代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)国際栄養学会議(ICN)総会
    (英文)International Congress of Nutrition of IUNS
  2. 会 期
    2025年8月24日から2025年8月29日まで(6日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:対面
    2. 会議の開催周期:定期(4年に1回)
    3. 会議開催地、会議場:フランス、パリ、Palais des Congrès de Paris
    4. 会議開催母体機関:国際栄養科学連合(International Union of Nutritional Sciences (IUNS))
    5. 会議開催主催機関及びその性格:
      フランス栄養学会(French Society of Nutrition (SFN))、フランス栄養連盟(French Federation of Nutrition (FFN))、欧州栄養学会連盟(Federation of European Nutrition Societies (FENS))、国際栄養科学連合 (IUNS)
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
      参加国・数:フランス、スペイン、ガーナ、インド、日本等117か国。
      参加者数:3,835人
      日本人参加者数:ポスター86演題、シンポジウム講演18演題
      主な日本からの参加者:竹中麻子(明治大学農学部農芸化学科教授・日本学術会議)(筆者)
    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
      会期:2029年9月22〜28日
      開催地:バンクーバー、カナダ
      準備組織:Canadian Nutrition Society
      主なテーマ:Sharing the Future of Nutrition in a Changing World
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:
      8月24日:参加登録開始、開会式
      8月25日:シンポジウム、プレナリーレクチャー、eポスター、アブストラクトプレゼンテーション、スペシャルレクチャー、ランチョンセミナー、総会(1回目)
      8月26日:シンポジウム、プレナリーレクチャー、eポスター、アブストラクトプレゼンテーション、スペシャルレクチャー、ランチョンセミナー
      8月27日:シンポジウム、プレナリーレクチャー、eポスター、アブストラクトプレゼンテーション、スペシャルレクチャー、ランチョンセミナー、総会(2回目)
      8月28日:シンポジウム、プレナリーレクチャー、eポスター、アブストラクトプレゼンテーション、スペシャルレクチャー、ランチョンセミナー
      8月29日:シンポジウム、eポスター、アブストラクトプレゼンテーション、閉会式
    2. 提出論文:
      ・日本からポスター86演題(全1,493件)、シンポジウム公演18演題(全155シンポジウム)の発表があった。
      ・日本からのシンポジウム公演が3件あり、シンポジウムタイトルは、「Emerging trends in Nutrition and Food Research in Japan following the 22nd IUNS-International Congress of Nutrition (ICN) in Tokyo」(8月25日開催)、「Cutting-edge nutritional research by promising young Japanese researchers」(8月26日開催)、「Development and application of new nutrient profile models to lead healthier diet for all-Japan’s proposal to the world on creation of a healthy and sustainable food environment」(8月27日開催)であった。
    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等)
       世界では、人口増大等による栄養欠乏と過剰な栄養摂取を背景とした疾患という、相反する2つの栄養問題の拡大が大きな課題となっている。さらにこれらが同一のコミュニティーに共存する「二重負荷」が各国家の負担となっている。IUNS は様々なタスクフォースや提言等を通じて各国におけるこれらの問題の解決・改善に寄与している。近年は、WHO(世界保健機関)や FAO(国際連合食糧農業機関)との連携が進んでおり、栄養関連政策の形成に科学的根拠を提供し、食糧・栄養問題や政策提言において大きな影響力をもっている。特に「SDGs(持続可能な開発目標)と栄養の関係性」について国際的な発信を継続している。

    4. その他の特記事項
      ・2025年度の各章の表彰において、日本からIUNS Fellowに2名(宮澤陽夫氏、加藤久典氏)、Living Legend賞に1名(香川靖雄氏)の受賞があった。
      ・次期IUNS Councilの選挙が行われ、投票にはAdhering Bodyとして日本も参加した。President Hyun-Sook Kim氏(韓国)、President-ElectにJacques Delarue氏(France)、Vice President Francis Zotor氏(Ghana)、Secretary GeneralにEdith Feskens氏(The Netherlands)、TreasurにWelma Stonehouse氏(Australia)が選出された。Council memberにはRidwan Hardinsyah氏(Indonesia)、Gladys Morales氏(Chile)、Amos Laar氏(Ghana)、Ngozi Nnam氏(Nigeria)、Philip Calder氏(UK)、Zhaoping Li氏(USA)が選出された。
      ・次回開催国の選挙が、カナダ、オーストラリア、ガーナの3か国の立候補のもとで行われた。Adhering Body(加盟団体)として日本も参加した投票の結果、カナダが次回開催国に決定した。

所見

「Sustainable Food for Global Health」というタイトルのもとに開催された本会議は、パリ市内の交通の便の良い会場で開催され、近隣には宿泊施設や食事ができる場所も多く、運営は概ねスムーズであった。
 各講演会場の大きさ、会議場(Palais des Congrès de Paris)内の会場の配置はいずれも適切だった。各講演会場では連日熱心な議論が行われた。ポスターセッションはeポスターが会議の会期中終始公開されており、多くの人が閲覧できるように十分な数のブースが用意されていた。常にブースでポスターを閲覧している人がおり、興味あるポスター発表を逃さずに見られるという点にメリットがあった。
 一方、ポスター発表者との直接のディスカッションは行えず、この点には課題があると感じた。主催者はこの課題に対する対策として、数多くのAbstract Presentationを用意し、口頭でのディスカッションの機会を確保したとのことであった。実際に、5日間で約120のAbstract Presentationのセッションが行われていた。
 講演には、会議のタイトルである「Sustainable Food for Global Health」に関するものが多くあり、多くの聴衆を集めて活発な議論が行われていた。「人類全体が健康でいられる食を、地球環境と社会の持続可能性を両立させながら実現することを目指す」という考え方が、世界の栄養学が目指す方向性として広く支持されている印象であった。
 日本からの演題登録は、ポスター発表に比べて、シンポジウム講演者が少なかった。今後、日本からの参加者によるシンポジウム講演がさらに多くなることが望まれる

会議会場外観 シンポジウム会場
Fellow発表 Living legends発表