代表派遣会議出席報告
会議概要
- 名 称
(和文)第32回国際地図学会議(ICC)シンポジウム
(英文)32nd International Cartographic Conference(ICC)Symposium - 会 期
2025年8月17日から2025年8月22日まで(6日間)
会議ホームページ:https://icc2025.com/ - 会議概要
- 会議の形式:基調講演、研究発表、ワークショップ、ポスターセッション、地図展その他
- 会議の開催周期:隔年開催
- 会議開催地、会議場:カナダ・バンクーバー、Vancouver Convention Centre, East Building
- 会議開催母体機関:国際地図学協会(International Cartographic Association, ICA)
- 会議開催主催機関及びその性格:
国際地図学協会(ICA)は地図学及び地理情報科学の学問分野と専門研究者の発展を国際的な文脈で推進する国際機関であり、世界の専門家が一堂に会して同分野の様々なテーマを議論する場として 隔年で国際地図学会議を開催している。 - 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関):
世界の60を超える国々から約750人が参加。日本からは日本学術会議地球惑星科学委員会IGU分科会ICA小委員会の委員長、副委員長、幹事、委員をはじめとする代表者が参加。研究委員会委員長(Chair of the Commission on Ubiquitous Mapping)として石川徹(東洋大学情報連携学部教授、日本学術会議から派遣。筆者)がワークショップの主催および研究委員会運営会議開催のため参加。 - 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):2027年開催予定
- 会議の学術的内容
- 日程と主な議題:
8月17日に研究委員会(コミッション)主催のワークショップ、18日から22日にメインの本会議(ICA総会)を開催。今回の会議は "Mapping the Future: Innovation, Inclusion, and Sustainability" を全体テーマとして、地図学における様々な見方を統合し地球規模の課題(グローバルチャレンジ)への取り組みにとって重要である先進的かつアクセシブルな地図を実現することを目指して、基調講演や研究発表セッションを通して議論が行われた。 - 提出論文:
会議期間中それぞれの研究発表セッションで日本人を含めた参加者の研究発表が行われた。また石川 徹(東洋大学)がArmand Kapaj(チューリッヒ大学)とともに委員長を務める研究委員会(Commission on Ubiquitous Mapping)がワークショップ "Spatial Representations and Thinking in Navigation: A Cognitive Perspective" を主催し、スイス、フランス、イタリア、米国の専門研究者とともに筆者が "Mapping and Navigation in the Environment: How We Know Where We Are"と題して講演を行った。その他、地図展への出展も行われた。 - 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等)
今回の会議では気候変動、デジタルアース、地理情報視覚化、オープンデータ、先住民と地図、人工知能(AI)に関する基調講演が行われ、会議の全体テーマである地球規模の課題解決やSDGsを意識した議論が多く見られた。また、従来からの国際地図学会議のトピックである地図学の歴史、地図学と技術、地図デザイン、地図投影法、地図教育、ビジュアライゼーション、地理空間データ解析、オントロジー、位置情報システム、ジオAI、ユーザーエクスペリエンス、インクルーシブデザイン、デジタルトランスフォーメーション、地図学と倫理などに関する研究発表やワークショップも活発に行われた。最近の情報技術の発展が可能にする最新の地図を国際的かつ多角的な視点で応用することが今後の重要課題としてあげられる。 - その他の特記事項
日本からの参加者による各セッションで研究発表、地図展への出展、また日本人が委員長を務める研究委員会の主催によるワークショップの開催など、日本からの貢献も大きかった。次回開催についての詳細は追って公表される予定。
- 日程と主な議題:
所見
地図学および地理情報科学の様々なテーマに関して基調講演、ワークショップ、研究発表、地図展などを通して国際的な視点から多様な議論がなされ、情報技術の進展、気候変動など地球規模の課題、持続可能性、先住民と地理情報、オープンデータとインクルーシブデザインなどの諸問題との関連で地図学を応用発展させていくことの重要性が強調された会議であった。また、今回派遣者が主催して開催した研究委員会ワークショップでは、空間ナビゲーションの文脈で地理学、地図学、心理学、教育学、文化人類学という学際的な視点からの講演と質疑応答を行った。地図および地理情報ツールの開発に際しては、ユーザーエクスペリエンスおよびユニバーサルデザインという情報科学的な概念を意識した認知行動学的な見方が重要な意味をもつことを強調し、ワークショップ参加者との活発な議論も行われ、地図学および地理情報科学の理論と応用に関する新たな視点を提供できたと考えている。当分科会小委員会の今後の活動にもこれらの成果を活かすことが望まれる。
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| ICC2025会場写真-1 |
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| ICC2025会場写真-2 |

