代表派遣会議出席報告
会議概要
- 名 称
(和文)国際宗教学宗教史学会(IAHR)理事会及び第23回世界会議
(英文)International Association for the History of Religions (Executive Committee Meeting, International Committee Meeting, 23rd Quinquennial World Congress) - 会 期
2025年8月24日から2025年8月30日まで(21日~23日は事前打合せ) - 会議概要
- 会議の形式:役員会、理事会、学術大会
- 会議の開催周期:役員会は1年に複数回(対面は1回)、理事会は2~3年に1回、学術大会は5年に1回
- 会議開催地、会議場:ポーランド・クラクフ、ヤギェウォ大学
- 会議開催母体機関:国際宗教学宗教史学会(International Association for the History of Religions, IAHR)
- 会議開催主催機関及びその性格:
国際宗教学宗教史学会(IAHR)、第23回世界会議組織委員会大会を主催するヤギェウォ大学所属研究者から構成 - 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
参加国・数:ドイツ、ポーランド、日本、米国、スウェーデン、インド等約80か国
参加者数:約1,300人うち日本からの参加者約100人
主な日本からの参加者:藤原聖子・東京大学大学院人文社会系研究科教授・日本学術会議(役員として参加) - 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
会期・開催地:役員会は2026年にラオスで開催予定
会期・開催地:第24回世界会議は2030年に開催予定
- 会議の学術的内容
- 日程と主な議題:
8月24日
役員会(Outgoing Executive Committee Meeting)
・会長報告
・事務局長報告
・会計報告
・会則変更案の検討
・IAHRアーカイブ利用規約案の検討
・名誉会員推薦委員の選出
・次期役員会への申し送り事項の検討
8月27日
理事会(International Committee Meeting)
・事務局長報告
・会計報告
・各種委員報告
・会則変更案に関する審議
・次期役員の選挙
・新規加入申請学会の検討
・新名誉会員の選出
8月29日
役員会(Incoming Executive Committee Meeting)
・会長挨拶
・新役員の紹介
・IAHRと役員会の活動内容の説明
・旧役員会からの申し送り事項の検討
・予算案の検討と承認
・ワーキンググループの設置
・次期役員会の開催地・時期の検討
8月30日
総会(General Assembly)
・事務局長報告
・会計報告
・新規加入学会の承認
・会則変更案に関する審議と採決
・名誉会員称号の授与
・役員選挙結果の報告
・役員交代
・新会長挨拶
・新事務局長挨拶 - 提出論文:
基調講演:
Anna Niedźwiedź:Moving, dialoguing, transforming: ethnographic experiences and anthropologies of religion(s)
Aaron Hughes:The Boomerang Effect. Judaism and Islam, Made in Europe, Out of Europe, and Back Again
Dimitris Xygalatas:The future of ritual. Embodiment, praxis, and meaning in an increasingly virtual world
Vineeta Sinha:Theorising Religion in Entangled Worlds. Insights from Diaspora Hinduism
Philippe Borgeaud: Provoking the “Beyond”. Ritual play in a comparative approach
日本人による提出論文は約100本 - 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等)
大会テーマ “Out of Europe: Studying Religion(s) in Interconnected Worlds”の趣旨は、(一般的な学説史に従えば)近代ヨーロッパに生まれ各地域に広がったとされる宗教学が、実際には各地域が相互に関係し合いながら展開した歴史的経緯を新たに掘り起こすとともに、ますます緊密に影響し合い課題を共有する現代世界において、各国・地域の宗教学者はどのような学術的協働を行いうるかを討議することであった。
研究発表(提出論文)に関しては、本学会の伝統である古典的テキストを対象とする文献学的研究、現代社会の課題に学術的に取り組む研究、儀礼などの人類学的テーマに認知科学等に基づく実験的方法を適用する研究などがバランスよく配されていた。 - その他の特記事項
本学会の役員会は5年に1回、世界会議時に改選される。今回の選挙により報告者は会長に選出されたが、ヨーロッパ人(西欧人)以外が会長に就いたのは初めてである。これは本学会の方針に大きな影響をもたらしうる変化であり、またそれを加盟学会の多くが期待したことによる選挙結果であったと言える。本学会は1950年に発足したが(世界会議の開催は1900年にまで遡る)、日本宗教学会はその時から加盟しており、1958年、2005年に世界会議を主催した。この歴史に照らしても、初の非・ヨーロッパ人会長が日本から選ばれたというのは、会員の多くが納得したことだった。しかし、その道は決して平坦ではなく、本学会が学術的方針をめぐって対立する度に、日本の研究者はその狭間に立ち困難な判断を強いられてきた。だがその経験は、対立する勢力の両方の立場を理解し、その間を調停する能力を培うことにも繋がった。重要なのは、学会内の意見の相違を単純な二項対立に落とし込み、分断を引き起こすのではなく、多様性として生かし、学術の進展に結び付けることである。その必要性を認識し、そのための具体的な方策を立てることを、報告者は日本人会長の役割・責任と考え、就任挨拶ではそのことを “critical inclusivity”と名付けた。意見の相違を隠蔽する包摂ではなく、相違点を認識し、掘り下げ、その上で学術の総体としての発展を図るという目標をその表現に込めた。
- 日程と主な議題:
所見
本学会の世界会議は5年に1回開催され、前回(2020年のオタゴ大会はコロナのため中止となったため、2015年のエアフルト大会が該当)と地理的に近い場所での開催となったが、参加国が60か国から80か国に増加し、アフリカやアジアからの参加者の割合が高まった。若手・院生・女性研究者の参加も増加傾向にあり、よりインクルーシブな大会を実現できた。