代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称
    (和文)国際科学史技術史科学基礎論学会連合/科学史技術史部門(IUHPST/DHST)評議会及び総会
    (英文)International Union of History of Science and Technology (IUHPST)/Division of History of Science and Technology (DHST)・Council meeting and General Assembly meeting
  2. 会 期
    2025年6月29日から2025年7月5日まで(7日間)
  3. 会議概要
    1. 会議の形式:ハイブリッド形式による総会並びに評議員会
    2. 会議の開催周期:総会は4年ごとに1回。臨時総会は適宜随時。
      評議員会は毎年12月に必ず1回開催され、他に数回適宜開催される。また、4年に1回の国際大会・総会に合わせ、その前後に2回開催される。
    3. 会議開催地、会議場:ニュージーランド・ダニーデン、オタゴ大学
    4. 会議開催母体機関:国際科学史技術史科学技術基礎論連合(IUHPST)国際科学史技術史部門(DHST)
    5. 会議開催主催機関及びその性格:
      同上、国際学術会議(ISC)傘下で科学史技術史関連の国際諸学会の統括組織
    6. 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
      6月29日に今期の評議員が出席し、第1回評議員会が開催された。
      7月3日と7月5日に総会が開催された。7月3日の総会終了後に今期と次期評議員が集まり、第2回評議員会が開催された。
      第1回評議員会:ブラジル・英国・日本・ベルギー・チェコ・ニュージーランド・中国・ロシア・アルゼンチンの9カ国、10人。
      日本人参加者は、橋本毅彦(東京大学名誉教授・日本学術会議連携会員、筆者)が第一副会長の役職身分で参加した。
      総会:上記評議員の所属国を含め、DHST加盟国の代表がオンラインで参加した。
      DHSTで投票権をもつ加盟国は36カ国あり、そのうち約30カ国からの代表がオンラインで総会に参加した。また、総会にはDHST傘下の国際学術団体の代表も参加し、総会の出席者は100人以上にのぼった。
      日本人参加者は、筆者が評議員として参加したほか、
      隠岐さや香(東京大学教授・日本学術会議連携会員)
      溝口元(立正大学教授・日本学術会議連携会員)
      奥田謙造(岐阜県立看護大学非常勤講師)
      杉本舞(関西大学教授・日本学術会議連携会員)
      が日本代表として参加して投票に関わった。
      第2回評議員会:ブラジル・英国・日本・ベルギー・チェコ・ニュージーランド・中国・ロシア・アルゼンチン・フランス・ポルトガル・エストニア・カナダ・米国・ギリシアの15カ国、19人。
      日本人参加者は上述の筆者と杉本教授である。
    7. 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
      次期評議員会は、2025年中には9月、12月にオンライン形式で開催する予定である。
      準備組織は国際科学史技術史部門(DHST)。9月の会議での主なテーマはRespectful Behavior Policyの活動のための具体的な組織、新設の通信広報を担当する役員(Secretary of Engagement)による各分科会(各分野の国際学会)との情報共有の強化と発信、日本等の分担金についての対応等である。
      12月の会議では各分科会の年次報告の確認と補助金額の確定が主たるテーマになる。
  4. 会議の学術的内容
    1. 日程と主な議題:
      6月29日開催の第一回の評議員会では、主として7月2日と5日にオンライン方式で開催される総会での報告や審議事項についての最終確認がなされた。その主な事項は、オンラインでの意思表明・電子投票の手続き、日本を含む分担金と投票権についての確認、廃止と新設の国際委員会の確認などである。
      7月2日・5日に開催された総会においては、上記の事項に加えて、次回2029年に開催される都市の選定、次期役員の選挙が電子投票によって決定された。次回開催都市については、フランス(パリ)に決定された。また新期の役員については、会長はポルトガルの物理学史研究者のアンナ・シモーエス氏が選任された。
      7月5日に総会終了後に開催された第二回の評議員会では、選挙結果を受けて、前期の評議員と新期の評議員による審議事項の引継ぎなどが行われた。
    2. 提出論文:
      評議員会であり事務的な事項が協議され、提出論文はなかった。
      これら評議員会・総会が開催された期間の国際科学史技術史会議では、世界各国から約950人の研究者が参加し、学術研究の成果が発表された。日本人からも筆者を含み、多くの研究者が参加し、学術研究成果を発表した。
    3. 学術的内容に関する事項(当該分野の学術の動向、今後の重要課題等)
      科学教育の歴史・哲学の委員会の活動が正式に発足した。今後、会長などの役員が選任され、実質的な活動が開始されることになっている。
      今回のDHSTの共通テーマは「人々・場所・交換・循環(People, Places, Exchanges, Circulation)」ということであった。そのため、グローバル・ヒストリーの一環として南北両半球の各地の活動や他所との影響・交流関係をトピックとして取り扱うセッションや発表が多かったように思われた。
    4. その他の特記事項:
      DHSTの次期評議員としてIUHPST分科会の委員である杉本教授がアセッサーに立候補し、トップ当選を果たした。立候補時には日本を含む複数の加盟国とともに複数の国際学術団体からの支持があり、日本の役割への高い期待をうかがわせた。
      DHSTの傘下には、47の加盟国・準加盟国が存在し、24の国際学術研究組織が存在する。DHST評議会の事務局長・事務局次長・財務担当委員はこれらの数の組織の代表と、毎年少なくとも1回連絡をとっている。しかし今期において各団体組織の連絡担当者と連絡がとれない事態が複数発生した。その事態に対して、支援額や投票数などについて公平性を保ちつつ適切な対応をする際に、評議員内で慎重な審議を経て合意形成がなされた。またこのような事態を受けて、第二回の評議会において日本人役員が、各団体組織の連絡にあたって、連絡の要となる「コンタクト・パーソン」について一人だけではなく、バックアップとなるようなもう一人の代替的な臨時の「コンタクト・パーソン」も選定しておくべきことを提言し、次期の評議会において適切な対応がとられることになった。新設の役員である情報担当委員(Secretary of Engagement)の重要な役割の一つとして、適切な仕組みの構築がなされていくと思われる。またこのようにしてDHSTの評議会とその傘下の加盟国団体、国際学術組織との連絡がより密になり、とりわけ国際学術組織の研究活動の成果がより頻繁にDHSTのウェブサイトなどを通じてインターネット上で公開されていくことが期待されている。

所見

2013-2021の8年間に比べ、2021-2025の4年間に多くの新規事業が打ち出され、情報発信にも取り組まれた。特にZoomによるオンライン会議が可能となったため、国際会議の形式が大きく変わるとともに、新しい取組がなされるようになっている。今期で新設された情報担当役員(Secretary of Engagement)がそのような新企画事業の遂行に大きな力を与えてくれることを期待する。