150名以上であり、参加国は35か国あったことがCLIVARのホームページ(Pan-CLIVAR Meeting 2025 - Sciencesconf.org)で報告されている。プログラムに記載された発表は181件であり、パネル会合等のみに参加して研究発表を行っていない研究者もいることから、参加者総数は200名を超えたであろう。参加国には、米国、カナダ、中国、韓国、日本、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ノルウェー、インド、インドネシア、シンガポール、ブラジル、南アフリカ、ブルネイ等があることを確認した。日本からの主な参加者は以下の通りである。
      見延 庄士郎:北海道大学・教授(日本学術会議連携会員、CLIVAR小委員会委員)、日本学術会議代表派遣
      安中 さやか:東北大学・教授(日本学術会議・CLIVAR小委員会委員)、東北大学
      浦川 省吾:気象庁気象研究所・主任研究官(同上)、気象研究所
      木戸 晶一郎:国立研究開発法人海洋研究開発機構・研究員(同上)、海洋研究開発機構
      Ingo Richter:国立研究開発法人海洋研究開発機構・グループリーダー代理(同上)、海洋研究開発機構
    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
      CLIVAR全体会合自体の次回開催は未定であるが、より大規模な会合であるCLIVAR科学研究会合(CLIVAR Open Science Conference)を2027年または2028年に開催することが議論された。開催地は、CLIVARの事務局がある青島(中国)が提案された。Open Science Conference は、CLIVARに関連する研究発表を広く募集するものであり、CLIVARに所属して活動する研究者以外の参加発表も奨励される。前回のCLIVAR Open Science Conferenceは、2016年に青島で開催された。
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:
      9月22日:CLIVAR科学運営委員会(委員のみの会合)
      9月23日:歓迎挨拶、CLIVAR科学運営委員会、CLIVARパネル会合

      9月24日:CLIVARシンポジウム第一日。セッションとして大気プロセスと気候力学、海洋気候観測とモデリング、海洋地球科学プロセスと気候との相互作用、人口知能、複合イベント、社会影響が開催された。

      9月25日:CLIVARシンポジウム第二日。セッションとして、気候変動と気候変化、海洋プロセスと極端現象、社会影響が開催された。また、3つのブレークアウトセッション(分かれて議論を行い後に全体に報告する)として、気候と大気プロセスと社会影響、海洋のプロセス・モデリング・観測・生物地球化学、インド太平洋の海洋・気候・連関、が開催された。また、それ以外に海洋熱波研究焦点(研究焦点は年限が限定される集中的な研究取り組み)および、若手研究者会合が開かれた。

      9月26日:closing session およびCLIVAR科学運営委員会が開催された。
    2. 提出論文:
      日本の研究機関に所属する研究者の発表は以下の通りである。

      見延 庄士郎:Explaining and Predicting Earth System Change (EPESC WCRP Lighthouse Activity)「地球システム変動の解明と予測(EPESC:WCRP 灯台活動)」

      見延 庄士郎:Global and Regional Drivers for Exceptional Climate Extremes in 2023-2024: Beyond the New Normal「2023–2024年における異常な気候極端現象をもたらした地球規模および地域要因:〈新常態〉の先へ」

      木戸 晶一郎:Emulating GCM Experiments with reduced -complexity models: Insights into tropical interbasin interactions「単純化モデルによる GCM 実験のエミュレーション:熱帯域における海盆間相互作用への示唆」

      浦川 省吾:A new ocean regional projection dataset with 10 km resolution for the North Pacific d4PDFv2-Ocean and its application to coastal downscale modeling around Japan「北太平洋を対象とした10 km 解像度の新しい海洋領域予測データセット d4PDFv2-Oceanと、それを用いた日本周辺沿岸域のダウンスケールモデリングへの応用」

      Richter Ingo:Introducing TBIMIP: The Tropical Basin Interaction Model Intercomparison Project「熱帯海盆相互作用モデル相互比較プロジェクト(TBIMIP)の紹介」


      海外の研究機関に所属する研究者より、176件の発表が行われた。そのうち、CLIVARシンポジウムでの発表は119件である。
    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等):
      気候変動・変化の重要性が増す中で、CLIVAR及びその親組織である「世界気候研究計画」(WCRP)の重要性はますます高まっている。本会議では、その重要性の高まりと呼応する多くの研究発表が行われた。シンポジウムでは、「科学と社会を結ぶ」ことをテーマに、特に東南アジアおよびインド太平洋地域の研究者・関係者の参画を強く意識した。また、会議の目的として、現在の2018–2028年のCLIVARサイエンス・プランを振り返りつつ、次の10年に向けた新たな科学計画および実装戦略の立案開始、常設のパネルのさらなる発展や期間限定の集中的な取り組みである研究焦点(Research Focus)新設、そしてWCRPや地域機関との協調強化が掲げられた。筆者は前回2014年のCLIVAR全体会合にも出席したが、前回と比べて今回は、極端気候現象に関連する研究が盛んであった。また、人口知能あるいは機械学習を気候科学に活かすための取り組みにも注目が集まった。さらに、従来CLIVARは物理気候にほぼ限定して研究を推進してきたが、二酸化炭素循環や海洋脱酸素化といった海洋地球化学の重要性も強調された。
    4. その他の特記事項:
      日本からの参加者は、筆者が科学運営委員会、安中(東北大学)が太平洋パネル、木戸(国立研究開発法人海洋研究開発機構)がインド洋パネル、浦川(気象庁気象研究所)が海洋モデル開発パネル、Richter(国立研究開発法人海洋研究開発機構)が熱帯海盆相互作用研究焦点に参加して、それぞれの委員会で活発に議論を行った。特にRichterは熱帯海盆相互作用研究焦点の共同議長の一人として、同研究焦点の活動の紹介をした。また、筆者はCLIVARの親委員会であるWCRPの灯台活動の紹介も行った。

所見

この会合は、CLIVAR の創立 30周年を記念する国際会議であり、現在の科学研究プラン(2018-2028年)を振り返りつつ、次の10年の新たな科学研究プランを議論の開始ともなる重要な会合であった。日本の研究者は様々なCLIVARのパネル、研究焦点で活動しており、CLIVARは我が国の学術の国際的な発展にも重要なプロジェクトである。そのCLIVARの最高意思決定機関であるCLIVAR科学運営委員会の委員に、日本から10年以上選出されていなかったが、筆者が2024年から同委員を務めている。今回、筆者が学術会議代表派遣によって参加できたことは、CLIVARにおける日本のプレゼンスを高める上で重要であった。


CLIVAR科学運営委員会会合、右から3番目が筆者
CLIVAR科学運営委員会会合、右から3番目が筆者