代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会(IAGA)執行役員会及び各国代表者会議
    (英文)IAGA 2025 Executive Committee Meeting and Congress of Delegates
  2. 会 期
    2025年8月31日から2025年9月5日まで(6日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:対面(ビジネス会議、口頭発表、ポスター発表)
    2. 会議の開催周期:2年に1度
    3. 会議開催地、会議場:ポルトガル・リスボン、リスボン工科大学(Instituto Superior de Engenharia de Lisboa(ISEL))
    4. 会議開催母体機関:国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会 (IAGA)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:リスボン工科大学(ISEL)、IAGA関連学術機関
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
      参加国:ポルトガル、イタリア、フランス、ドイツ、英国、米国、日本、中国、韓国など
      参加者数:約600人
      主な日本からの参加者:
      能勢正仁(筆者)・名古屋市立大学データサイエンス学部教授
      塩川和夫・名古屋大学宇宙地球環境研究所所長
      石井守・名古屋大学宇宙地球環境研究所特任教
      松岡彩子・京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター長/教授
      山本和弘・名古屋大学宇宙地球環境研究所特任助教
      尾花由紀・九州大学 宇宙惑星環境科学国際研究センター研究員
    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
      会期:2027年7月16日~22日
      開催地:韓国・仁川
      準備組織:国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会 (IAGA)
      主なテーマ:超高層物理学・地球電磁気学
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:
      2025年8月31日~9月5日、超高層物理学・地球電磁気学分野の最先端研究成果の発表や将来構想
    2. 提出論文:
      400件以上の発表が行われた。プログラムは、https://iaga-iaspei-2025.org/に掲載されている。
    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等)
      ・宇宙天気研究の重要性および予測結果の精緻化

      ・地磁気観測の重要性、地球磁場モデルを作成するための基礎データとなる衛星磁場観測の必要性オーロラ、放射線粒子、プラズマ波動に関わる多数の研究成果発表

      ・1900年頃まで遡る過去の記録の保管、デジタル化

    4. その他の特記事項
      ・地磁気観測の重要性やその継続に関する決議(Resolution)が採択された。
      ・IAGAのExecutive Committee(執行委員会)に日本人として筆者が参加している(2027年まで)。

      ・IAGAのDivision(部会)においては、浅利晴紀(京都大学)、松岡彩子(京都大学)、馬場聖至(東京大学)、山本和弘(名古屋大学)、尾花由紀(九州大学)らが部会長・部会副会長として参加している。

      ・会議に先駆けて行われた、大学院生、若手研究者向けのサマースクールには、日本から4名の大学院生が招聘参加した。

所見

採択決議にあるように、地球電磁気学の基礎となる地磁気観測についてその重要性や長期データ観測及びその保管の意義が改めて認識された。これまで欧州が主導してきた人工衛星による精密磁場観測分野に中国がMSS-1衛星の運用によって進出しつつあり、将来的にMSS-2衛星も計画していることが発表された。 長期的な基礎科学への取組や国際的学術への貢献が、こうした国際学術会議でプレゼンスを保つために必要であると痛感する。現状では、執行委員会や部会には中国からの研究者はほぼ見かけないが、これは過去の日本の実績が評価されているだけで、今後は、基礎科学への我が国の取組みや日本人参加者の国際会議での(特にビジネス会議における)英語力に大鉈を入れないと、現在の地位はかなり危うい状況だと考える。速報値によると、今回のIAGA会議への日本人参加者は93名だが、中国人参加者は97名。
 執行委員会においては、科学学術会議では国籍による差別は行わないが、ウクライナからも参加できるような費用援助や必要な対応に関する意見交換があった。